IgG4関連疾患(IgG4-RKD)

私事ですが、尿蛋白が(±)でした。今まで尿検査で問題になったことがなかったため、少し気になり原因を考えてみました。禁煙して約14年、飲酒は月1、2回、生活習慣も安定しており気になるようなストレスもありません。塩分コントールも1日6gを目指しています。

このことから、加齢による経年劣化ではないかと思われますが、それ以外で思い当たる理由は、唯一、コロナワクチン接種による可能性です。ちなみにワクチン接種の回数は3回です。

コロナワクチンの問題は「日本整形内科学研究会」さまのウェビナーで色々勉強させて頂いており、特に免疫グロブリンの中のIgG4の数値が顕著に上昇する可能性があるという話は知っていました。また、自分自身でも数冊の本を読んでおり、ワクチン接種の問題については、“免疫学者の告発1”というブログをアップしています。

※ご参考

IgG4はIgGのひとつです。これは免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類)の仲間ですが、免疫グロブリンとは、異物が体内に入った時に排除するように働く「抗体」の機能を持つタンパク質のことです。

IgG4の働きについては十分に解明されていないようです。ネットで調べたところ以下のような説明を見つけました。

倉敷中央病院

・『IgG4の反応は、ケミカルメディエーターの放出には結びつかず、むしろIgEと抗原を競合することによりメディエーターの放出を抑える遮断抗体として作用する可能性が示唆されている。』

②九州大学学術情報リポジトリ:“Study on stabilization of human IgG4 antibodies”  PDF95

・『IgG4 は、アレルゲンに対して誘導され、長期間で反復の抗原感作により IgG4の血中の割合は高くなる。免疫療法において、症状の軽減は IgG4 の誘導と相関があり、免疫反応を抑制し、免疫寛容に関与しているという報告がある [Aalberse etal., 2009; Vidarsson et al., 2014]。』

まず、“コロナワクチン”と“IgG4”をキーワードにして検索したところ、2つのサイトを見つけました。

1つめは“東京都医学総合研究所”さまの記事で、タイトルは『IgG4関連疾患の危険因子としてのCOVID-19 mRNAワクチン』です。

画像出展:「東京都医学総合研究所

2つめは“ゆうき内科クリニック”さまの記事で、タイトルは『コロナ感染歴がないとmRNAワクチン接種後にはIgG4抗体が著明に増える』です。論文も紹介されています。

画像出展:「ゆうき内科クリニック

この2つのサイトから、あらためてコロナワクチン接種によりIgG4の数値が顕著に上がる可能性があるという懸念を再確認できました。

続いて“腎臓”、“コロナワクチン”、“IgG4関連腎臓病”をキーワードにして検索したところ、1つは「一般社団法人日本腎臓学会」さまの記事がヒットしました。これには少し驚きました。というのは、世間的にはコロナワクチン接種の問題を指摘するニュースや記事はあまり公にはなっていないのではないかと想像していたためです。アンケートの内容は「ネフローゼ症候群」に関するものなので、まさに蛋白尿は重要なマーカーです。 

タイトルは『「COVID-19ワクチン接種とネフローゼ症候群新規発症・再発の関連性に関する調査研究」アンケート調査結果のご報告』です。

もう1つは「国立循環器病研究センター」さまの中の腎臓・高血圧内科のページです。「さらに詳しく IgG4関連腎臓病」とあり、次のようなことが書かれています。

画像出展:「国立循環器病研究センター

『IgG4関連疾患に伴い発症する腎障害です。尿細管間質にIgG4陽性の形質細胞が著明に浸潤し、特徴的な線維化を起こします。比較的高齢者に多く、ステロイド剤が著効することが多いです。』 

また、本も見つけました。2014年3月発行のため決して新しい本ではないのですが、基礎的なことであれば十分だろうと思い買ってみることにしました。

編集:斉藤喬雄、西 慎一

発行:2014年3月

出版:南江堂

目次

Ⅰ.IgG4関連腎臓病とは何か

1. IgG4関連疾患と腎臓病の研究の流れ

1)1型自己免疫疾患性膵炎の立場から

2)Mikulicz病の立場から

3)IgG4関連腎臓病の立場から

4)国際的な研究の流れと日本の立場

2.IgG4関連腎臓病診療指針

3.IgG4関連疾患包括診断基準と腎臓病

Ⅱ.IgG4関連腎臓病の診断と治療

1.臨床病態

2.病因と発症機序

3.画像所見

4.血液検査所見(免疫所見を含む)

5.尿所見・腎機能

6.病理所見

1)尿細管間質所見

2)糸球体所見

3)腎盂・尿管病変

4)免疫組織学的所見

7.治療と予後

Ⅲ.IgG4関連腎臓病に関連する他臓器病変

Overview-IgG4関連腎臓病と他臓器病変

1.頭頸部病変(眼窩、唾液腺、下垂体、中枢神経、甲状腺)

2.胸部病変(肺、胸膜、胸部大動脈、冠動脈、乳腺)

3.服部病変①(肝胆膵)

4.腹部病変②(後腹膜、腹部大動脈、前立腺)

5.リンパ節病変と悪性リンパ腫

Ⅳ.IgG4関連腎臓病と鑑別すべき疾患

1.全身性エリテマトーデス(尿細管間質病変を中心に)

2.シェーグレン症候群

3.Castleman病とidiopathic plasmacytic lymphadenopathy with polyclonal hyperimmunoglobulinemia(IPL)

4.血管炎症候群(ANCA関連血管炎)

5.サルコイドーシス

Ⅴ.症例に学ぶIgG4関連腎臓病

Overview-IgG4関連腎臓病の症例

1.典型的な症例

2.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)[Churg-Strauss症候群]との鑑別例

3.尿細管間質性腎炎を伴うループス腎炎V型とIgG4関連腎臓病の双方が考えられた症例

4.後腹膜線維症による腎後性腎不全を合併したIgG4関連腎臓病の一例

5.腎癌切除後にIgG4関連腎臓病と診断された症例

Ⅰ.IgG4関連腎臓病とは何か

・IgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)は新しい概念の疾患である。日本の研究者が中心的な役割を果たしてきた疾患であり、2011年のボストン国際シンポジウムで国際的コンセンサスが刻まれた。

・IgG4-RDは様々な臓器に病変を起こすが、腎臓も例外ではなくIgG4関連腎臓病(IgG4-related kidney disease:IgG4-RKD)と呼ばれている。

・免疫グロブリンの主体的存在であるIgGのサブクラスが解析されるようになり、そのひとつであるIgG4の血中における増加と、IgG4陽性形質細胞の組織への浸潤を特徴とする、IgG4関連疾患(IgG4-RD)が注目されるようになった。

IgG4関連腎臓病の病変は特異的な尿細管間質性腎炎が主体であるが、膜性腎症などの糸球体障害や、腎盂・尿管の肥厚および腫瘤など、いわゆる泌尿器科的病変を併発する例もあり、極めて多彩である。

・2009年には「IgG4関連腎臓病ワーキンググループ」が日本腎臓学会に作られ、2011年にはその活動の一端として、世界に先駆けて「IgG4関連腎臓病診療指針」が英文と和文で発表された。

1.IgG4関連疾患と腎臓病の研究の流れ

1)1型自己免疫疾患性膵炎の立場から

・IgG4関連疾患はIgG4関連腎臓病を含め、ほぼ全身諸臓器の病変を包括しているが、当初は、自己免疫性膵炎(AIP)の膵外病変として認識されてきた。

3)IgG4関連腎臓病の立場から

・IgG4関連腎臓病の主体はTIN(尿細管間質性腎炎)だが、膜性腎症や紫斑病性腎症など様々な糸球体障害を併発している。

2.IgG4関連腎臓病診療指針

・診断基準の作成にあたって、2004年~2011年にIgG4-RKDと診断された41例のIgG4-RKDを解析したところ、平均年齢は64歳、男性73%と中高年の男性が多かった。尿蛋白は1+以上が50%、血尿も1+が33%、血清Cr値が1.0以上の症例は59%に認められ、検尿異常や腎機能低下が発見の糸口となることが明らかとなった。

血液検査では高IgG血症を90%に、低補体血症を54%、高IgE血症を79%に認めたので、これらの血液異常を伴った慢性腎臓病についてはIgG4-RKDを疑う必要がある。

・画像所見では腎実質のくさび状もしくは類円形の多発性造影不良域が代表的所見である。画像所見の中で特に重要なのは癌との鑑別である。

3.IgG4関連疾患包括診断基準と腎臓病

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

Ⅱ.IgG4関連腎臓病の診断と治療

1.臨床病態

IgG4-RKDは、自覚症状は乏しいが、糸球体病変では高度の蛋白尿に伴い、浮腫を認めることがある。腎外病変としては、唾液腺、涙腺、リンパ節病変の合併は比較的多いが患者自身が訴えることは少ないため、問診や触診が重要である。まれに皮膚病変(紫斑を含む)、関節炎をきたす例もある。

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

・IgG4-RKDはIgG4-RDの中でも腎外病変の傾向が顕著である。

・41症例においては、IgG4-RKDの60%は腎病変と腎外病変が同じ時期、40%は1型AIP(自己免疫性膵炎)や唾液腺病変などの腎外病変が先行した後、腎病変が出現していた。

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

2.病因と発症機序

・IgG4-RKDの主体は尿細管周囲の間質への細胞浸潤と特異な線維化であるが、IgG4関連尿細管間質性腎炎の存在が広く認識されるにつれて、様々な糸球体病変が共存する多くの症例報告がなされてきた。

4.血液検査所見(免疫所見を含む)

・IgG4-RKDの腎障害は、基本的にTIN(尿細管間質性腎炎)であり、その他、腎盂壁肥厚という泌尿器科的疾患が含まれる。

IgG4-RKDは概して進行は遅く、ほとんどは慢性腎炎症候群に該当する。

IgG4-RKDのステロイド薬治療による反応性は一般的に良好で、膠原病や血管炎などによるTIN(尿細管間質性腎炎)より回復は見られることが多い。

慢性腎臓病ステージ4(eGFR15~30)あるいは5(eGFR15未満)まで腎機能が進行した症例でも、ステロイド薬治療により腎機能が回復することもある。しかしながら、ステロイド薬治療を減量あるいは中止すると悪化する場合もあることから、腎機能検査は長期的に実施すべきである。 

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

確かに上記の青字のことが書かれています。

画像出展:「医療法人桂水会 岡病院

右端の2つがステージ4ステージ5です。いずれも「透析・移植について考える」段階となっています。

つまり、IgG4-RKDによる腎機能低下の場合は、かなり悪化していても改善が期待できるということです。

・血清クレアチニン値が正常で、腎機能に低下が見られない症例もあった。

・血清IgG4は221㎎/dLから最高4,630㎎/dL、半数が1,000㎎/dLを超えていた。

IgG4-RKDの診断と鑑別に必要な検査項目は以下の通りである。特にIgEを含む免疫グロブリンと補体の測定は必須である。IgG4に関しては135㎎/dLを超えていることがポイントである。なお、IgG4以外のサブクラス(G1、G2、G3)も全体的に上昇していることが多い。

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

・IgG4-RKDと類似している疾患は以下の通りである。

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

・IgG4の検査は2010年より保険適用となった。また、IgG4-RD以外にIgG4が上昇する病態としては、アレルギー性疾患、天疱瘡、膜性腎症に加え、蜂に刺されることにより上昇することも報告されている。

5.尿所見・腎機能

IgG4-RKDの診断においては一般検尿、腎機能低下が基本であるが、陰性例も少なくないので尿細管障害マーカー異常や画像所見異常の確認も必要である。軽度腎機能障害の判定マーカーとして有用なシスタチンCなどを利用することが勧められる。特に小柄で筋肉量の少ない高齢者ではシスタチンCは有用である。

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

7.治療と予後

・IgG4-RKD 43例について長期間の臨床経過を検討した(観察期間3~189ヵ月、平均44ヵ月)、40例がステロイド薬治療を受け(初期PSL量は20~60㎎/日)、39例において1ヵ月後には腎機能、腎画像異常と低補体は改善し、IgG4値は低下していた。

・ステロイド薬治療後1年以上経過観察された症例は34例あり、そのほとんどは少量ステロイド薬治療(PSL5㎎/日程度)を継続していたが、治療開始前eGFR≧60mLのA群(14例)では最終観察時eGFRは治療前と差を認めず、治療開始前eGFR<60mL/のB群(20例)では治療開始後1ヵ月eGFRは有意に改善し、その後最終観察時もほぼ同じレベルで推移した。

IgG4-RKDでみられる腎機能低下の回復の度合いはステロイド治療薬1ヵ月でほぼ決定され、回復した腎機能はステロイド治療薬少量維持療法下でその後比較的長期間保持されていることが明らかになった。一方、CT画像では最終観察時A群で22%、B群で60%に腎移植が出現していた。このことはIgG4-RKDはステロイド治療薬が奏功するが、ステロイド治療によっても回復しないことが、特に腎障害が進行した症例で多く残ることを示している。

感想

IgG4関連腎臓病のことは何とも言えない状況ですが、3、4カ月に1回、血液検査と尿検査をしてるので次回の検査ではIgGとIgE、可能であれば補体やシスタチンCについても検査対象にして頂けないか、かかりつけの先生にご相談しようと思っています。

余談

今回、驚きの発見もありました。それは、慢性腎臓病ステージ4(eGFR15~30)あるいは5(eGFR15未満)まで腎機能が進行した症例でも回復することがあるという以下の記載です。

画像出展:「IgG4関連腎臓病のすべて」

もちろん、本件は原因がIgG4関連腎臓病(IgG4-RKD)であり、治療はステロイド薬治療ということではありますが、それでもステージ4や5まで悪化した腎機能の回復は注目に値します。

以前、“脈診・腹診・クレアチニン”でご紹介しているのですが、この患者さまと、もうお一人の計お二人ではありますが、いずれも3点台のクレアチニン値が1点台まで改善した症例がありました。

IgG4関連腎臓病の患者さまではないため関係はないはずですが、慢性腎臓病の患者さまでも劇的な改善があるということは一つの可能性だと思います。

ご参考:IgG4関連疾患(IgG4-RD)

画像出展:「KOMPAS(慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト)

IgG4の影響は腎臓だけではありません!

概要

IgG4関連疾患とは、血液中の免疫グロブリンG(IgG)という抗体成分のうちIgG4という成分が上昇することと、全身の臓器にIgG4を作る形質細胞という細胞などが浸潤して腫れてくることを特徴とした疾患です。

症状

形質細胞などの細胞が塊を作って、全身の臓器を押しつぶすことで、様々な症状が出現します(図 参照)。

追記:私自身の血液検査結果(2024年6月3日)

気になっていた血液検査を行いましたが、特にワクチン接種による腎臓への悪影響はなさそうです。

1.IgG4:75.8 (11-121)⇒正常

2.IgE:22.2(173以下)⇒正常

3.シスタチンC:091(063-0.95)⇒正常(やや高め)

※クレアチニンという検査項目で異常を指摘された時に、より正確な腎機能を評価するために調査する。シスタチンCはクレアチニンとは異なり筋肉量などの影響を受けにくい。

4.血清補体価:44.0(25.0-48.0)⇒正常(腎臓は低値が問題)

※補体は主に肝臓で産生される急性期相反応物質であり、感染症をはじめとした多くの炎症性疾患で産生が亢進し高値を示す。また腎疾患などでは低値を示す