今回の本は『電子と生命』という題名に魅かれ買ってしまいました。発行は2000年と20年以上前の本です。内容もとても難しく、全くついていくことができませんでした。
そこで、「電子(電気)」、「生命」、「生体エネルギー」というキーワードに注目し、頭に浮かんだ疑問を調べるということにしました。ブログは秩序に欠ける雑多な内容になっています。
なお、本書の目次だけはご紹介させて頂いています。
編集:垣谷俊昭、三室 守
初版発行:2000年6月
出版:共立出版
もくじ
序章 電子と生命
―新しいバイオエナジェティックスの展開
1.生体エネルギー変換の「場」
2.陽光をつかまえろ
3.電子とプロトンのカップルした運動―光合成細菌の場合
4.電子とプロトンのカップルした運動―葉緑体の場合
5.電子とプロトンのカップルした運動―ミトコンドリアの場合
6.電子伝達がベクトル的に起こるわけ
第1章 光エネルギーをとらえ反応の場所に運ぶ
1-1 多様なアンテナ系
1.アンテナ系構築の基本的な戦略
2.光合成細菌の膜内在性アンテナの構造と電子状態
3.光合成細菌の特殊なアンテナ系であるクロロソーム
4.酸素発生型光合成生物の膜内在性アンテナ
5.酸素発生型光合成生物の水溶性アンテナ色素タンパク質の特別な会合様式
1-2 紅色光合成細菌のアンテナ系における励起エネルギー移動の機構
1.光合成細菌アンテナにおけるバクテリオクロロフィル分子(BCh1)の美しい円形配列
2.アンテナ中の励起子による太陽光の捕獲
3.アンテナ系における非常に早い励起エネルギー移動(EET)と従来の理論の破綻
4.光合成初期EETの機構
5.アンテナ系構築の戦略
第2章 電子の方向性のある移動
2-1 光合成反応中心―電子の源流
1.光合成反応中心
2.反応中心の構造
3.反応中心の機能
4.反応中心における電子移動制御戦略
5.電子移動の方向性
2-2 植物における水の電気分解
1.光合成電子伝達系の進化
2.PSⅡの電子伝達体と構造
3.酸素発生の周期性―KokのS状態
4.水分解系におけるマンガンの機能の解明
5.EPRによるマンガンクラスターの構造解明
2-3 植物における高還元物質の生成
1.ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)
2.PSI複合体
3.PSIの酸化側と還元側での電子移動
4.FdからNADP⁺への電子移動(Fd:NADP⁺酸化還元酵素:FNR)
第3章 プロトンの方向性のある移動
3-1 キノンを介した電子とプロトン移動のカップリング―呼吸と光合成に働くシトクロムbc複合体
1.プロトン移動のループ機構とコンフォメーション変化機構
2.キノン酸化のエネルギーを最大限に取り出すもう一つのループ
3.シトクロムbc複合体の構造
4.キノンのもつ二つの電子を酸化側と還元側に振り分ける機構―電子スイッチング
3-2 シトクロム酸化酵素における電子とプロトン移動の共役
1.シトクロム酸化酵素
2.O₂還元酵素
3.水素イオン輸送
4.酸化還元状態変化に共役した立体構造変化
5.ヒスチジンサイクル
6.直接共役と間接共役
第4章 バイオテクノロジーへの展開
4-1 光合成材料を用いたデバイス開発
1.光合成膜での光エネルギー変換システム
2.光合成細菌の反応中心タンパク質複合体(RC)を用いた光電変換機能をもつデバイスの作製
3.反応中心と共役したエネルギー供給システム
4.光合成膜でのシトクロム類およびキノン誘導体を用いたデバイス開発
4-2 遺伝子操作で環境耐性植物をつくる
1.ストレス耐性遺伝子
2.塩ストレス耐性を改変する
3.低温ストレス耐性を改変する
4.高温ストレス耐性を改変する
5.ストレス耐性を改変する遺伝子操作における問題点
以下はブログの目次です。
1.人間には電気が流れています
2.電気の正体とは?
-電気の正体は自由電子だった-
-導体と自由電子(電気の正体)- YouTube 3分32秒
3.人間が電気を通すしくみ
-生体電流-
-超微弱電流療法(マイクロカレント)-
-生体はイオン駆動型のシステム-
-イオンとは何か?- YouTube 4分35秒
-イオンチャネルとは?-
4.宇宙空間のイオンと電子は電波を介してエネルギーをやりとりする
5.生命の源、「水」
6.体内環境という海
7.シアノバクテリア(酸素を生み出した細菌)
8.生態系
9.酸素発生型光合成と藻類
-藍藻の光化学系-
-地球大気と酸素発生型光合成の歴史-
10.生体エネルギー
1.人間には電気が流れています
画像出展:「パワーアカデミー」
『生体が電気信号を発するという現象は、18世紀より、イタリアの生物学者ガルバーニや物理学者ボルタによって、古くから研究がおこなわれてきました。現代医療では、この現象を利用したさまざまな医療機器が活躍しています。』
『具体的には、微弱な脳の電気の活動を調べて脳機能を検査する「脳波計」や、身体の筋肉が活動する際に発生する電気の活動を調べて神経や脳の活動状態を診断する「筋電計」、そして心臓の筋肉で生まれる微弱な電気信号を捉えて心臓の状態を観察する「心電計」などが挙げられます。』
2.電気の正体とは?
-電気の正体は自由電子だった-
画像出展:「子供の科学のWebサイト」
『金属の原子は他の原子とは少し性質が異なり、電子の一部が隣りの電子と行き来することができるのです。これを自由電子といいます。なにもなければ自由電子は金属の原子の中を勝手に動いているだけですが、他から新たに電子が入ってくると、自由電子は次々にこの影響で「同じ方向」に動き出します。これにより「電気の流れ」が生まれるのです。』
-導体と自由電子(電気の正体)- YouTube 3分32秒
画像出展:「TEPCO」
導体における電流(電気の流れ)は原子の周りにある自由電子の流れです。
3.人間が電気を通すしくみ (PDF1枚)
-生体電流-
画像出展:「うしく整形外科クリニック」
『体の中を流れる電流を生体電流と言います。この生体電流は、体のあらゆる組織に作用しています。』
『プラスとマイナスのバランスが正常な状態の場合、各臓器に血液が行きわたり、生体電流のバランス
が保たれます。このバランスが崩れると、体の中に流れる生体電流が乱れてしまい、自律神経も乱れます。その結果、不眠、倦怠感、むくみなどの様々な不調が
起こるのです。』
-超微弱電流療法(マイクロカレント)-
画像出展:「NHKクローズアップ現代」
『感じられないほど微弱な電流が、治療やスポーツの世界を一変させようとしている。腕や足などに流すと、筋肉の疲労回復が早まり、肉離れやねんざなどのケガがより早く治ることが明らかになりつつある。』
-生体はイオン駆動型のシステム-
画像出展:「東北大学」
こちらは東北大学さまの研究プロジェクトです。
タイトルは『ソフトウェット材料による生体親和性デバイスの製造技術を創成し,生体イオントロニクス工学を開拓する』です。
“生体はイオン駆動のシステム”という表現が気に入ったので、ご紹介させて頂きました。なお、イオンとは、「電子の過剰あるいは欠損により電荷を帯びた原子または基(原子の集合体)のこと」です。
※イオントロにクスに関する情報(PDF18枚)
-イオンとは何か?- YouTube 4分35秒
画像出展:「中学理科のポイント解説」
通常原子はプラスとマイナスの電気が釣り合っており中性の状態です。
しかし、なんらかの刺激が加わると内外に変化が起き、原子が電気を帯びるようになります。+の場合は陽イオン、-の場合は陰イオンと呼ばれます。
-イオンチャネルとは?-
画像出展:「moleculardevices」
『イオンチャネルとは、細胞の脂質二重層膜を貫通する細孔を形成するタンパク質群のことです。各チャネルは特定のイオン(例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、塩化物など)に対する透過性をもっています。』
4.宇宙空間のイオンと電子は電波を介してエネルギーをやりとりする
画像出展:「JAXA」
『地球や惑星周辺の宇宙空間には希薄ながらもイオンや電子が存在します。これらのイオンや電子はエネルギーの低いものから高いものまで様々な状態で存在することが知られていますが、なぜこのような多様性が生まれるのかは分かっていません。』
イオンも電子も地球を超え、宇宙に存在しています。
5.生命の源、「水」
画像出展:「大塚製薬」
『はじめての生命は、水の中で単細胞の生物として発生しました。その後、長い時間をかけて多細胞生物に進化し、その中から脊椎動物が生まれ、さらに陸上へ上がって空気を呼吸する生物が現れました。そして少しずつ、長い進化の道のりを経てようやく人類が誕生しました。
しかし、陸に上がった生命は、決して海と無縁になったわけではありません。私たちの身体の中にはたくさんの「体液」と呼ばれる水分があります。その体液、血液、そして、女性が胎内で新しい生命を育むための羊水にいたるまで、これらは全て電解質(イオン)を含み、太古の海水に成分が似ていると考えられています。これは、生命が海の中で誕生した名残であり、まさに私たちの身体は、内なる海を持っているといえます。』
6.体内環境という海
画像出展:「葉山ハーモニーガーデン」
『イメージ的には、血とかリンパ液とかの方が多いような気がしますが、一つ一つの細胞の中にある細胞内液(細胞質基質)の合計が、体液の60%を占めるということが意外な気がします。そして、細胞と細胞の間にある組織液を含めると90%を占めるというのもすごいことですね。人の体の細胞は本当に、海の中に漂っているというのもうなずけます。』
7.シアノバクテリア(酸素を生み出した細菌) 動画 2分13秒
画像出展:「NHK for School」
“地球に酸素を作り出した生物”
・約35億年の地球。大気は96%が二酸化炭素で、酸素はなかった。
・太陽光と二酸化炭素から酸素を生み出したのは、シアノバクテリアという細菌であった。
8.生態系
二酸化炭素に包まれた地球に酸素が作られ、生物は劇的な進化を遂げ、生態系が形成されました。
画像出展:「浦安市」
『空気、土、水などの自然環境と植物や動物など、その自然環境の中ですんでいる生き物たちは、太陽の光エネルギーを命の源として、お互いにかかわりあっています。このような自然界の物質とその循環をまとめて、生態系といいます。』
9.酸素発生型光合成と藻類
画像出展:「筑波大学 生物学類」
『進化の過程で光合成が発明されてからしばらくのあいだ(もちろん地質学的時間で)、炭酸同化のための電子の供与体は水素や硫化水素あるいはある種の有機化合物であったと考えられています。そして現存の光合成細菌はその当時の光合成の姿を今に残している生物と考えられています。やがて、原核光合成生物の中に、地球上に無尽蔵に存在していた水を電子供与体として利用する生物が現れました。藍藻(ラン藻)や原核緑藻などがそれです。』
-藍藻の光化学系-
画像出展:「筑波大学 生物学類」
『藍藻や真核藻類そして陸上の植物は,地球上のあらゆるところに存在する水を電子供与体として利用することで生息域を地球の全土に広げています。水のエネルギーのレベルは低く、充分な還元力を得るために2つの光化学系を利用しています。図は光化学系Iと光化学系IIの模式図でZスキームの名前で呼ばれています。光化学系IIで水が分解されて電子が取り出され、光エネルギーによって励起されて電子伝達系を流れていきます。その過程でATPが生産されます。』
-地球大気と酸素発生型光合成の歴史-
画像出展:「筑波大学 生物学類」
『現在の地球大気に含まれる酸素はこのような酸素発生型光合成生物によって形成されたものです。図から藍藻を含む藻類が地球大気の形成に果たした役割が理解できるでしょう。』
画像出展:「筑波大学 生物学類」
『生命の歴史を1年歴に表してみると図のようになります。』
『われわれは生物の中心は動植物であると考えがちですが、時間軸でみると陸上の動植物の歴史は生命の歴史のわずか13%にすぎません。これに対して 原核の藻類は30億年の歴史をもち、生命の歴史の8割近い時間を占めています。』
10.生体エネルギー
画像出展:「東京薬科大学」
『我々はご飯を食べ、呼吸することにより、生きていくために必要なエネルギーを作り出しています。この生体エネルギー獲得システムにおいては、有機物の酸化分解反応と酸素の還元反応という2つの化学反応をリンクさせ、そこから電気化学エネルギーを取り出しているのです。これは、負極の化学反応と正極の化学反応をリンクさせ、その間の電位差分のエネルギーを得る電池と同じ構造です(図を参照)。細胞の中で有機物の酸化により放出された電子は、ミトコンドリア内膜の電子伝達系(負極と正極をつなぐ電線)を経て、酸素に渡されます。この過程で膜の内側から外側へプロトンが輸送され、その濃度差を利用して生体内のエネルギー通貨であるATPが合成されるのです。』
感想
宇宙には電子もイオンもあるそうなので、地球が生まれる前から存在しているということです。地球の誕生は約46億年前、生命の誕生は約38億年前、その生命誕生の約3億年前の大気は96%が二酸化炭素で、酸素はなかったそうです。
酸素を生み出したのはシアノバクテリアという細菌です。その後、酸素発生型光合成の藍藻を含む藻類が地球大気の組成を大きく変え、酸素を得た生物は進化のペースを加速させました。
植物は“生態系”の「生産者」とされています。材料は太陽エネルギーと水と二酸化炭素です。人間は「消費者」であり、水と酸素が生命維持には必要で、体の約90%は水でできています。一方、生体エネルギーのATPは、細胞の中で有機物の酸化により放出された電子が、ミトコンドリア内膜の電子伝達系を経て酸素に渡されます。この過程で膜の内側から外側へプロトンが輸送され、その濃度差を利用して生体内のエネルギー通貨であるATPが合成されます。
生態系の「消費者」である人間は、オゾン層に守られたマクロな環境(酸素と水)とミクロな電子の働き(生体電流とATP)によって、生かされているのだと思いました。
かなり強引なまとめですが、何とか「電子と生命」の近くにたどり着いたかなと思います。