10月23日(日)埼玉県腎臓病患者友の会(NPO埼腎友)主催の講座に参加してきました。大変勉強になりましたのでブログにアップしたいと思います。
タイトルは、NPO埼腎友主催 第10回市民講座 透析にならないためのポイント ~慢性腎臓病(CKD)の予防と治療~ 講師は木全直樹先生です。
一般社団法人日本腎臓学会のホームページから、「CKD治療ガイドライン2012」をダウンロードすることができます。下記の写真をクリックするとページに移動します。
次に重要と思った点を列挙します。
1.慢性腎臓病(CKD)は他の臓器に悪い影響を及ぼす
腎臓は体の中の老廃物を尿として作り出す臓器です。従って腎臓の機能が働かなくなると、尿として排泄されるはずだった老廃物や水分が体の中に溜まるため健康を害す可能性が高まります。
2.慢性腎臓病(CKD)の定義
腎の働きが60%未満に低下した状態。CKDの1~5のstageではstage3に相当します。
本来、腎の働きを測定するためには、腎臓の糸球体から速やかに排泄される特徴をもつクレアチニンやイヌリンという物質を使って、排泄されずに残る量により濾過機能の性能を評価します。本来の検査には24時間の尿を溜める必要があります。このため、時間と手間の問題を解決する簡便な方法として開発されたのが、eGFR(推算糸球体濾過値)というものです。これは、血清クレアチニン値、年齢、性別から数値を計算します。
なお、クレアチニンは筋肉で作られる老廃物のため、筋肉が多い人は高めに、筋肉が少ない人は低めに出る傾向があり、クレアチニン値だけでCKDの診断を下すことは適切ではありません。また、クレアチニン値は年齢を考慮する必要があります。特に数値は2.0を過ぎると急激に悪化するという傾向があるため、2.0を超えたら十分な注意が必要です。
講座の最後に、先生が「CKDは患者さんの危機意識こそが最も重要な治療といえるかもしれない。」とお話されていたことが印象的でした。
3.透析導入
GFR15、stage5が透析導入の目安になっています。患者数は約32万人(2014年末)、予備群は国民
成人の約8人に1人ですが75歳以上に限定すると、その数は半分が予備軍とみられています。
4.慢性腎臓病(CKD)になりやすい体質
①糖尿病性腎症
一般的には糖尿病発症後から10~15年で発症するといわれています。
多くの場合、高血圧→網膜症→腎症という経過をたどります。2011年の日本透析医学会統計調査に
よると、糖尿病性腎症が原因の透析患者数は全体の44.3%を占めています。
なお、糖尿病を抱えることになると、食事療法、運動療法が腎臓病とは大きく異なるため、非常に
難しいものとなります。
②虚血性心疾患・心不全
「心・腎連関」という考え方があります。これは慢性腎臓病と慢性心不全と貧血の3つの病態は相
互に悪化させる悪循環を作ってしまうというものです。心不全により心臓のポンプ機能が低下すれ
ば血液循環の問題を発生させます。
下の図では、血液を運ぶゴミ回収車に問題が発生することになりますので、尿を作る工場である腎
臓も影響を受けることになります。
一方、腎臓自身が機能するためには臓器として健康でなければならず、それには血液によって運ば
れるる酸素と栄養素が必須となります。貧血はその供給面で問題を発生させるということになりま
す。いわゆる、「兵糧攻め」にあっているようなものです。
画像出展:「よくわかる生理学の基本としくみ」
5.75歳以上の注意点
75歳以上の方の食事制限に関し、現在はタンパク制限を勧めていないとのことです。これはタンパ
ク制限により、食事全体も落ちてしまう危険があるためです。
6.自分の腎臓は自分で守る
テキストでは最後のページになる項目です。ここでは10項目をテキストより引用させて頂きます。
①自身の腎機能(eGFR)を知る
②血圧、体重を測定・記録する…適正な体重の維持
③血圧高値とならないように注意する
④貧血、腎機能データが大丈夫か確認
⑤不必要な食事(タンパク等)を取らない
⑥こまめに水分補給…口渇中枢の感受性低下を自覚
⑦鎮痛薬を勧められたら、大丈夫か確認(ロキソニンなどの非ステロイド系鎮痛薬)
⑧造影検査を進められたら、大丈夫か確認
⑨大きな手術を勧められたら、大丈夫か確認
⑩腎排泄型薬剤、利尿剤を処方されたら、確認
(⑥~⑨の「大丈夫か確認」とは、いずれも腎臓への負担が大きいので確認するという意味です)
以上が受講した講座の概要になりますが、食事制限を考えるうえで考慮すべき、タンパク質と糖分について補足させて頂きます。
タンパク質は代謝によって血中に窒素化合物ができます。腎臓はそれを排泄するために一生懸命働きます。これが腎臓に負担がかかる理由です。ただし、腎臓を含め体のあらゆる器官はタンパク質で作られていますので、タンパク質が必要量に満たないと健康を害するということになります。従って、タンパク質は過剰に摂取しないということが大切です。
一方、糖分は腎臓に負担をかけるような代謝産物は作りませんので、特に腎臓に負担をかけるということはありません。しかし、高血糖→糖尿病→糖尿病性腎症という危険な流れを生み出す可能性があるため取り過ぎには注意が必要です。
最後に鍼灸治療について触れると、本治法は免疫力を高めることに主眼をおき、脈診、腹診により最適なツボを選択します。また、慢性腎臓病(CKD)は厳しい食事制限が求められるため、過度なストレスにより自律神経が乱れやすくなっています。そのため、標治法では頚肩部、特に脊柱に沿って現れる線状の硬結を改善し、全身調整穴により自律神経の乱れを防ぎます。これにより、本来の自然治癒力をととのえ、貧血や高血圧にも備えます。