帯津良一先生のことは以前から存じてあげていました。今回、やっとというか、ついにというか、先生の多くの著書の中から、「ホリスティック医学入門」という本で先生のお考えを勉強させて頂くこととしました。
著者:帯津良一
出版:角川書店
発行:2009年3月
なお、本題に入る前にネットで見つけた、“日本ホリスティック医学協会”のホームページをご紹介しています。余談ですが、歴史もありとても興味深い魅力的な協会だったので、やや衝動的ですが“入会”してしまいました。
協会概要:『本会は1987年に誕生した団体で、人々の健康の増進とホリスティック医学と健康の概念の普及をはかることを目的としている非営利団体です。平成15年にNPO法人としての認可を受け、ホリスティック医学に関心を持たれるすべての方に開かれた組織作りを進めています。現在、医師、薬剤師、看護師などの医療従事者をはじめ、各種療法家、セラピスト、研究者から健康に関心のある一般の方々まで、幅広い層の方々が入会されています。( 2016.8月現在、会員数約1,700人)』
ごあいさつ:『20世紀、西洋医学が人間の身体性(からだ)を対象に、大いなる達成を果たしたあと、新しい世紀の到来とともに、身体性を超えて精神性(こころ)と霊性(いのち)にも注目する医学を待望する声が内外に高まってきました。ホリスティック医学は病というステージだけにとどまらず、生老病死から死の世界まで、まるごとを対象にしているため、代替もなければ統合もありません。医学とはいっていますが、ホリスティック医学とは”生き方”そのものなのです。これからは医療の現場にいる医者ばかりでなく、患者さんも含めすべての人々がホリスティックな医療を推し進める時代です。当協会では、人々が、よりよく生きられる社会をつくるために、医療・生活・社会における様々な分野で、ホリスティックヘルスを普及し人類の健康を推進する努力を続けてまいります。皆様のご賛同とご参加を心から期待しております。』名誉会長 帯津良一(帯津三敬病院名誉院長)
最も印象に残ったお話は、“「死」と「心」の問題”と“しぶとい明るさを身につける”です。この二つは、思うに、“ガンといかに向き合うか”ともいうべき内容のように思います。
ブログは4つに分かれているのですが、以下のようにグループ分けをし、目次(黒太字が取り上げた項目)には、これらのグループ名(副題)を明記しました。また、要点をまとめる形式と引用(『』)が混在になっています。
■ガンとホリスティック医学1:[ガン治療の現状と課題]
■ガンとホリスティック医学2:[ガンといかに向き合うか]
■ガンとホリスティック医学3:[ホリスティック医学]
■ガンとホリスティック医学4:[ガン治療の症例]
目次
第一章 マニュアルが存在しないガン治療
外科手術の限界
ガンほどミステリアスなものはない(2:[ガンといかに向き合うか])
迷走する治療現場
ガン難民の行方(1:[ガン治療の現状と課題])
ガンと上手につき合う人々
主体的な治療選択を
なぜ人はガンになるのか
ガン健診の利用法
あてにならない余命宣告(2:[ガンといかに向き合うか])
セカンドオピニオンのすすめ
西洋式三大療法に代替医療を併用(3:[ホリスティック医学])
「死」と「心」の問題(2:[ガンといかに向き合うか])
第二章 西洋医学を否定しない代替療法を
手術後も再発する患者さんたち(1:[ガン治療の現状と課題])
気功など中国医学への着目(3:[ホリスティック医学])
病院内に道場を作る
人間丸ごと扱う医学を(3:[ホリスティック医学])
柔軟な治療デザイン(1:[ガン治療の現状と課題])
「東洋医学は“場”の医学」(3:[ホリスティック医学])
「生命場」に働きかける治療法(3:[ホリスティック医学])
再発した骨肉腫を食事療法と瞑想、抗ガン剤で克服(4:[ガン治療の症例])
西洋医学の全否定は誤り(4:[ガン治療の症例])
フィリピンの心霊手術とインドのサイババ(4:[ガン治療の症例])
信頼できる外科医とは(4:[ガン治療の症例])
抗ガン剤の効果(4:[ガン治療の症例])
代替療法を受けるコツ(4:[ガン治療の症例])
霊的な目覚め(4:[ガン治療の症例])
治療方法は星の数ほど残されている
治療選択ミスは次の糧に
白隠禅師に学ぶ
第三章 医師と患者さんの徹底した“戦略会議”を
中国のガン治療の中心人物・辛育令先生に学ぶ
患者さんのエネルギーを高める演出
希望が人間を支える(2:[ガンといかに向き合うか])
ガンが三ヵ月で消失!
“戦略会議”の内容(2:[ガンといかに向き合うか])
「いのちの場」を高めるコミュニケーション(3:[ホリスティック医学])
大事な家族のサポート(2:[ガンといかに向き合うか])
[サイモントン療法](3:[ホリスティック医学])
食事から大地の“気”を体内に入れる
食事療法に必要な工夫
適量のアルコールは治療効果が大
まずは気功の場に身を置く
代替療法に医学的根拠は必要か?
患者さんの人生を反映させる治療を
第四章 もしガンを告知されたとしても
人間は「明るく前向き」には生きられない
自分の中の恐怖心や不安を認める
しぶとい明るさを身につける(2:[ガンといかに向き合うか])
生命のエネルギーに小爆発を起こす
逆転ホームランのチャンスを待つ
医療者の役割
気功の利用(3:[ホリスティック医学])
日常生活のときめき
娘の花嫁姿を見て亡くなった患者さん
夏目漱石の生き方に学ぶ
「生命場」のエネルギーを高める方法
第五章 生老病死を統合する生き方を
死後の世界に飛び込む
「死は医学の埒外」か?
楊名時先生に学ぶ理想的な死に方
「よろんで朽ち果て、万有の中に崩壊してゆく」
自らの死と対峙した患者さん
死について語り合える場を
人は死では終わらない
死を受け入れることの意味
年をとる意味
生きがいで肺ガンを克服した女性
「生老病死」を丸ごと捉える
自分だけの死の最高のタイミング
あるがままに生きる
あとがき(2:[ガンといかに向き合うか])
【ガン治療の現状と課題】
ガン難民の行方
●病院で見放された患者さん、いわゆる「ガン難民」は約68万人といわれている。
●ガン難民は代替療法に希望を求める。
●『代替療法とは、簡単にいえば、大学の医学部で習わない医療のことです。西洋医学以外の治療法といってもいいでしょう。』
●『手術や抗ガン剤がまだ有効な状態であるにもかかわらず、それを否定してしまうのは得策ではありません。大きなガンが局所的にあるなら、これを手術や抗ガン剤で小さくしてから代替療法で対処していくという方法も有力な選択肢です。』
●『迷路から脱する方法があるとすれば、西洋医学の医師にも、代替療法をすすめている医師や治療家にも、そして患者さんにも「ガンはミステリアス」というクローバー先生の言葉を胸に刻んでいただくことです。』[この「ガンはミステリアス」は帯津先生の最大級のメッセージですが、詳細は次回の“ガンとホリスティック医学2”の冒頭でご紹介します]
本書の発行は2009年ですが、ここに記載されていた“ガン難民”の数は約68万人というものでした。「現在はどれ位なのか?」と思い、ネット検索してみました。この1、2年ということでは良い情報はなかったのですが、いくつか興味深い情報がありました。
こちらは、2014年時点ということですが、“約100万人”というお話です。『「がん難民」という言葉の定義は様々ありますが、日本医療政策機構による「がん患者調査報告」によれば、治療説明もしくは「治療方針決定時のいずれかの場面において、不満や不納得を感じたがん患者を「がん難民」と定義した場合、その数は全国で100万人に達すると言われています。※2014年時点』
こちらは“なぜ「がん難民」は生まれる? 医師が指摘する2つの理由”というAERAdot(記事はAERA2015年9月7日号)にあったものですが、この中に『「日本医療政策機構」の調査(2006年)によれば、そうした「がん難民」は推計約68万人いるといいます。』ということが書かれていました。68万という数字は、こちらの調査データのようです。
こちらの”2人に1人は“癌難民”‐医療政策機構が調査”は、上記でご紹介した日本医療政策機構さまの調査に関する記事です(2006年12月)。
こちらは日本医療政策機構さまのサイトです。「サイト内検索」で“がん難民”を検索しましたが、情報は2010年までのようです。
手術後も再発する患者さんたち
●『これほどにまで医療技術が進歩しているのに、どうしてガンが治らないのか。私は、ガン治療の根本的な部分にメスを入れないと、ガンという病気には対処できないのではと考えるようになりました。』
●西洋医学のガン治療はガンの病巣だけを相手にしており、病巣のガン細胞を取り去る治療である。
●ガン治療の問題は原因が残っているため再発リスクが排除できない点である。
●『西洋医学のガン治療は、ガンの病巣だけを相手にしています。手術は文字通り、ガンを切って取ることに専念します。放射線治療では、ガン細胞に放射線を当てて焼き殺そうとします。そして、抗ガン剤は、どうしたら効率的にガン細胞を殺せるかといったところに焦点を当てて開発されます。
特定の原因や病巣をターゲットにするという方法は、感染症に対しては素晴らしい効果を発揮しました。結核や腸チフスであれば、その原因となる病原菌を殺してしまう抗生物質を投与することで、患者さんは、それまでの医学からみれば奇跡と思えるような回復ぶりを見せたのです。
ガンも同じような発想で対処しようとしました。しかし、ガンは感染症と違って、原因が特定できません。つまり、攻撃するターゲットがはっきりしないのです。そこで、原因ではなく結果を追いかけ、ガン細胞を取り去る治療が進められてきました。しかし、結果をいくらいじっても、原因が残っているわけですから、一時的には良くなったように思えても、再発して病院に戻ってくる患者さんが後を絶たないのです。
私の専門である食道ガンでいえば、ガンで食道が塞がってしまい食べ物が入っていかないときには、手術でガンを切除してしまうのが急を要する治療でしょう。しかし、それは単なる緊急避難でしかなくて、根本的な治療にはなっていません。やがては再発してガン細胞が大きくなり、今度は手術でも抗ガン剤でも放射線でも歯が立たなくなってしまいます。ここで西洋医学の治療は終了です。手の施しようがありません。医師の口から出るのは、「もうこれ以上の治療法はありません。あとは緩和ケアへ移っていただいたほうがいいですね。」という寂しい決まり文句です。
そして、「余命〇ヵ月」という冷たい宣告をして、患者さんとのかかわりは終わりになってしまいます。そうした態度をよしとするのか、他にもっと方法はないかと患者さんや家族の方と一緒に可能性を探すのか、医療者としてのあり方が問われているのが、ガン治療の現状だと思います。
ただ、もっと何か方法はないかと探すといっても、西洋医学という枠の中で見回してみても、なかなか見つかるものではありません。西洋医学の枠を超えたところを探してみる必要があります。そこには、医学部で習ったり、上司や先輩から教えられたりした方法ではない、西洋医学にどっぷりとつかっている医師には違和感を感じるような方法がたくさんあります。そうした方法を、医学的ではないと切り捨ててしまうか、それとも可能性を感じ取るか。医師にとっても、患者さんにとっても大きな別れ道となります。』
柔軟な治療デザイン
●大多数の医師は代替療法について否定的である。これは多くの場合、代替療法に興味がなく、知識もないためである。
●感染症や救急医療は西洋医学の得意とするところだが、慢性疾患に対しては一時的に症状を抑えることはできても、根本的な治癒をもたらすことは難しい。
●ガン治療では、あるところまでは三大療法で可能だが、ここからは代替療法でやっていこうという発想がほしい。あるいは、併用することもできるはずである。