エントロピーという言葉は帯津先生の『ホリスティック医学入門』という本で知りました。その時に思ったことは、ブラウン管のテレビでした。なお、これは2020年6月のブログ“ガンとホリスティック医学3”から持ってきました。
画像出展:「テレビログ」
例えばテレビ内に埃が溜まり(エントロピーが増大)、バンバン叩くという行為(刺激)により埃が下に落ちて(エントロピーが減少)映った(治った)ということかなと勝手に解釈しました。
これは鍼の刺激により、体内に増大したストレス(エントロピー?)を減少させ、元気を取り戻したというメカニズムに似ていないだろうかと思いました。
槌田先生はエントロピーを説明する最も相応しい言葉は“汚れの量”であるとお話されています。
テロメラーゼという酵素を発見し、2009年のノーベル生理学・医学賞を受賞されたエリザベス・H・ブラックバーン博士の『テロメア・エフェクト』という本に書かれた運動後の回復のプロセスは、鍼治療による筋・筋膜への微細な損傷に対する、回復プロセスにも通じる部分があると思います。なお、ここでのキーワードは“体の掃除”です。
画像出展:「テロメア・エフェクト」
・運動後に回復反応が起きる。
・オートファジーにより、細胞内の損傷分子は食べられてしまうので炎症を防ぐことができる。
・オートファジーでは対応できない大量の損傷した分子がある場合は、細胞は死滅するが、これはアポトーシスと呼ばれ炎症や残骸を残さない綺麗な死に方である。
・運動は酸化ストレスを減少させている。
・運動後の回復反応により体内では細胞の残骸の掃除が続く。
今回の『気とエントロピー』は帯津良一先生[帯津三敬病院院長]と槌田敦先生[物理学者・環境経済学者]による対談になっています。帯津先生はエントロピーに関しては、槌田先生の著書『エントロピーとエコロジー「生命」と「生き方」を問う科学』が非常に参考となったとのお話をされています。そこで、私も最初に槌田先生のその著書を拝読させて頂くことにしました。
著者:槌田 敦
発行:1986年7月
出版:ダイヤモンド社
特に印象に残ったことは以下の7つです。
1.エントロピーとはあらゆる現象の基本法則である。
2.生命を論ずるとき、エントロピーの特性を一番よく表しいているのは「汚れ」である。さらに正確にいうと、「汚れの量」であり、エントロピー増大の法則とは、汚れ増大の法則といえる。
3.『生命体は、自己を復元することによって自らを維持している。復元のための活動にとって最も大切なことは、シュレディンガーが指摘したように、生命活動によって生じた余分のエントロピーを生命体外へ捨てることにより、自己のエントロピー水準を復元することである。この「余分の」というところが大切である。』
※ご参考 “エルヴィン・シュレディンガー 生命とは何か 松岡正剛の千夜千冊”
4.『エントロピーを捨てる方法は、二通りしかない。物にエントロピーをくっつけて捨てるか、熱にくっつけて捨てるか、である。つまり、物や熱は、エントロピーという「汚れ」を体外へ捨てる雑巾のようなものなのである。』
5.『血液の循環、リンパ液の循環、その他の物質代謝など、多数の循環がある。つまり、生命というのは、化学者のいうような機能をもった物質の集まりというよりは、むしろ、多数の循環の調和ある動的な集合なのである。』
6.『生命というのは、外から見れば流れの系、内を見れば多数の循環からなる系というところに特徴がある。この場合、ある循環と別の循環の間で、エントロピーの受け渡しが過不足なく行われているとき、生命は順調に維持されているといえる。つまり、健康状態である。しかし、調和がとれなくなって、エントロピーの受け渡しがうまく進行しなくなると、その波及の結果、いたるところで循環が回転しなくなる。つまり病気の状態である。そして、循環が多数の箇所で止まってしまい、もはや回復しなくなったときが死ということになる。』
7.『積極的・主体的に、循環を維持しようとして働くような系が、「生きている系」なのである。これが生命固有の本質といってよい。』
特に、エントロピーを「汚れの量」であると考えること。そして、生命のキーワードに「循環」があること、この2つを頭に入れて、帯津先生の著書を拝読させて頂くことにしました。
著者:帯津良一・槌田 敦
発行:1999年7月
出版:ほたる出版
もくじ
ちょっと長い「はじめに」
1章 エントロピーと出会う
①日本の「気」と中国の「气」
■日本人は気が大好き
■エントロピーが気になっていた
■気とエントロピーの関係
■誤解のまま流布したエントロピー
②生命はエントロピーを捨てながら生きている
■高尚な理論だけが一人歩き
■地球も生命もエンジンの法則で動いている
2章 気とエントロピー
①中国医学はエントロピーの医学
■エントロピーは測定できる
■気とは「場」の情報?
■物理の場と生命場は異なる
■静的な秩序か、動的な秩序か
■中国医学の根底にあるもの
②余分のエントロピーを捨てる方法
■気功の意義
■吐く息でエントロピーを捨てる
■食物のエントロピー
■尿療法の意味
■発汗という最大のエントロピー廃棄能力を持つ人間
3章 健康とは、病気とは、自然治癒力とは
①環境も人体も物質循環が大切
■ベルタランフィの問題定義
■循環で復元し、また同じことをする
■環境破壊とは何か、病気とは何か
■廃棄物は他者の有用資源
②健康回復の条件
■自然治癒力―誰が命令しているのか
■生命力とは、元へ戻す修繕力
■細胞にも意思がある?
4章 がん治療と気力
①がん患者にとって最高の良薬とは
■気力が生命を左右する
■信頼すれば効き目もアップ
■気持ちのいいことを探す
■わずかな希望が心の平安をもたらす
■心がすべてを決める
②どんな治療を選ぶかは、どう生きるかということ
■治療法は患者が決める
■医者の指示は絶対か
■手術は過渡期の医学かもしれない
■ターミナル・ケアは西洋医学の発想
■現代人の健康至上主義
5章 人間を丸ごと見るということ
①人間全体とは何だろう
■ホリスティック医学は場の医学
■総体としてまとまる
■環境問題とホリスティック医療
■極端な食餌法はマイナス
②治療法の選び方
■固定観念を捨てよ
■ピタリと合えばグングンよくなる
■患者の死を枕元で見送る
■医者と患者ではなく、闘う仲間
6章 研究者の条件
①現役でいられる限界とは
■医者に必要な資質
■理系から文系へ
■長生きしなければならない時代
■「現場」を離れないことが大事
②真の学問を復活すべき
■学者の衰退
■学問の価値は仲間の数で決まる?
■学問の基本に戻るできとき
ちょっと長い「おわりに」
1章 エントロピーと出会う
①日本の「気」と中国の「气」
■日本人は気が大好き
・日本人は心の作用にも「気」を使う。これは心の問題を日本語では気の問題のように捉えることが少なくない。一方、中国では日本とは異なり心の問題で「气」を使うことは少なく、基本は、息に関係する言葉として使われている。
・日本語の「気」と、気功でいわれている「気」のどの辺りが同じで、どの辺りが違うのかを明確にしたい。
・気功の「功」は「習練あるいは習練の成果」という意味である。気功はもともと導引といって身体を揺り動かしたり、呼吸をしたりなどの、さまざまな養生法の総称である。
・1950年代には、養生法は約2400種あり、それを「気功」という言葉に統一した。その定義は「正気を養うことを主たる目的とする自己鍛錬法を気功と呼ぶ」となっている。
・『中国では、正気、気というものは生命の根源物質である、細胞の隅々まで行き渡って、身体の中で循環しているものという考えがありますから、それ以上あれこれと説明することはしません。自明の理なんです。』
・日本の気、例えば「病は気から」の気は気持ちのことである。つまり、日本の気は精神的・情緒的なところも含めた心の面を重視している。
・中国の気功では、心を調えるというのは気持ちや感情を調えるということではなく、一つのことに集中できる気持ちをつくることである。雑念を払って本当に集中できる気持ちをつくるということである。そのため、中国人が考える心と日本人が考える心とは違う。
・『中国の古典医書に「黄帝内経」という本がある。この三章(二)節「七情傷気」の中に「百病生於気也」という文章がある。これを日本語に直訳すると、「多くの病は気から生ずる」ということになる。しかし、ここでいう「気」は、日本語でいう病人個人の「気持ち」ではなく、宇宙や生命の根源要素を意味していると考えられる。
ただし、七情(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)が気を傷めるとあるから、日本語でいう気は中国語では「情」にあたり、情が気を傷めるから、結果的に病気になるということではないだろうか。』
■エントロピーが気になっていた
・『気というもの中国では、既成の事実というか、その存在を誰も不思議に思わないんですね。気というのは生命の根源物質である。宇宙にも人体にもあまねく存在している。したがってそれ以上何かしようとしないわけですよ。そういうふうに決めているんです。ところが日本の場合は、中国医学を説明するのに、気の問題になると、どうもそこで立ち往生してしまいました。何とかうまく説明する方法がないものかと、中国の本などをいろいろ読んでみましたけれど、「気は生命の根源物質である」「気功はその正気を養う」というところから一歩も出ていませんでした。びっくりするほど分厚い専門書にも、それ以上突っ込んだ説明はありませんでした。
ですから、私が、がん治療に中国医学を取り入れたとき、大方の西洋医学の先生たちは、中国医学は経験的な医学で、何の理論もないし、統計処理もできないものだと言っていました。しかし、私は違うと、そうじゃないと。科学が支えていなくても、やっぱり伝統がありますし、西洋医学とは違う立場から病というものをとらえているんだと思っていたものですから、そこを何とか西洋医学の仲間に説明しようと思っていろいろ苦労したんですよ。気というものが、何か物事に秩序を与える作用は間違いなくあると。そういう原理なのか情報なのか物質なのかは分かりません。でも何かあるはずだと。
そういうことをずっと考えていたものですから、あるときすっとエントロピー増大の法則というものに関係しているのではないかと思いついたんです。それからエントロピーに関する本を読み始めたんですが、このエントロピーがまた難しくて分からないんです。』
■誤解のまま流布したエントロピー
・有名なエントロピー増大の法則というのは、物体が活動したり変化したりすると、必ずエントロピー(汚れの量)が増えるという法則である。
②生命はエントロピーを捨てながら生きている
■高尚な理論だけが一人歩き
・生き物がなぜ簡単に死なないのかを分かるように説明したのがシュレディンガーであり、人間が死なないのはエントロピーを捨てるからだと説明した。
・動物は、食物を食べ、水を飲み、空気を吸っている。これらの物質は体内に入る。しかし、排泄し、排気し、放熱しているのでエントロピーを体外に捨てることができる。
・気とは余分のエントロピーを上手に捨てる能力ではないか。
画像出展:「AI(Perplexity Pro)が作成」
ヒトは生きるために熱を作っています。
2章 気とエントロピー
①中国医学はエントロピーの医学
■気とは「場」の情報?
・「場」とは清水博先生が提唱されているものである(参考:“NPO法人 場の研究所”)。
・『気という言葉を使わないで説明するとすれば、何か身体の中の潜在能力を掘り起こすような方法論が、気功なんじゃないかと。しかし、そうすると身体の中の潜在能力というのはどこにあるんだろうということになる。そして、やっぱり私はもともと外科医ですから、身体の中のすき間なんていうのを思いつきました。臓器と臓器のあいだ、どうもあそこにいろんな物理事情があって、一つの場をつくっているんじゃないか。そういう人体の中の場を「生命場」と呼んでもいいのじゃないか。その場のポテンシャルというか、エネルギーのようなものが、きっと自然治癒力と関係しているんじゃないか、そう思ったんですね。』(帯津先生の指摘される「身体の中のすき間」にはファシア[膜]があります。そしてファシアはライフラインともいえる動脈、静脈、神経、リンパを覆っています。帯津先生の指摘される「生命場」にもファシアは何かしらの関りを持っているのではないかと想像します)
画像出展:「人体の正常構造と機能」
左側の図の黄色の部分は膜(ファシア)です。
また右の図では灰色の部分が膜(ファシア)です。
・『身体のポテンシャルを上げる方法論が気功なんじゃないかと思って、いろいろ考えてきました。そうすると、気はまだはっきりとは分かりませんが、その場をつくっている物理量でもいいし、清水先生が言われるように何か場の情報みたいなものでもいいかなというふうに今は思っています。』
・『生命活動を含めたすべての活動では、活動の潜在能力を取り入れて、それを用いて活動すると、その潜在能力が減って、エントロピーになるとして説明できます。つまり、「気」と活動の潜在能力(=ポテンシャル)は、同じものということになります。分かりやすく言えば、「気」とは、パワーになる可能性のあるもの(=ポテンシャル)ということではないでしょうか。』
■静的な秩序か、動的な秩序か
・『この(各器官)配置図の中で、あちらの臓器からこちらの臓器へものが流れる、たとえば血液が流れたり、リンパ液が流れたり、その他いろんなかたちで、さまざまな物質が流れ、その流れが過不足なく循環している。それが滞りなく行われる。そういうのが健康な状態だと思うんです。循環が滞って一方から流れ出たものが、もう一方のところでどんどん溜まって肥大化してしまったら、その臓器はダメになってしまう。それが病的な状態です。だから、こういうふうに体内のすべての循環がスムーズに流れている状態を「気の巡りがいい」と言うのではないかと思うのです。これを気と表現しているのではないかと。少なくとも、科学的に言うなら、そこまでは間違っていないと思います。』
■中国医学の根底にあるもの
・中国医学では循環の問題を重視している。気滞、血瘀など。血を生き生きさせて循環をよくする。そういうものが、すべて中国医学の治療の中にある。しかも、中国医学ではエントロピーを捨てるための排泄を重視している。
・中国医学の考え方はすべてエントロピーで説明できる。
②余分のエントロピーを捨てる方法
■吐く息でエントロピーを捨てる
・東洋医学の呼吸法の場合は、吐く時つまりエントロピーを捨てるときに意識をしっかり持つ。
・呼気のときに副交感神経が優位になる。
■食物のエントロピー
・エントロピーで一番大きな値となって出てくるのは廃熱、熱のエントロピーだが、食べ物には左右されない。量については小食であれば消化する作業が少ないので、発生するエントロピーは小さいが、エントロピーをたくさん捨てることはできない。つまり、食物については大きな影響をうけない。
・エントロピーを捨てる方法は汗、皮膚、呼気など排熱を利用するのが多い。一方、尿からの排熱は少ない。
・人間や動物が食べたり飲んだりするのは、エントロピーを捨てるためである。生命活動すれば、必ずエントロピーが生ずる。このためこれを捨てなければならない。しかし、エントロピーだけを分離して捨てることはできない。
■発汗という最大のエントロピー廃棄能力を持つ人間
・動物の中で馬と人間は汗をかくので、熱エントロピーを上手に捨てることができる。長時間の労働ができるのはそのためである。
画像出展:「AI(Perplexity Pro)が作成」
ヒトは体温調節するためにいくつかの方法で熱を排出しています。
3章 健康とは、病気とは、自然治癒力とは
②健康回復の条件
■自然治癒力―誰が命令しているのか
・『自然治癒力といっても、それがあることはあると思うんですけれど、本体はまだ西洋医学も東洋医学もつかんでいません。内分泌とも循環とも神経の伝達とも免疫とも違う何かがあるんじゃないかと私たちは考えてるわけです。
これは一般の素人の方でも、自然治癒力というものがあると考えています。現に傷が自然に治る。私もそうですが、西洋医学の先生方というのは、創傷治癒といって、傷が治る時のメカニズムはちゃんと習うわけですね。素晴らしく治ってくると。これには循環も関係しているだろうし、神経もホルモンも免疫もみんな働いている。その総司令部みたいなものがきっとあるだろうと考えているわけです。
ところが、これは誰が指図しているのか問うと、今のところ誰にも分からない。誰が命令してやっているのかを誰も教えてくれないわけですよ。これは西洋医学でも一切解明されていません。ところが西洋医学の先生方に、自然治癒力というものの存在を信じますかと言うと、みんな信じるといいますよね。そこのところが面白いんで、これからの、研究に待たなきゃいけないんでしょうけどね。』
■生命力とは、元へ戻す修繕力
・自然治癒力と生命力は同じ意味だとは思うが、生命力の一つ手前にあるものが自然治癒力という思いもある。
・生命力は自然治癒力より広い概念で、生命の本質に沿ったものではないか。
・生命の原点は、生きようとする力、元へ戻そうとする力ではないか。
■細胞にも意思がある?
・『多田先生が自著[「免疫の意味論」]の中で、免疫というものをスーパーシステム、つまり自己組織化していくシステムと言っている。要するに一つの骨髄細胞から出て、いろんな細胞に分かれて、それぞれが役割分担して動く。その時に内外の状況に応じて、役割をひょいと変えたりすることを自分でやっている。これはやっぱり何か指令を出すところがあるはずだと。それは遺伝子かもしれないけど、もっと場の情報のようなものではないかと表現しておられるんですよ。
私もどうもそういう気がします。ですから先の指摘のような、生命場は静的なのか動的なのかと問われると、私も混乱してしまうんですけど、どちらにしても私が今まで言っている場というものの何か働きというものがあるだろうと思うんです。私はエネルギーのようなものがあるんじゃないかと考えています。』
4章 がん治療と気力
①がん患者にとって最高の良薬とは
■気力が生命を左右する
・気力は確かに生命と深くかかわっている。がん患者の最後を数多く見ているので、そういうことは何度も経験している。気力をぱっとなくしたとたん、みるみる衰弱していく。例えばホスピスに移るのを決めたとたん、移る前に息を引き取ってしまうことは少なくない。
■気持ちのいいことを探す
・治療には患者本人のその時の気持ち、希望をなるべく汲み取るという姿勢が非常に重要である。
■心がすべてを決める
・『私なんかも本当に心は大切だし、極端なことを言えば、将来のがん治療の中でいちばんの主力は心だろうと思っているんです。遺伝子レベルまで解明していったとしても心が肝心だと思っているんですね。この心が、もう少し客観的というか、数値化ということができるようになれば、その作用がもっと明確になってくるんじゃないかと考えています。』
5章 人間を丸ごと見るということ
①人間全体とは何だろう
■ホリスティック医学は場の医学
・1番大切で、西洋医学も東洋医学も不十分な領域は心の領域の問題である。
・ホリスティック、人間全体とは何だろうと思っている内に、隙間のことや場の問題を考えるようになった。そして、場は自分自身の中にもあるが、大きな場の中の一部でもあると考えるようになった。
②治療法の選び方
■ピタリと合えばグングンよくなる
・ホリスティックと言っても患者ごとにみんな異なる。
・『いろんな療法もピタッと合うと、これがまたよく効くんですよ。先ほども言いましたが、バケツの中に塩を入れて足を揉む。これでよくなっていく人が現にいるんです。気功をやったり、漢方薬をやったり、点滴もやったりして、いろんなことをやっているんだけど、あんまりよくならないなと思ってるときに、どこかからがバケツに塩を入れて届けてくれた人がいるんですね。その中で足を揉み始めたら、グングンよくなっていく。
六人部屋にいた人ですけど、その人がよくなったのを見て自分たちもやろうというので、バケツを買って来て、塩を分けてもらって他の五人もやり始めた。しかし、他の五人はあんまりよくならない。やっぱりこの人には気持ちも含めて何かがピタッと合ったんですね。こういうことが終始あるから、私は何でもやってみた方がいいと思うんです。費用がかかり過ぎることや、これはちょっと危ないぞというもの以外はね。』
2冊の本を読み終え、“氣”の理解を深めるためには、あらためて基礎的な勉強をし直す必要があると考え、鍼灸院の本棚から「東洋医学概論」という専門学校の教科書を引っぱり出してきました。当時は国家試験のために勉強していましたが、今回は“氣”という観点から目を通していこうと思います。当時、見過ごした大事なことを発見できるかもしれません。
編者:社団法人 東洋療法学校協会
著者:教科書執筆小委員会
発行(第1版第19刷):2011年3月
出版:医道の日本社
補足)”氣”について
「気」という漢字が、”氣”に代わって使われるようになったのは戦後のGHQによる漢字の改良が行われたときだそうです。
ご参考:“「氣」はなぜ「気」に変わった?そもそも「米」が入っていた意味は?!”
目次
第1章 基礎理論
1.東洋医学の起源と発展
1)東洋医学の特徴
(1)理論と実践
(2)東洋医学を生み出した思想的な特徴
(3)人と自然についての見方
(4)人体を小自然(小宇宙)と見る
2)東洋医学の起源
(1)原始的医術
(2)「気の思想」による生理・病理観
(3)鍼灸、湯液、気功、導引の起源
3)東洋医学の発展
(1)『黄帝内経』の成立
(2)中国医学の系譜について
2.陰陽五行論
1)陰陽学説
(1)気の思想
(2)陰陽概念の発生
(3)陰陽論の特徴
2)陰陽論の医学上の具体的な応用
(1)人体の組織構成
(2)生理機能の陰陽
(3)病理変化の陰陽
(4)診断と治療の陰陽
(5)三陰三陽について
3)五行学説
(1)五行の発想と限界
(2)初期の頃の素朴な五行説
(3)五行と気の思想
(4)五行の相互関係
(5)五行説の効用と限界
(6)五行学説の特徴
4)五行学説の医学への応用
(1)五臓の生理機能を説明する
(2)五臓間の相互関係を説明する
(3)疾病の伝変を説明する
(4)診断と治療に用いる
第2章 東洋医学の人体の考え方
1.気血津液
1)気の生成と種類
2)精と神
(1)精
(2)神(神気)
3)気
(1)原気(元気)
(2)宗気
(3)営気(栄気)
(4)衛気
(5)その他の気の概念
4)血
5)津液
2.五臓六腑(蔵象)
1)臓腑概説
(1)臓腑とは
(2)臓腑間の関係
(3)臓腑の位置
2)五臓
(1)心
(2)肝
(3)小腸
(4)大腸
(5)膀胱
(6)三焦
4)奇恒の腑
(1)骨・髄・脳
(2)脈
(3)女子胞
3.臓腑経絡論
1)経絡概説
(1)経絡説の成立ち
(2)経絡の構成
(3)経絡の機能
(4)十二経脈について
(5)奇経八脈
(6)その他の経絡系
第3章 東洋医学の疾病観
1.病因論
1)概要
2)外因(六淫)
(1)風
(2)寒
(3)暑(熱)
(4)湿
(5)燥
(6)火
(7)六淫以外の外邪
3)内因(七情)
(1)七情
(2)内因と気血
(3)内因と五臓
4)不内外因(飲食労倦)
(1)飲食
(2)労倦
(3)外傷
2.病理と病証
1)八綱病証
(1)病位の違いでとらえる
(2)病情によってとらえる
2)気・血・津液の病理と病証
(1)気の病理と病証
(2)血の病理と病証
(3)津液の病理と病証
3)臓腑病証
(1)五臓の病証
(2)六腑の病証
4)経絡の病証
(1)是動病と所生病
(2)十二経脈の病証
(3)奇経八脈病証
5)六経病証
(1)六経病
(2)三陰三陽病
6)代表的な疾病
第4章 診断論
1.四診
1)診断の一般
(1)診断の目標
(2)診断の心得
(3)診断の種類
2)望診
3)聞診
4)問診
5)切診
(1)脈診
(2)腹診(按腹)
(3)切経
2.証のたて方
1)証について
(1)湯液の証(漢方の証)
(2)鍼灸の証
(3)本証と標証
(4)主証と客証
(5)その他
2)証の決定
(1)証決定の手順
(2)証の総合決定
第5章 治療編
1.総論および原則
1)養生法
2.治療法
1)古代鍼灸法
(1)九鍼
(2)刺法
2)補瀉法
3)その他の選穴法
4)灸法
5)治療原則
(1)治療の前提条件
(2)治療原則
3.他の東洋医学療法
1)手技療法
(1)按摩
(2)導引
2)薬物療法
(1)薬物療法の概況と歴史
(2)薬物療法の考え方
(3)診断と治療原則
(4)薬物
(5)処方
ひと通り目を通して最も気になったことは、第2章の「東洋医学の人体の考え方」です。
・東洋医学では人体の仕組みは“気の類”と“形の類”と“経絡類”の三つから成り立っていると考えます。
‐気の類:生体の活力として働く。精・気・神があり、三宝と呼ぶ。
‐経絡類:気血の通路のことで、内に臓腑と結びつき、外に頭、体幹、四肢、体表部と連絡している。
‐形の類:身体の構造を形作る。体内の各器官や組織を指す。五臓を中心とした「蔵象」によって相互に関連づけられている。
以下は教科書にあった「東洋医学の人体の仕組み」の図をベースに、一部加筆(青字部分)したものですが、追記した内容はあくまで個人的な考えです。
消化と代謝の関係がよく分からなかったのでAI(Perplexity Pro)に質問しました。
栄養素の効率的に活用するための働き、前半(消化)、後半(代謝)で役割分担しているようなイメージです。
図の3番目にあった、“形の類”とは五臓六腑を中心とする考えであり、西洋医学では臓器に相当します。例えば、肝と肝臓、腎と腎臓は、それぞれ似て非なるものです。
画像出展:「九州大学附属図書館企画展」
『西洋では身体(ギリシャ語 soma)と魂(ギリシャ語 psyche)はすでに古代から分離したものだった。このことは、一方では体内を観察することへの躊躇を少なくし、医学の発達を可能にしたが、他方、病気はますます純粋に身体的、物質的現象として捉えられるようになった。西洋では今世紀になって、心身医学のような新しい分野が誕生し、この溝を埋める試みがなされるようになっている。』
図の2番目の“経絡類”は、「内に臓腑と結びつき、外に頭、体幹、四肢、体表部と連絡している」。とされています。これに関し、私は「経絡≒ファシア」と考えています。MPS(筋膜性疼痛症候群)の筋膜もファシアです。ファシアの説明は一般社団法人日本整形内科学研究会さまのホームページよりご紹介させて頂きます。
ファシアとは:『全身にある臓器を覆い、接続し、情報伝達を担う線維性の網目状組織構造。臓器の動きを滑らかにし、これを支え、保護して位置を保つシステム。』
画像出展:「人体の正常構造と機能」
左側の図の黄色の部分が膜(ファシア)です。
また右の図では、灰色の部分が膜(ファシア)です。
皮下組織の層は浅筋膜に相当します。この層には動脈、静脈、神経、リンパ、受容体など生命のライフラインやセンサーともいえる、神経脈管系が機能しています。ファシアが重要なのは膜という構造的(物理的)な役割に加え、そのファシア内の神経脈管系が相互的に生命維持の役割を担っているためです。
ファシアへの機械的な刺激は、これらの各機能に働きかけ、心身のバランスを整え、酸素や栄養素を提供し、また、からだの掃除をして健康にしてくれるものと考えています。
画像出展:「細胞と組織の地図帳」
真皮の下の皮下組織は浅筋膜と呼ばれており、図中では浅筋膜の中に動脈、静脈、神経、受容体が書かれています。また、この図には書かれていませんが、浅筋膜の下に深筋膜があります。ファシアは広範囲かつ複合的に広がっている結合組織であるといえます。
※リンパ管については下の図をご覧ください。
画像出展:「AI(Perplexity Pro)作成」
微小循環とリンパ系は密接に連携しながら、体内の恒常性維持、免疫機能などの重要な役割を果たしています。
そして、図の1番目の“気の類”が特に西洋医学と大きく異なる部分であり、まさにこの“気の類”を明らかにすることが、『氣とは何だろう』のヒントになるのではないかと思います。
それは、「生体の活力として働く。精・気・神があり、三宝と呼ぶ」と説明されています。(「東洋医学の人体の仕組み」をベースにした冒頭の図)ここでは“気の類”を広義の“氣”とします。一方、「精・気・神」の中の「気」を狭義の“氣”とさせて頂きます。
そして、広義の気、つまり“気の類”を中心にして検討を進めます。少々強引ですが、「精≒消化系/代謝系」、「気≒呼吸系/循環系」、「神≒神経系」とイメージしたとすると、「精・気・神」は心身のすべてを包含していると考えても良いのではないかと思います。
余談になりますが、「神経系」という用語は江戸時代、『解体新書』を翻訳された杉田玄白が命名したもので、「神気の経脈」であるとされています。このことは、西洋医学が日本に伝来されてきた当時から、脳と神気との関係性が注目されていたということであり、大変興味深いものです。
画像出展:「語源から読み解く自律神経」
現代において精神活動は思考、認知、記憶、創造、感情などを指します。これらの精神活動は新皮質の大脳皮質の働きです。一方、東洋医学の脳は奇恒の腑の一つで、働きは運動を円滑に行い、耳目を聡明にし、長寿を保つとされています。
画像出展:「病気がみえるvol7.脳・神経」
脳(奇恒の腑)の働きを西洋医学の脳の働きに照らし合わせると、「運動を円滑に行う」は一次運動野、前頭眼野、高次運動野が該当します。「耳目を聡明にする」や「長寿を保つ」も大脳皮質が関係しますが、運動には小脳が、生命維持には大脳辺縁系や脳幹も必要です。
画像出展:「病気がみえるvol7.脳・神経」
この図の右側縦列は前頭連合野の機能が正常に働かない場合の状態(障害)です。これをみると五神(神・魂・魄・意・志[思・慮・智])の働きとほとんど合致するように思います。
※「五神」については下の表を参照ください。
これは「東洋医学概論」の内容を元に作った「五神」と「七情」の表です。これらの働きは五臓に割り振られています。
五神の中の神についての説明は、このブログの大元である『東洋医学概論』の記述をそのままご紹介させて頂きます。
『神を分類すれば、神、魂、魄、意、志などが挙げられる(『霊枢』:本神篇)。神は、このなかで最上位にあって、他の神気を支配している。ときにより、魂魄は神の支配を受けずに独自の働きをすることがある。魂・魄は、人体のかげの活動(無意識的、本能的活動)を支配するものである。』
例えば、3000年前のヒトの脳と現代のヒトの脳は、解剖学的・生理学的に劇的な違いはないと思います。つまり、東洋医学の脳(奇恒の腑)と西洋医学の脳に対する理解の違いは、解明された情報の質と量であり、それを可能にしたのが科学とテクノロジーの力だと思います。
東洋医学の脳(奇恒の腑)は骨、髄と共に腎が主っています。腎は先天の精、そして後天の精を受け入れ、発育・成熟および生殖という基本的な生命活動を担っています。そして、腎に納まる精が気に変化すると原気となり、臍下丹田に集まり人体の基礎活力として働きます。以上のことから、腎と脳(奇恒の腑)の関係は非常に重要だと思います。
関元という経穴(ツボ)は、小腸の募穴でおへそより指4本分下とされています。場所は臍下丹田になります。
西洋医学では下腹の臍下丹田は腸がある場所です。そして腸は第二の脳とされ、脳腸相関ともいわれています。東洋医学の腎と西洋医学の腸の違いはありますが、東洋医学の臍下丹田⇔脳(奇恒の腑)と西洋医学の脳腸相関(腸⇔脳)は東西医学の共通性を示すものと思います。
画像出展:「ブレインフォグの原因「腸内細菌の乱れ」と脳腸相関とは?」
こちらは国立・消化器内視鏡クリニックさまから拝借しました。
『脳腸相関とは、脳とおなか(腸)で両方向におこなう情報伝達のやり取りと相互に影響を及ぼしあう関係のことです。』
画像出展:「AI(Perplexity Pro)作成」
この表を見ると、複数の経路を通じて脳と腸が連絡し合っているのが分かります。
科学(テクノロジー)の力が及ばなかった東洋医学の時代においては、五神(神・魂・魄・意・志[思・慮・智])や五情(喜・怒・憂・思・恐に悲と驚を加えたものは七情という)を、脳(奇恒の腑)に関連付けて考えることは難しかったと思います。そのため、重要とされた五つの臓腑(“形の類”)に割り振ったということだったのではないかと想像します。
五神と七情は、現代では大脳新皮質と間脳(特に視床下部)そして大脳辺縁系による中枢神経の働きと考えられます。運動や感覚は中枢神経系と体性神経系(末梢神経系)でつながっており、内臓の働きは中枢神経系と自律神経系(末梢神経系)でつながっています。さらに視床下部は自律神経系に加え、内分泌系や飲水・摂食・性行動などの本能行動をコントロールしており、極めて重要な役割を担っています。
画像出展:「人体の正常構造と機能」
大脳新皮質は判断、思考、計画、創造、注意、抑制など理性と社会性といえます。多くは神気(五神)に関係していると思います。一方、本能的、情動的なものは大脳辺縁系が担っていますが、特に大脳辺縁系の扁桃体につながる視床下部は内臓に関わる自律神経系や内分泌系を制御しています。また、運動器は中枢神経と末梢神経である体性神経系を介して脳と体躯・四肢をつなげています。
画像出展:「理性は本能に負けやすい!?脳の中には3つの機能があり、バランスが崩れると依存症になる?」
このサイトの他のスライドに『3つのバランスが崩れると依存症になる』という説明があります。これは東洋医学の“内因”(主に七情と呼ばれる7つの感情の過剰や不足によって引き起こされる病気の原因)に通じるものです。
画像出展:「漢方によるストレス・ケアのすすめ」
こちらは東洋医学の病気に対する分類です。内因は七情が関係するとされています。他に外因と不内外因があります。
画像出展:「病気がみえるvol7.脳・神経」
外側の大脳皮質は新しい脳ですが、内部の大脳辺縁系は古い脳です。脳波、CT、fMRI、PETなどの科学の力なしに解明は不可能です。有名な海馬は記憶に関係しています。一方、情動と本能行動の中枢とされ、主に「七情」に関わっているのが扁桃体です。
以下の2つの動画はストレスを軽減する方法を紹介しています。ポイントは大脳辺縁系の中の扁桃体と呼吸(酸素)です。“氣”には様々な解釈があります。その中には大気も含まれます。この動画を拝見すると、呼吸を重視する考え方は東洋医学も西洋医学も同じように思います。
「4ステップで扁桃体の過剰反応を落ち着かせる「心の持ち方、感情の持ち方について」11分52秒。
こちらは「Dr.ヤママンのYouTube Channel」さまからの拝借です。
「脳の扁桃体からの怒りを前頭前野がコントロールします!!」5分41秒。こちらは「精神科医マコマコちゃんねる」さまからの拝借です。
画像出展:「臍下丹田呼吸法」
「呼吸を重視する考え方は東洋医学も西洋医学も同じように思います」とお伝えしましたが、「西洋医学でも、最近では“木”ではなく“森”、つまり身体全体から病状や健康を診るということも出てきているな」と思って調べてみました。
画像出展:「AI(Perplexity Pro)作成」
今では「総合診療」や「プライマリーケア」といった組織もでてきていますが、調べたところ、総合診療の先生の中には鍼治療を取り入れている先生もおいでのようです。
くり返しになりますが、“氣”とは“気の類”、つまり、「精・気・神」の三宝と定義したいと思います。「気を補う」とは「精」なのか「気」なのか「神」なのか、それともすべてなのか、鍼灸師は「精・気・神」を頭に入れておくべきではないかと思います。
「気・血・津液を調える」というのは経絡治療の基本ですが、これは手法でありその対象は三宝(精・気・神)ではないかと思います。
以前、「自然治癒とは何か」ということを検討し、『ストレス適応と栄養代謝』と定義してみたのですが、個人的には、鍼灸(経絡治療)とは三宝に対する施術を適切に行い、『ストレス適応と栄養代謝』を高めるということだと思います。(“栄養代謝”という言葉は、本来は“消化・代謝”の方が適切ですね)
画像出展:「寒い時期の健康管理(市報のだ11月15日号掲載)」
『暑さや寒さなどの外部環境、心理的なストレス、ウィルスや細菌など私たちの生命維持に対する外乱となる刺激が生体に加わると、自律神経系(交感神経・副交感神経)・内分泌系(ホルモン分泌)・免疫系の3つが働いて、身体の機能を平常に保たれます。』
「ホメオスタシス~私たちを守り続けるシステム~」6分14秒
こちらは「ネコかん 【ネコヲの解剖生理学】」さまからの拝借です。
“ストレス適応”はホメオスタシス(恒常性)に置き換えても良いのではないかと思います。
次に気・血・津液と三宝(精・気・神)との関係性を考えたいと思います。ここで出てくる気は狭義の気です。(「東洋医学概論」の図を基に作っています)
狭義の気は、機能別に複数存在しており(図内には真気を含め5つ)、それぞれの気の働きを理解する必要があります。この中で特に注目すべきは臍下丹田の原気だと思います。そして、三宝(「精・気・神」)にも目を向けたいと思います。さらに、西洋医学的な観点からの脳腸相関と臓器間のメッセージ物質のやり取りという考えにも注目したいと思います。
※メッセージ物質
NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」シリーズでは、「臓器や細胞からのメッセージを伝える物質」を総称して「メッセージ物質」と呼んでいます。これは細胞間情報伝達物質であり以下のようなものとされています。
1.ホルモンやサイトカインを含む、体内で情報を伝達する物質の総称
2.血液や神経を通じて全身を巡る
3.数百種類にも及ぶとされる
脳・脊髄(中枢神経)と臓器をつなげているものに自律神経系がありますが、それに加えて脳や各臓器に様々なメッセージ物質を送って、臓器同士が会話しているとすれば、「神気は五臓に納まる」という東洋医学の発想に近いもののように思います。
まとめ
今回、勉強し直したのは「氣」とは何かを知りたいと思ったからです。そのヒントになるのではと思ったことは、「脳」の働きに関する東洋医学と西洋医学の違いです。東洋医学における「脳」は“五臓”でもなく“六腑”でもなく、”その他の腑”に含まれる“奇恒の腑”で、重要なものと考えられていたとは思えません。奇恒の腑は「脳」の他に「骨」と「髄」があり、いずれも“五臓”の一つである“腎”が主っています。そして「脳」は「髄」の大きなものとされていますが、これは「髄」が「骨」の中にあるものというのが理由です。確かに脳は頭骨の中にあるので髄であるといえます。言い方は良くないのですが、「脳(奇恒の腑)は腎ファミリーの一つ」という位置付けです。
この奇恒の腑である脳について、教科書では次のように説明されています。『脳は、頭骨の中にあり、髄の大きなもので、下は脊髄に連なる。脳は、肢体の運動を円滑にし、耳目を聡明にし、長寿を保つ。脳が充実していると、耐久力ばかりでなく、すべてにわたって一般の基準を超える。不足すると、目が回る、耳鳴り、めまい、すねがだるい、身体中だるくて寝ていると落ち着くなどの症状を呈する。』
ここで説明されている内容は、一つは運動と感覚に関わるものであり、西洋医学の中枢神経、遠心性神経(運動神経)、求心性神経(感覚神経)に相当すると思います。
もう一つは『耳目を聡明にし、長寿を保つ』というものですが、脳(奇恒の腑)の働きとしては細かく示されてはいません。西洋医学における理性などを司る大脳皮質や、本能や情動を司る大脳辺縁系が担っている役割、さらには内臓に働きかける末梢性の自律神経系や内分泌系の働きは、五臓に割り当てられた五神(神・魂・魄・意・志)や七情(怒・喜・思・憂・恐・悲・驚)によって説明されています。
一方、先にご紹介させて頂いたメッセージ物質の存在を考えるならば、脳と臓器、臓器と臓器でもコミュニケーションが発生しており、東洋医学の五臓・五神・七情などの考え方に通じる部分があるように思います。つまり、脳は絶対的な統括者・権威者というより、各臓器、器官、組織などの”つぶやき”に耳を傾けながら、全体をまとめるリーダーという存在ではないかと思います。
最後に、今回のブログでは以下の3点を最も重視したいと思います。
1.施術において、“氣”とは“気の類”、精・気・神の三宝であると考えたい。(現時点では)
2.狭義の気に関しては、先天の精と後天の精から派生する臍下丹田にある“原気”に注目したい。
3.『氣とは何だろう』を考えていくうえで、東洋医学の脳(奇恒の腑)・神気(五神)と西洋医学の脳(大脳・中脳・間脳・脳幹・小脳)に注目したい。
画像出展:「国内外における脳科学研究の現状と問題点について」
ウンザリするような細かい表ですが、ご紹介したのは「脳科学研究はこれから、奥が深いんだなぁ」ということをお伝えしたかったからです。
今後の予定
『氣とは何だろう』というテーマに関して、3冊消化しましたが、今後以下の本を拝読させて頂く予定です。大変なことになっています。ほぼ1年がかりのテーマです。
・気とエントロピー 医者と患者に役立つ医学
・「気」とは何か 人体が発するエネルギー
・「気」は脳の科学
・気功の科学 大脳生理学が解明した「東洋の神秘」
・気をひきだせ、無限の治癒力
・脳のなかの天使
・腸と脳 第二の脳がもたらすパラダイムシフト
・人体 神秘の巨大ネットワーク 臓器たちは語り合う
・「酵素」の謎―なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか
・酵素反応のしくみ―現代科学の最大の謎をさぐる
・リンパの科学 第二の体液循環のふしぎ
・中村天風と植芝盛平 気の確立
・気の発見 著者:五木寛之 対話者:望月 勇(気功家)
・なぜ気功は効くのか
・気療の奥儀 手を振るだけであなたも動物を癒せる
・生体の場の特性
・東洋医学気の流れの測定・診断と治療
鍼灸編の2冊目はアシル治療室という人気の鍼灸院を開院されている若林理沙先生の著書、『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』です。(新規受付はしていないようです。2025年1月時点)
若林先生は大学では思想宗教を専攻され、古武術を学びブラジリアン柔術にも精通された先生です。本書の“はじめに”には、「これから展開される「気」の世界を俯瞰してみましょう。おそらく、読者の方々は「気」がこれほど広大な領域に広がったもので、こんなにも多種多彩な意味を持っていたのかと驚かれるでしょう」と書かれていますが、まさに「気」の広さと多様さを学ぶことができました。
試しに類語辞典で「気」の類語・同義語を調べてみた所、以下のようなことが書かれていました。
1.その人特有の行動や反応を決定する感情的、知的特質の複合体
・気質、気性、気心など計50個。
2.ある種の傾向または性向
・気持ちなど計9個。
3.ある資質を示唆するもの
・気配など計5個
4.コミュニケーションの意図された意味
・意志、意図など計17個
5.目に見えない不思議なこと
・オーラ、神通力など計10個
全部足すと91個、「“氣”とは何だろう」という疑問の答えは謎のままですが、一歩一歩進めるしかないなと思います。
著者:若林理沙
発行:2022年1月20日
出版:ミシマ社
目次
はじめに
「気」の年表
第1章 気の起源
●気のおおもとの姿
●「気」という字の原型
●モヤモヤッと立ち昇る何か
●「気」に似た考えは世界中にあった
コラム 武術と気
第2章 孔子・老子・荘子の気
●血縁の愛を重視する中国で「仁」を説いた孔子
●『論語』では重視されなかった「気」
●古代、医者の地位はひどく低かった
●老子の思想のキーワード「道」
●老子の「気」は陰陽を引っ付ける糊!?
●人体に存在する「道」
●「気」の重要性がアップする荘子
コラム 風邪と気
第3章 孟子・道教の気
●孟子のでかくて強い気
●呼吸法から道教へ
●できるだけ長生きする技法
●「万物は気でできている」の始まり
●東洋医学の養生法の原点
●固形の玉になる気
●不死になるには1000呼吸止める!?
●気を練る修養法の落とし穴
コラム 気力・体力=消化力
第4章 易と風水の気
●気を語るのに外せないマジカルな分野
●トカゲを表す「易」の字
●六四卦で世界のすべてを表す
●時計の秒針のように動く気
●風水の特徴、龍脈と龍穴
●都や墓所に適した土地とは
●「水」から「気」へ
●教養としての易と風水
コラム 鬱を東洋医学の気から見ると
第5章 東洋医学の気
●最古の医学書
●気よりも血や水が重視されていた時代
●東洋医学はリアル+ファンタジー
●人体の気、いろいろ
●気・血・水が体内を流れるという身体観
●経絡の考え方の変遷
●経穴は絶対的なものではない
●ちょっとした抵抗を指先で探る
●自然の気、いろいろ
●現代に多いのは内因・不内外因の体調不良
●エネルギー120パーセント!?
●細かすぎる分類は気にしなくていい
●鍼灸や漢方はほぼすべての病気を改善できるのか?
コラム 「気が合う」「気が合わない」「気を合わす」
第6章 科学の気
●現代中国は気をどう説明するのか
●手から出る遠赤外線
●彼にすると情報がのせられる
●何かは伝わっているけれど
●生き物は全員「電気仕かけ」
●皮膚を流れる電気
●電気と言い切れない何か
コラム 臨床と気
第7章 養生と気
●気のオカルティックなイメージはどこからくるか?
●日本の気
●戦国の気
●韓国の気
●養生を気で説明する
●「寝る」と気
●「食う」と気
●「動く」と気
●体質を気で分ける
●人が生まれるときの気
●人が亡くなるときの気
おわりに
第1章 気の起源
「気」に似た考えは世界にあった
●ギリシャ哲学のプネウマ説は空気中のプネウマが呼吸により体内に取り込まれることで生きていられるとされている。
●プネウマは血液とともに体の各部位に供給されるエネルギーだと考えられており、気の考え方によく似ている。
●元々プネウマは「空気」、「呼吸」、「風」の意味で使われていた言葉で、そこに生命を維持する力という考えが導入された。
●プネウマはローマ帝国時代の医学者であり哲学者でもあるガレノスによって継承されて発展した。ガレノスは「三大臓器と脈管の生理学説」を唱え、肝臓から出る静脈は栄養豊富な静脈血、心臓から出る動脈は生命プネウマが豊富な動脈血、脳から出る神経は精神プネウマが豊富な神経液を全身に送っていると考えた。
●プネウマの考え方はアラビアまで伝わり、ルーフ(風という意味)の訳語でユナニ医学に取り込まれ、ユーラシア大陸における主要な医学のほとんどがプネウマ/ルーフの理論が成り立つようになる。そして、これらが西洋医学の源流になっていく。
画像出展:「ガレノスの「人格の気質的四類型」と「プネウマ」(カウンセリングしらいし)」
医学の対象は個物から場へ (帯津良一医学博士)
『ヒポクラテスの考えを継承したのが、ローマ時代の名医ガレノスである。ただし彼は人体を詳細に観察した上で、解剖学と生理学の基礎を築いた。それまでの直観の医学から分析の医学への移行である。ガレノスこそ近代西洋医学の祖とみなされている。それでもガレノスの医学でも、プネウマは重要な位置を保っていた。
また彼がヒポクラテスのネイチャーの概念を継承していたことも言うまでもない。彼が提唱したかどうかはわからないが「自然治癒力」は「vis medicatrix naturae」というが、これはラテン語である。ラテン語といえばローマ時代、彼の周囲からこの名称が起こったと考えてもさして無理ではないだろう。』
第2章 孔子・老子・荘子の気
「気」の重要性がアップする荘子
荘子 外篇 知北遊第ニ十二
●(現代語訳)『そもそも生は死の仲間であり、死は生の始まりである。一体誰がそのおおもとの仕組みを知っているだろうか。人間の生は、気の集まったものである。気が集まれば生となり、散じれば死となる。このように生と死とが仲間であることに、私はまた何を思い悩む必要があろうか。だから、万物は、一つであるというのだ。万物の中で美しいとされるものが珍しく重用されるものとなり、醜いとされるものが悪臭を放つものになるのであるが、悪臭がするものもやがて気が離散して変化し、珍しく重用されるものに変わったり、珍しく重用されるものもまた同じように、悪臭がするものに変化するからである。だから、「世界に本当にあるのはただ一つの気だけである」と言うのだ。だから、道に通じている聖人は「一」そのものである気を重んじる。』
第3章 孟子・道教の気
孟子のでかくて強い気
孟子 公孫丑上
●(現代語訳)『「あえておたずねしますが、先生は何がお得意であられますか」。孟子「私は人の言を知ることができ、自分自身の浩然の気を養うことができる」。「さらにあえておたずねいたしますが、いったい浩然の気とは、どういうものでしょうか」。孟子「言葉では説明しにくいが、その気というものは、とてつもなく大きく、とてつもなく剛く、そして真っ直ぐで、害することなく養っていけば、広大なる天地の間を塞ぐくらいになる。その気というものは、道と義の配下にあるもので、もし道義がなければ飢えて小さくなってしまう。つまりこの気は、自分の中の義が集まったところ生ずるものであって、外にある義が入り込んできて浩然の気ができるというものではないのだ。自分の行為に何か気持ちの良いものではないものが混じっていると、この気は飢えてしまう。』 (「癌から生還」。インドの女性、オーストラリアの男性。本来の自分を偽って生きるのはよくない)
第5章 東洋医学の気
経絡の考え方の変遷
黄帝内経 霊枢 経水篇第十二
●(現代語訳)『経水は水を受け取って巡らせる、五臓は神気魂魄(神気:その人をその人たらしめ、生かしている気。コンピュータのOSみたいなもの。魂:陽性のたましい。死ぬと天に昇る。夜中に体を抜けてそのへんをふらふらすることもある。魄:陰性のたましい。死ぬと骨とともに地面に還る。骨が消えないうちはそこにくっついているとされる)を合わせて内蔵する。六腑は食べ物を消化して巡らせ、そこから気を受け取って人体上部へ持ち上げる。経脈は血液を受け取ってこれで各所を栄養していく。』
経穴は絶対的なものではない
●経穴の場所は定義されているが、住所でいえば「何丁目何番」までで、何号とかマンション○号室」までは書いていないと考えるべきである。その最後の取穴の判断は施術者の指先の感覚によって特定する。その根拠は触ってみて、ざらざらするとか少し冷たいとか、押したら響いたとか、軽く押し込んで揉んでみると中に糸くずみたいな小さな硬さを感じるとか、そのような他とは異なる指先に伝わる感じや印象を大事にして取穴する。
現代に多いのは内因・不内外因の体調不良
●人体内では感情の動きが気を動かすとされている。(感情→神経伝達物質→自律神経) 気血とは
●ひどく偏った感情は気を損なうと考えられている。
●不摂生(飲食、睡眠、労働の不養生)も人体の気を損なう原因であり、不内外因という。
第6章 科学の気
現代中国は気をどう説明するのか
●『気はいったいなんなのかを科学的に検証する研究は、80年代にたくさん行われており、2000年代に入ってからの研究はほとんど見当たりません。おそらく、気を捉えられそうな計測機器による研究が出尽くしたのだろうと思います。そして、それらの研究はいくつかのエネルギーが体を流れている。もしくは体から放出されている様子を検出しました。
気を体の外に放出するイメージとしては、手から何かが発せられてそれが相手の体に空中を伝わって到達し、体に暖かさや涼しさ、電気的な刺激に似た感覚などが発生する、というものです。実際に、他人へ気を送る状態をサーモグラフィーで捉えると、受けて側の手や顔の温度が上昇していることがわかるのです。』
手から出る遠赤外線
●『この研究を主に行っていたのは、東京電機大学の教授でいらした町好雄氏です。彼はテレビ局の要請でまったく専門外だった気功をサーモグラフィーで計測し、実際に体表面の温度変化が観測されることを目の当たりにし、本格的に研究を始めるようになりました。
とくに温度の変化が著しいのが手の指先にある経穴の商陽・中衝と手のひらの中央付近にある労宮でした。経穴が気の出入り口とされていることが実際に計測されたということになります。
なんらかのエネルギーが空中を伝わって、それで相手の体温が変動する。これを可能とするには、いずれかの電磁波が関与しているにちがいないと町氏は考えました。町氏は、おそらくは遠赤外線がそれを狙っているだろうと考えたのでした。』
NPO法人 気功分化センター
『多くの人々が元気で幸せな日々を送ることができるよう、中国の歴史のなかで育まれてきた健康法である気功をさらに普及していこうと平成18年4月に設立したNPOです。
科学者や気功師、気功文化に興味のある仲間が、“気功を多くの人に知ってもらいたい”、“気功が人体へ働きかける仕組みを解明していきたい”という思いで発起人となって設立しました。』
波にすると情報がのせられる
●『測定してみると気功を行っている人体から放射されている遠赤外線自体の強さはそれほどではありませんでした。そこで町氏は計測機器に工夫をし、遠赤外線の波形を調べる方法を使ってみたところ、発生されている遠赤外線に一定の波形が現れていることを観測しました。遠赤外線そのものにシグナルがのせられていて、それを人体が受け取って読み解いて体の中に変化を起こしている可能性が示唆されたのです。
この、波にすると情報がのせられるというのは、ラジオやテレビの電波と同じ原理です。同じような実験を行った研究者は多数おり、追試の結果たしかにそうなっていることがわかりました。
これ以外の研究としては、上海中医学中医研究所で、先ほど顕著に温度が変わると紹介した経穴の労宮から数センチから1メートル離れた距離で、遠赤外線が検出されること、頭頂部の経穴である百会から数センチのところで微細な磁力信号が検出されることがわかっています。また、日本医科大学教授だった品川嘉也氏は、気功の送り手と受け手の脳波が同調することを突き止めています。』
皮膚を流れる電気
●傳田光洋氏は、末梢神経が通っていない表皮細胞そのものが情報を伝える仕組みを発見した。TRPと呼ばれる受容体が表皮細胞の膜表面に存在しており、これが外界から刺激を受け取ると細胞膜表面に電流を生じ、細胞から細胞に電気が流れてゆき、最終的に深部にある末梢神経へ刺激が伝わる仕組みになっている。
第7章 養生と気
人が生まれるときの気
●馬王堆の「胎児書」には人は生まれた瞬間が気の塊とされ、一番パンパンに気が詰まっている状態であるとされている。
●赤ん坊は陽気の塊とも言われている。
感想
鍼灸師編の2冊から学んだことは、“氣”の歴史は古く、また、“プネウマ”、“ルーフ”、“プラーナ”など世界各国に“氣”に似たものが存在していた点です。西洋医学につながっていくガレノスも“プネウマ”に注目していました。紀元前460年前頃とされる「医学の父」ヒポクラテスは“氣”については触れていないと思いますが、“自然治癒力”の重要性を説いています。
“氣”という言葉は色々な場面で使われています。宇宙や生命に関わるものであったり、呼吸であったり、気功のような特別なエネルギーを指す場合もあります。まだまだ、分からないところだらけですが、幸い勉強の材料はまだまだ出番を待っていますので、地道な勉強を続けていきます。
今回は、“氣”は時代を超え、国を超え、様々な状況の中で特別な“存在”として受け継がれてきた概念のようなものではないかと思いました。
ご参考:血液∈経脈
第5章の中の「経絡の考え方の変遷」でご紹介させて頂いた、黄帝内経 霊枢 経水篇第十二について詳しく解説されているサイトがありました。
【古医書】霊枢:経水篇 第十二
≪提要≫
十二経脈は、地上を流れる十二の経水が
地水を受けて各地を連絡するように、
五臓六腑に連絡し、交通しており
それぞれ大小・深浅・広狭・長短などが異なる。
五臓は神・気・魂・魄など機能活動を主り
六腑は水穀の精を全身に輸送し散布する。
十二経脈は血を受納し全身を運営している。
人体には一般的な標準があり、
各経気を調整する際にも一定の規律がある。』
また、東洋医学における“血”に関しては、「漢方の基礎知識」というサイトに、“血”は血液を含むものとされています。
暑ければ汗をかき、悲しければ涙をながし、食事をすれば唾液が助け、肌を切れば血が流れます。現代医学で説明される“血液”という理解(認識)は存在していませんが、その当時の人々が定義する“血”が現在の“血液”を含んでいると考えることは疑う余地はないように思います。
画像出展:「漢方の基礎知識」
『東洋医学で考える「血」はカラダの中を流れる赤い液体のことで、西洋医学でいう血液を含む栄養物質を指しています。「血」には精神活動を充実させ、全身に栄養を運んでカラダを潤す働きがあります。』