不妊鍼灸3

はるねクリニック銀座の理事長である中村はるね先生は、不妊治療に携わって36年です。今回、中村先生の本を選んだのは、このキャリアが1番の理由です。図や表が多く、会話形式(Q&A)になっているため、とても読みやすくなっています。

医師・スタッフ女性率100%

高度不妊治療・婦人科クリック

著者:中村はるね、清水真弓
先生!私は妊娠できますか?

著者:中村はるね、清水真弓

出版:主婦の友インフォス

発行:2017年7月

目次は大項目、中項目の2段階ですが、ブログでご紹介しているのは大項目だけです。

また、図に関しては、『病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科』から拝借しているものも多く、中村先生の『先生!私は妊娠できますか?』の文章と混在することになるため、かえって分かりづらく、しかも非常に長いブログになってしまいました。

目次

第1章 「私って、不妊症なんですか?」

第2章 「体外受精じゃなきゃ、ダメなんでっすか?」

第3章 「夫が原因だった! でも辛いのは私なの?」

第4章 「体質改善したら、卵子は若返りますか?」

第5章 「仕事が楽しいっていけないことですか?」

第1章 「私って、不妊症なんですか?」

年齢とともに妊娠率は下がっていく  日本産科婦人科学会「2014年 生殖補助医療データブック」より

35歳を過ぎると妊娠率がガクンと下がる。

●妊娠適齢期は25~35歳である。

年齢とともに妊娠率は下がっていく
年齢とともに妊娠率は下がっていく

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

卵子はどんどん減っていく

●卵子は胎児20週の時が最大で600万~700万個。その後、どんどん減っていき、思春期には20~30万個までに激減する。

●排卵、月経の有無にかかわらず、1カ月に約1,000個減少する。

●減少スピードは個人差が大きいが、38歳くらいから減少速度がアップする。

●一生の間に排卵する卵子は400~500個である。 

卵子はどんどん減っていく
卵子はどんどん減っていく

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

基礎体温のグラフ

基礎体温のグラフ
基礎体温のグラフ

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

良くないパターン

左上:体温がバラバラで相がはっきりしないパターン

左下:高温相が長いパターン

右上:高温相と低温相の二相にならないパターン

右下:高温相が短いパターン

プロゲステロンの作用によって黄体期に上昇する
プロゲステロンの作用によって黄体期に上昇する

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・排卵期以降の黄体期にプロゲステロンの作用によって体温が上昇します。

・一般的に体温は、運動摂食感情の起伏基礎代謝などが影響しています。

・高温相と低温相の差は約0.3~0.6℃です。

・基礎体温のみから排卵日を特定することはできません。

黄体機能不全と無排卵
黄体機能不全と無排卵

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

上段は“黄体機能不全”の基礎体温のグラフです。プロゲステロンの分泌不足のため、高温相が短くなります(10日以下)。

下段は“無排卵”の基礎体温のグラフです。卵胞が黄体へ変化せず、プロゲステロン分泌の増加が起こらないため、体温の上昇がみられません。

不妊の原因

女性の場合

●ホルモンバランスが崩れて排卵がうまく起こらない…20~50%

●卵管が詰まっている…30~40%

●おりものが少ない…10~15%

●子宮に病変・奇形などがある…15~20%

●その他

・受精できない…4%

・精子を攻撃する免疫を持っている…~3%

・着床できない…15~20%

・原因不明…10~20%

・高齢

子宮内膜症…25~35%

男性の場合】(40~50%)

●精子がうまく作れない

●精子がうまく運ばれない

●副性器に障害がある(精嚢炎・前立腺炎)

●勃起障害・射精障害

女性不妊と男性不妊
女性不妊と男性不妊

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・頻度は重複した数値です。

・女性不妊の原因は、視床下部-下垂体-卵巣卵管子宮の3つに大別されます。

原因不明不妊症
原因不明不妊症

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・原因不明の不妊症(機能性不妊症)は、不妊を訴えるカップルの10~20%とみられています。

・考えられる原因は、軽度の子宮内膜症軽度の卵管癒着卵子の質の低下染色体異常子宮内膜ホルモン感受性低下精子機能不全などがあります。

ストレスを感じると妊娠できないワケ

●ストレスは脳を攻撃する

ホルモンは脳と卵巣から出ている 

●妊娠に関与するホルモンは脳(視床下部)と脳の指令に基づき脳下垂体および卵巣から出る。

ストレスを感じる脳の感情中枢や食欲中枢は、性腺刺激ホルモンを分泌する視床下部に近いところにあるため、ストレスは排卵に影響を与える。 

ホルモンは脳と卵巣から出ている
ホルモンは脳と卵巣から出ている

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

排卵障害(20~50%)

●排卵が不規則または無排卵、卵子が育たない等の状態。排卵がなくても月経が起こる場合がある。

[検査]

●ホルモン検査

●超音波検査

●基礎体温表

ホルモン異常が不妊に関わる
ホルモン異常が不妊に関わる

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

視床下部-下垂体-卵巣系は月経・排卵だけでなく、卵胞発育、黄体形成にも関与しており、妊娠までの全過程に影響を与えます。

特にエストロゲンは、頸管粘液の状態にも影響します。

卵管因子(30~40%)

●卵管は精子と卵子の出会う場所であり、受精から子宮での着床直前まで、受精卵が育つ場所。卵管は細いので詰まりやすい。

[検査]

●通水検査、子宮卵管造影検査 この検査で卵管の通りが良くなって妊娠するケースもある

●クラミジア抗体検査

●CA125(子宮内膜症の腫瘍マーカー)

●腹腔鏡検査

卵管因子による不妊の原因
卵管因子による不妊の原因

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・原因は、感染子宮内膜症手術既往などがあります。感染原因で1番多いのはクラミジアによるものです。

子宮因子(15~20%)

●子宮に筋腫、ポリープなどの病変や、子宮奇形(中隔子宮、双角子宮)が原因。

[検査]

●超音波検査

●子宮鏡検査

●子宮卵管造影検査

●MRI

着床が妨げられる
着床が妨げられる

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・主な原因は、子宮筋腫子宮奇形アッシャーマン症候群子宮内膜が傷つき癒着を起こしてしまうことが原因とされる]

受精障害(4%)

●先体反応障害(精子側の「卵子に入った」時に出る反応がない。

●卵子の殻が厚い

[検査]

●なし

免疫因子(~3%)

●免疫異常により精子を異物と認識し攻撃してしまう。

[検査]

●抗精子抗体の血液検査

抗体により妊娠が妨げられる
抗体により妊娠が妨げられる

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

抗体により妊娠が妨げられるものです。

・免疫因子には、自己免疫疾患や、胚と母体の免疫学的相互作用なども上がっていますが、不明点が多く明確にはなっていません。

 

 

着床障害(15~20%)

●良好胚を移植しても繰り返し不成功となるときに疑う。

[検査]

●子宮内膜検査(組織診、超音波)

●子宮鏡検査

●血液検査

子宮内膜症(25~35%)

●子宮内膜が子宮内腔以外に卵巣の中や骨盤の腹膜などにできてしまい出血を繰り返す疾患。

子宮内膜症の女性の30~50%が不妊症。

[検査]

●超音波検査

●子宮卵管造影検査

●CA125、CA19-9検査(子宮内膜症の腫瘍マーカー)

●腹腔鏡検査

頻繁に併存する子宮内膜症と不妊
頻繁に併存する子宮内膜症と不妊

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

子宮内膜症と不妊は併存が多くみられます。

・子宮内膜症女性の20~40%が不妊症を伴っているとされ、一方、不妊女性の15~20%に子宮内膜症を合併しています。

原因不明の不妊症女性に腹腔鏡検査を行うと20%程度に子宮内膜症の腹腔内病変が発見されます。

子宮内膜症とは
子宮内膜症とは

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

生殖年齢女性の約10%にみられます。

子宮内膜症は、子宮内膜症様組織がエストロゲンにより増殖することで発症します。好発年齢はエストロゲン分泌量が多い性成熟期(特に20~30歳代)になります。

・エストロゲンは、子宮内膜症以外に乳癌や子宮筋腫、子宮体癌にも関与します。

 

子宮内膜症:疼痛と不妊が二大症状
子宮内膜症:疼痛と不妊が二大症状

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・子宮内膜症の二大症状は疼痛と不妊です。

月経を重ねるごとに強くなる月経痛が子宮内膜症の特徴です。

 

男性因子(40~50%)

●男性因子の半分以上が原因不明

[検査]

●精液検査

精子の性状や精液の量・濃度をチェック
精子の性状や精液の量・濃度をチェック

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・顕微鏡により精子の性状や精液の量、濃度をチェックします。

 

●フーナーテスト(性交後試験)

フーナーテスト:精子が頸管を通過できるか
フーナーテスト:精子が頸管を通過できるか

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・精子が頸管を通過できるかどうかを調べます。テストは精子通過に適している排卵期に行います。

・特殊な機器を使わず検査できます。

 

フーナーテストの詳しい説明が出ています。なお、こちらのサイトは、妊娠希望や子育て中の方向けの情報を提供されています。

※下記は、不妊検査の全体像です。

不妊検査の流れ
不妊検査の流れ

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・スクリーニング検査[左のBox]を月経周期2周期以内に完了することを目標とし、特定された因子、疑いのある因子に対して二次検査を行うことが推奨されています。

不妊治療

初診での検査

・超音波検査、子宮頸部細胞診、膣一般培養検査、クラミジア抗原検査、血液検査、月経周期に合わせた各種ホルモン検査など

初診での検査内容
初診での検査内容

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

[一般不妊検査]

STEP1タイミング法…女性の自然な排卵に合わせて性行為のタイミングを合わせる方法。卵子を育てる薬(クロミッド、hMG注射など)、排卵を促す薬(hCG注射など)を使う場合もある。【保険適用】

STEP2人工授精…女性の自然な排卵に合わせて、子宮内に人工的に精子を送り込む方法。薬を使って卵子を育てることが多い。【保険適用外】

[高度生殖医療]

STEP3a体外受精…取り出した卵子に精子をふりかけて、受精させる。受精卵は初期胚もしくは、胎盤胞まで育ててから子宮に戻す。

STEP3b顕微授精…取り出した卵子に顕微鏡を使って細い針で1匹の精子を穿刺注入し、授精させた受精卵を初期胚もしくは、胚盤胞まで育ててから子宮に戻す。

不妊治療:高度な治療ほど人工操作が増える
不妊治療:高度な治療ほど人工操作が増える

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

通常、不妊治療は簡便な治療から順に進めていきます。

・1つの治療法は3~6周期が目安です。ステップアップのタイミングは、原因、年齢などを考慮して個別に判断されます。

さいたま市大宮区にある病院です。検査などの動画を含め、不妊治療の全体像が良く分かります。

第2章 「体外受精じゃなきゃ、ダメなんでっすか?」

●基礎体温表で分かるのは排卵日だけではなく、ホルモン分泌から体質や生活習慣まで、いろいろな手掛かりが見えてくる。

特定不妊治療費助成制度について市区町村ごとに違いがあるようです] 

●対象者

・法律上の婚姻をしている夫婦で、申請される地域に住民登録があること。

・前年の夫婦合算の所得額が730万円未満であること。

●助成上限回数

・妻の年齢が39歳までに1回目の助成を受けた方……通算6回まで

・妻の年齢が40~42歳までに1回目の助成を受けた方……通算3回まで

※妻の年齢が43歳以上で開始した治療は、助成制度の対象外

ご参考(さいたま市の場合)

さいたま市特定不妊治療費助成事業のお知らせ

アシステッドハッチング法 

●良好な胚でも透明帯が厚かったり硬かったりするとうまく孵化できない場合があるので、透明帯の一部を開き、孵化(ハッチング)を補助(アシスト)する。 

アシステッドハッチング
アシステッドハッチング

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・凍結胚を使用する例、胚移植反復不成功例(着床障害によるもの)で有効とされています。

スクラッチング 

子宮内膜を意図的に傷つける方法

SEET(シート)法

シート法
シート法

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

・胎盤胞から分泌された因子が含まれた培養液を移植の2~3日前に子宮内に注入します。これにより子宮内膜が着床しやすくなると考えられています。

体外受精の卵巣刺激

体外受精・排卵誘発方法

排卵誘発スケジュール
排卵誘発スケジュール

アンタゴニスト法

[メリット]

●投与されるhMG[ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン]の量が減るため、体への負担は軽減される。

●排卵抑制のためにアゴニストを使用することで、ほぼ卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を回避可能。

[デメリット]

●エストロゲンが低下する可能性がある。

●アゴニスト使用のタイミングが難しい

ロング法(アゴニスト法)

[メリット]

●採卵日をある程度自由に設定可能。

●育つ卵の数が多いため、採卵数は期待できる。

●多くとれた場合、移植胚を凍結可能。

[デメリット]

●卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の危険性がある。

●体への負担があるため、2~3周期は卵巣を休ませる。

ショート法(アゴニスト法)

[メリット]

●育つ卵の数が多いため、採卵数は期待できる。

●多くとれた場合、移植胚を凍結可能。

●1周期で採卵可能なため、ロング法に比べ時間を有効に使える。

[デメリット]

●卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の危険性がある。

●体への負担があるため、2~3周期は卵巣を休ませる。

自然周期法-低刺激法

[メリット]

●薬を使わない(自然周期法)、使用しても刺激が弱い(低刺激法)ため、体への負担が少ない。

●毎周期、繰り返すことが可能。

●卵巣機能が低下している人にも対応できる。

[デメリット]

●刺激が弱いため、育つ卵の数が少ない、または育たない。

●自然排卵が起こり、採卵ができないこともある。

世界一体外受精を行うのに、世界一赤ちゃんが生まれないのはなぜ?

原因は日本での体外受精は刺激が足りないからではないか。ただし、刺激が強いと(卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まる。

※下記は「卵巣刺激」について説明されたものです。

ART(生殖補助医療)の第一段階:卵巣刺激
ART(生殖補助医療)の第一段階:卵巣刺激

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・卵巣刺激(右のBox)には、クロミフェンや、ゴナドトロピン製剤(hMG製剤、FSH製剤、hCG製剤)を用いる。最近では、クロミフェンとゴナドトロピン製剤を組み合わせた方法や、GnRH製剤を併用する方法も使用されているようです。

 

外国と日本の体外受精実行数と出産率
外国と日本の体外受精実行数と出産率

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

このグラフを見て、大変驚きました。「なんで、こんなに日本の出産率は悪いのだろう!?」と思い、検索したところ、“子宝先生®の婚活” さまというサイトに、詳細に分析された情報がありました。

 

「日本の1回の採卵あたりの出産率が60ヶ国中最下位は本当か」
「日本の1回の採卵あたりの出産率が60ヶ国中最下位は本当か」

日本の1回の採卵あたりの出産率が60ヶ国中最下位は本当か①”、この記事は4回にわたっています。後半部に【関連ページを表示】というエリアがあり、そこに②③④があります。 

生殖補助医療の実施件数と出産率
生殖補助医療の実施件数と出産率

画像出展:「日本の1回の採卵あたりの出産率が60ヶ国中最下位は本当か①」

こちらは、先にご紹介したものを横並びにし、1回の採卵あたりの出産率を折れ線グラフに変えたものになっています。

国別単・複数胚移植の割合
国別単・複数胚移植の割合

画像出展:「日本の1回の採卵あたりの出産率が60ヶ国中最下位は本当か③

こちらは“国別単・複数胚移植の割合(%)”というタイトルのグラフです。左端の棒グラフが日本です。中央右に日本と同じように“青”が圧倒的に多い国がありますが、これはスウェーデンです。そして、この“青”は“1個”となっていますので、いわゆる単胚移植になります。『生殖補助医療において複数の胚移植による多胎妊娠は母子共に最もリスクです。特に高齢になればなるほど命の危険度が上がります。』との説明がありますので、単胚移植のメリットは安全性が高いこと、デメリットは出産率が低いことだと思います。

ただし、上のグラフで日本とスウェーデン(右から2番目)を比較すると、スウェーデンは日本以上に単胚移植の割合が多いにも関わらず、出産率(最初のグラフの折れ線)は日本の約4倍となっています。 

世代別胚移植割合
世代別胚移植割合

画像出展:「日本の1回の採卵あたりの出産率が60ヶ国中最下位は本当か④

こちらは“世代別胚移植割”というタイトルのグラフです。左端の棒グラフが日本です。“”は34歳以下、“オレンジ”は35~39歳、“グレー”は40歳以上 となっています。日本は40歳以上⇒35~39歳⇒34歳以下の順になっており、日本と同じ傾向の国は他にはありません。比較的日本に近い国としては、ギリシャ、イタリア、スペインがあります。参考までにこの3カ国の出産率を見ると、ギリシャ約25%(約4倍)、イタリア約15%(約2.5倍)、スペイン約18%(約3倍)となっています。この3カ国は日本に比べ複数胚移植が多いため、この高い出産率は胚移植の数に関係しています。

また、単数胚が日本以上にも多いにも関わらず、約4倍という高出産率のスウェーデンを見ると、34歳以下⇒35~39歳⇒40歳以上となっており、日本とは真逆です。

35歳前に不妊治療を開始することが望ましいところですが、経済面や子育て環境などの要因が改善されないと簡単ではないと思います。 

第3章 「夫が原因だった! でも辛いのは私なの?」

●精子の数はコンディションで変わる。

精子の数はコンディションで変わる
精子の数はコンディションで変わる

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

・精子の数だけでなく、精子の運動率も、生活習慣、食習慣、環境ホルモン[生体の複雑な機能を調節するために重要な役割を果たしている内分泌系の働きに影響を与え、生体に障害や有害な影響を引き起こす作用を持つ物質]、ストレスなどの影響を受け変化します。

 

男性不妊の原因:80%は造精機能障害
男性不妊の原因:80%は造精機能障害

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

①造精機能障害…精子を作る機能に問題がある。(男性不妊の原因の80%以上)

・造精機能障害の7割は原因不明

②精路通過障害…精子が外に出ていく通路に問題がある。

③副性器障害…精嚢や前立腺などに炎症が生じる。

④性機能障害…勃起や射精に問題がある(ED、射精障害)。

 

男性不妊の原因
男性不妊の原因

画像出展:「病気がみえる vol9 婦人科・乳腺外科」

・男性不妊は、妊娠の希望と1~2年以上の性生活にもかかわらず、妊娠しない状態のうち、男性側に原因があるものを指します。

・男性不妊の原因の中では、造精機能障害が最も多く、全体の80~90%を占めます。

 

 

第4章 「体質改善したら、卵子は若返りますか?」

●基礎体温は36度台が望ましいが、1番大事なことは二相に分かれていること。

●糖分や脂肪分の多い食事や、添加物の多いジャンクフードを避ける。

妊娠に必要な栄養の摂り方のコツは、「低糖質&高たんぱく」である。

妊娠に必要な栄養素はたんぱく質、ビタミンA・B群・E、鉄・亜鉛・カルシウム、コレステロールなどである。

●良質な卵子、精子を作るためには血糖値の吸収をゆるやかにすることが大事なので、野菜やお菜を先に食べる。

大豆イソフラボンは、豆腐や納豆、豆乳など食事で摂る分には良いが、過剰摂取は良くない。これは、大豆イソフラボンの摂りすぎは、月経サイクルを乱したり、ホルモン療法にマイナスの影響を及ぼしたりするおそれがあるためである。

●食事のバランスに問題がある場合、赤ちゃんの病気(例えば、神経管閉鎖障害)を予防できる葉酸や、不足しがちやミネラルやビタミン類をサプリメンで補うのは良いが、カプセルやドリンク剤などの中には、加工する段階で添加物を使っているものもあるので、そこは注意が必要である。

鍼灸や漢方などの東洋医学は、血行改善が期待できるので良いが、産婦人科で診てもらうことは必須である。

特に女性は“冷え”はよくないので、腹巻でお腹を温かくしたり、足を冷やさないなどの配慮が必要である。

●卵子は休眠状態から、目覚めて排卵するまで約半年かかる→体質改善は半年前から!

男性はサウナや長風呂、長時間座ったままの仕事などは精巣や前立腺にはあまり良くないので注意が必要。また、過度なカフェイン摂取を避けること。食事で摂れない場合は抗酸化作用のあるビタミンE、Cや亜鉛の摂取は望ましい。射精は造精機能の観点から週2回以上を心がける。

●精子は作られるのに74日かかる→体質改善は2、3ヶ月前から!

コーヒーは過剰摂取でなければ、神経質にならなくて良いが、タバコは絶対に止めること。タバコや添加物、ストレスは体内の活性酸素を増やし、細胞を傷つけてしまう。

●体質改善によって卵子の老化や劣化を抑える(若返るわけではない)。

妊娠しやすい体とは、卵子や精子の質が良くて、受精卵が着床しやすい子宮環境になっている体であるということである。

●不妊治療と障害児の関係は、不妊治療による出産が高齢出産になる場合が多いという点も含め、はっきりした結論は出ていない。

体質改善をする≠卵子が若返る
体質改善をする≠卵子が若返る

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

体質改善をしても卵子が若返るわけではありません。

 

第5章 「仕事が楽しいっていけないことですか?」

●治療の成功率は分母の取り方や、妊娠判定の基準などが病院によってことなっており、また、病院によっては公開していないデータもあるので、単純に比較するのは難しい等、病院別の妊娠率は公表されていない。

●病院側の設備や技術、知識の差、培養士の能力や経験などによって、病院の妊娠率には差が出る。

●年齢とともに、特に35歳、38歳、42歳を契機に妊娠率は著しく低下していくという事実は世界的に見ても変わらない。

●日本の不妊専門の病院の数は人口比では世界トップレベル。

●出産率が先進国の中で最も低い原因の一つに、年齢因子の要因がある。日本の体外受精のピークは39歳程で他国より高い。

義務教育の中で、避妊だけでなく、妊娠・不妊についても教えるべきである。

●日本の産休期間の14週は、フランスの16週と比べても大差はないが、フランスの場合、その間の給与は100%保証される(日本の「出産手当金」は60~70%で、勤務先の健康保険に加入していることが条件)。さらに、出産費用の他、受診料、検診、出生前診断、不妊治療が公費で賄ってくれる。29歳までのカップル(結婚の有無は問われない)が二人で受診すれば検査費用は全額無料。

日本では、性のことはタブー扱いされており、政治家を含めて出産は女の問題だと思っている人が多い。

妊娠力についての国際調査:日本は40未満(平均64.3)
妊娠力についての国際調査:日本は40未満(平均64.3)

画像出展:「先生!私は妊娠できますか?」

日本は、「妊娠」についての知識が低く、グラフによると平均値64.3に対し、日本は40にも届いていません。

付記:”置いてきぼりの男性不妊、菅政権で具体化される?”

こちらはCareNetさまの記事の一部です。下記のロゴをクリック頂くと記事に移動します。

 

不妊治療がついに保険適用か

さて今回、菅政権が保険適用を目指すのは、不妊治療の中でも、運動能力の高い精子のみを選択して人工的に子宮に注入する「人工授精」、体外で人工受精させた卵子を子宮に戻す「体外受精」や「顕微授精」。いずれも現在は自由診療で行われ、人工授精は1回数万円、体外受精や顕微授精に至っては1回50万円超もザラ。治療が1回で成功することはまれで、繰り返しこうした治療を行うカップルには重い経済負担がのしかかる。

保険適用は経済的負担を軽減する点が一番大きいものの、同時に保険適用で治療がより日常化することで、不妊治療への理解が深まることへの期待も寄せられているという。

そうしたさまざまな期待がより良い方向に向かうことに私はまったく異論はないが、この種のニュースを見るたびに、やや違和感を覚えることもある。

過去に世界保健機関(WHO)が不妊症の7,273組を対象に行った原因調査では、原因が男性のみにあるケースが24% 女性のみにあるケースが41% 男女ともにあるケースが24% 原因不明が11%と報告されている。単純計算すれば、男性に何らかの原因があるケースは48%となる。この件はよく「不妊の原因は男性にもありながら、なぜか女性のせいにばかりされている」という文脈で使われることが多い。ところが今この不妊治療の保険適用問題の段になると、匿名、実名を問わずメディアに登場して不妊治療の大変さを語るのは女性のみ。原因の半数と言われる男性の視点を目にすることは極めて少ない。』