レーザー光に興味をもった理由は3つあります。1つは昨年(2023年)、左眼に網膜剥離の兆候が出ているとのことで、その場でレーザーによる治療を受けたことです。2つ目は光量子の波と粒子の性質を証明した1961年に行われた実際の実験(19世紀のトーマス・ヤングの実験は思考実験でした)にレーザーが利用されていたことです。そして、3つ目は“脳卒中”というブログの中でご紹介しているのですが、友人の鍼灸師の先生から「レーザー(レーザーポインター)」を使った施術方法を教えてもらったことがあったためです。
購入した本は『レーザー技術入門講座 光の基礎知識とレーザー光の原理から応用技術まで』という高度な内容だったため、興味がある部分だけを取り上げました。
著者:谷腰欣司
発行:2007年7月
出版:(株)電波新聞社
ブログは自分自身の勉強のためということもあり、見て頂くほどの内容ではありません。
レーザーについて勉強されたい方は、以下にご紹介させて頂いた2つのサイトがお勧めです。
こちらは「ケイエルブイ(株)」さまの“KLV大学 レーザーコース”の一部です。
こちらは「まどか(株)」さまのサイトです。
目次
第1章 光とは何か
1.1 光とは何だろう
1.2 太陽は7色の光を含んでいる
1.3 光の回折現象
1.4 光の反射と音の反射
1.5 太陽エネルギーとスペクトル分析
1.6 光の速さは電波と同じ
1.7 電磁波と音波どこが違うか
1.8 光はなぜ明るく感じるのか
1.9 放電による光の発生メカニズム
1.10 波長が短いほど光のエネルギーは大きい
1.11 原子と量子力学
1.12 マックスウェルの電磁方程式と光の関係
1.13 光の反射と屈折
1.13.1 光の反射
1.13.2 光の屈折
1.13.3 光の速さと屈折率
1.14 フォトダイオードとは
1.14.1 フォトダイオードの物性的構造による分類
1.15 発光ダイオードとは
第2章 レーザー光とは
2.1 レーザー光とは
2.2 レーザー光は目に見えるか
2.3 レーザーの安全基準
2.4 ルビーレーザーは、なぜピンク色か
2.5 レーザー光は、なぜレーザーと呼ばれているのか
2.6 レーザー光を発振する
2.6.1 原子のエネルギー状態
2.6.2 励起のしくみ
2.6.3 誘導放出のしくみ
2.6.4 光増幅のしくみ
2.6.5 反転分布とは
2.6.6 レーザー媒質はどのようなものが良いか
2.7 レーザー光の特徴
2.7.1 レーザー光と自然光の違い
2.7.2 レーザー光は指向性が鋭い
2.7.3 指向性を数字で表すと
2.7.4 可干渉性(コヒーレント)とは何か
2.7.5 干渉縞とは何か
2.7.6 レーザー光は超高温を作り出すことができる
2.8 レーザー光は鏡で反射する
2.9 レーザー光を目に照射してはいけない
第3章 レーザー光の種類
3.1 レーザー光を波長や媒質で分類すると
3.2 固体レーザー
3.2.1 ルビーレーザー
3.2.2 YAG(ヤグ)レーザー
3.2.3 Qスイッチレーザー
3.3 気体レーザー
3.3.1 ヘリウムネオン(He-Ne)レーザー
3.3.2 エキシマレーザー
3.3.3 炭酸ガスレーザー
3.4 色素レーザー(液体レーザー)
3.5 自由電子レーザー
3.6 X線レーザー
3.7 半導体レーザー
3.7.1 発光ダイオードのしくみ
3.7.2 半導体レーザーの原理
3.7.3 半導体レーザーの特性
第4章 レーザー光の応用技術
4.1 身近なレーザーの応用技術
4.1.1 レーザー光による通信技術
4.1.2 レーザー光で高速大容量通信
4.1.3 電波通信と光ファイバー通信の違い
4.1.4 CDの記録、再生にレーザー光が使われている
4.1.5 青色レーザーを使うと
4.1.6 バーコードリーダー
4.1.7 レーザープリンター
4.1.8 ホログラフィー
4.2 レーザー光による計測
4.2.1 レーザー光で月までの距離を測る
4.2.2 レーザー光による温度センサー
4.2.3 レーザー光を用いた干渉測定器
4.2.4 ライダーとは
4.2.5 レーザージャイロとは
4.2.6 レーザーセオドライト
4.3 レーザー加工
4.3.1 レーザー光で板金を切断する
4.3.2 レーザー光でダイヤモンドに穴を開ける
4.4 レーザー医療
4.4.1 レーザー光による手術
4.4.2 レーザー光による網膜剝離の治療
4.4.3 レーザー光による美容
第5章 レーザー光発明の歴史
5.1 レーザー光発明における7人の侍
5.2 光の誘導放射と光増幅
5.3 メーザーとレーザーの発明
5.4 レーザー光の発振
5.5 レーザーの名付け親
5.6 レーザー光とノーベル賞
第2章 レーザー光とは
2.1 レーザー光とは
●レーザー光が発明されたのは1960年であった。それにより、レーザー光による光ファイバー通信、ミクロンオーダーの微細加工技術、表皮組織および体内の手術、また、軍事関係では命中精度の高いレーザー誘導爆弾などがある。これらはこれまでは不可能とされた未知の領域であった。
●レーザー光は電界と磁界が直交した、一種の波動であり電磁波の一種である。また、同じレーザー光でも赤外線レーザー、可視光レーザー、紫外線レーザーなど波長帯域が違えば、その性質や特性も異なるため使い方も異なってくる。
●レーザープリンターやCDプレーヤーなどの情報機器で使うのは低出力レーザーであり、レーザーポインターに至っては人間にダメージを与えるようなことはない。しかし、このような低出力レーザー光でも、人間に目にとっては非常に危険である。特に眼球内の網膜剥離、焼き付き現象が現れ、一時的もしくは、恒久的に視力障害を引き起こすこともある。
画像出展:「レーザー技術入門講座」
2.2 レーザー光は目に見えるか
●レーザー光は自然光と違い、発振源から遠く離れてもビーム状にエネルギーが集中するため思わぬ災害をもたらすこともある。損傷は高エネルギーによるものである。
●レーザー光は反射する物体がなければ肉眼で直接感知することはできない。また、人間の目には見えない赤外線レーザーや紫外線レーザーなどは人体に照射されてもある程度のパワーがなければ肌で感じることはできない。
画像出展:「レーザー技術入門講座」
2.3 レーザーの安全基準
●レーザー光は極めて狭い範囲に高密度のエネルギーを集中させることができるので、パワー次第では非常に危険である。被害を防止するには使用目的ごとに被曝量(露光量)を知る必要がある。
●IEC60825-1(国際電気標準会議)では安全基準の最大許容露光量(MPE:Maximum Permissible Exposure)を設定している。この数値は、レーザー光によって人体に障害が発生する確率が50%である放射レベルをレーザー傷害のデータから求め、これに安全係数の0.1を掛けた値である。
●日本ではIEC60825-1に準拠したJIS規格、JISC6802-1:2005「レーザー製品の放射安全基準」では、レーザー光の安全度をグループ分けし、各グループに対して許容被曝放出限界(AEL:Accessible Emission Limit)を規定している。
2.5 レーザー光は、なぜレーザーと呼ばれているのか
●自然光は太陽光や焚火の光と同様に、蛍光灯や白熱電球など文明が生み出した電気エネルギーによる光も含まれる。
●自然光は距離が離れるにしたがって広範囲に拡散する。これは物理的には光の振動面とその面内での振幅や位相、振動数などがあらゆる方向に、ばらばらに分布している光源ということになる。一方、レーザー光は波長と位相が揃った強い指向性を有する高エネルギー光である。このような光は自然界には存在せず、人工光とされている。
●レーザー光の誕生は1960年7月だが、光ファイバー通信、精密測定、レーザー医療、レーザー加工などに加え、CD-ROMやDVDがある。さらに特殊な分野では遺伝子の切断や組換え、病原菌の選択的攻撃にまで応用されている。
●レーザー(LASAR)は、光の増幅(Light Amplification)、誘導放出(Stimulated Emission)、放射(Radiation)の頭文字を取ったものである。
2.9 レーザー光を目に照射してはいけない
●40Wの白熱電球は一般に毎秒、約4兆億個の光量子を放出するが、光が四方八方に分散されるため、光源から50cm離れた網膜上の結像の大きさはおよそ200μm(直径)、網膜上の吸収光輝度は1X10-⁴W/cm²である。
●1Wのレーザー光はビーム状となり眼球内にすべて入射される。結像の大きさはおよそ20μmになり、吸収光輝度は白熱電球光の約10億倍(1×10⁵W/cm²)であり、非常に強力なエネルギーが網膜に集中する。
画像出展:「レーザー技術入門講座」
第3章 レーザー光の種類
3.1 レーザー光を波長や媒質で分類すると
●1960年にメイマンによって発明されたレーザーは人工ルビーを使った固体レーザーであった。それから半世紀を超え、多くのレーザー光が発明された。
画像出展:「レーザー技術入門講座」
レーザー光の波長と種類をまとめたもの。三角形の高さは振動数、底辺の長さは波長である。
画像出展:「レーザー技術入門講座」
レーザー光の媒質を相変化でまとめたもの。自由電子レーザーを欄外にまとめたのは特性が異なるためである。
3.2 固体レーザー
●メイマンが発明したルビーレーザーは固体レーザーである。これはガラス(非晶質)や結晶などの母材に活性原子(分子)を均一に分散したものをレーザー媒質としたものである。
●固体レーザーの励起法[励起とは原子や分子などの物質を高エネルギー状態にすること。励起されることで物質はエネルギーを放出して低エネルギー状態に戻ろうとするが、その際に発する光がレーザーの基礎になる]には、一般に光励起法[外部から光を放出して物質を励起する方法]が使われ、その励起光源としてフラッシュランプやアークランプ、レーザーダイオードなどの強力な光源が使われている。
3.2.1 ルビーレーザー
画像出展:「レーザー技術入門講座」
『図はルビーレーザー発振器のイメージイラストです。ここでは棒状に加工した人造ルビーの結晶体に励起用キセノンランプを螺旋状に巻き付け、さらに両サイドに反射鏡を配置しています。
動作を簡単に説明すると、まず第1に励起用フラッシュランプで強力なパルス光を発光させます。次にパルス光が発射されると、その閃光により人造ルビー内の原子(3価のクロムイオン)が励起します。
この励起状態の原子は非常に不安定で、すぐに元の状態に戻ってしまいます。このとき物性のエネルギーバランスを保つため光が放出されますが、この光は波長や位相が不揃いで、まだレーザー光ではありません。
次に、ここまで励起状態にある原子に次々と自然放出光を照射すると、これが刺激となって反転分布を起し誘導放出モードに移行するのです。しかしこれだけではエネルギーレベルが低すぎてレーザー光として実用的なパワーはありません。そこで、この光を左右の反射鏡を使い実用レベルのレーザー光(発振波長694nm)として成長(光増幅)させるのです。』
3.3 気体レーザー
●気体レーザー(ガスレーザー)は気体の活性原子(分子)またはこれを含む混合気体(ガス状)をレーザー媒質としたものである。励起法としては放電(プラズマ)による励起や電子ビームによるものがある。
●主な種類はHe-Ne(ヘリウムネオン)レーザー、炭酸ガスレーザー、Ar(アルゴン)イオンレーザーなどがある。また少し変わったところでは、銅蒸気(Cu)レーザー、エキシマレーザーなどもある。
3.4 色素レーザー(液体レーザー)
●液体レーザーは1970年頃まで注目されていたが、その後台頭したガラスレーザーやYAGレーザーの発展によって影を潜めた。そのため液体レーザーといえば現在は色素レーザーことを表している。
●色素レーザーはエチルアルコールなどの液体に繊維や食品の着色に使われている染料を溶かし、この活性分子を分散させたものをレーザー媒質としたものである。なお、励起法はフラッシュランプによる光励起が一般的に使われている。
●色素レーザーは波長調整が容易でピーク出力も大きく、エネルギー効率にも優れていたが、半導体レーザーやその他のレーザーの進歩発展によって利用の場は奪われた。
3.5 自由電子レーザー
●自由電子レーザー(FEL)は一般のレーザーと異なり、光速に近い速度をもつ電子ビームからの放射を利用したもので、反転分布を必要としない特殊なレーザー光である。
3.6 X線レーザー
●X線レーザーは他のレーザーに比べ、非常に難しい課題を抱えている。それにもかかわらず、X線レーザーが注目されているのはその可能性である。X線は医療分野で活躍しているが、X線レーザー光によるホログラフィーが可能になれば人体を立体的に観察できるようになり、X線CTスキャナーに比べ飛躍的に精度を上げることができる。その他、物質の構造化解析も容易になる。
3.7 半導体レーザー
●半導体レーザーは日本のメーカー、大学、研究機関が大きく貢献している。化合物の種類は増え、パワーもアップしてきた。固体レーザーの励起源としても利用されている。
●主な用途は、光ファイバー通信、CD、DVDの記録、再生、レーザー加工、レーザー医療などがある。
第4章 レーザー光の応用技術
4.1 身近なレーザーの応用技術
●光ファイバー通信は電線の代わりに光ファイバーを使い、その中に近赤外線レーザー光を伝送して通信を行う方式である。光ファイバーとは石英ガラスやプラスチックなどの非常に光透過度の高い素材から作られた細い繊維状の光伝送ケーブルのことである。
4.1.1 レーザー光による通信技術
●電線方式の約3000倍の情報量を送ることができる。ただし、光ファイバー内の伝送信号は単なる光情報なので、端末で電気信号に変換しデータや音声に戻す必要がある。これには電源がなければならない。
4.4 レーザー医療
4.4.1 レーザー光による手術
●医療分野でのレーザー光の利用は皮膚病の治療であった。その後、レーザーメス、レーザー凝固、結石の粉砕、ガン細胞の破壊など、多岐に渡っている。
画像出展:「レーザー技術入門講座」
4.4.2 レーザー光による網膜剝離の治療
●『網膜剝離はレーザー光によって手術を手際よく行うことができます。ここで網膜とは、眼球壁の最内層にあって、多数の視細胞が並び、ここで受けた光の刺激を大脳皮質に伝えて視覚として感じ取る部分、つまり画像認識装置(センサー)の一種です。
網膜剝離とは網膜色素上皮が網膜視細胞層から剥がれ、その隙間に硝子体が貯まる病気で、これが進行すると目が見えなくなります。この治療は、昔はメスによる外科手術が行われていましたが、現在ではレーザー光による手術が行われています。図はその概要を表したものです。ここではアルゴンイオンレーザーが使われています。
ところで、波長400nm近辺の青色レーザー光は、眼科のような透明物資、特に水晶体、硝子体にほとんど吸収されないため、途中の生体組織に影響を与えることなく、眼底の網膜に効率よく照射することができるのです。これによって集光部分の剥離網膜が加熱され、たん白質が凝固作用を起こし、剥離された網膜が眼底に癒着するのです。なお、レーザー光の種類としてはアルゴンイオンレーザーのほか半導体レーザーも使われています。』
画像出展:「レーザー技術入門講座」
ご参考:高照度光療法について
レーザーポインターを使った治療は何かないかと思い調べてみると、パーキンソン病患者さまの歩行訓練に有効であるということが分かりました。動画もありましたのでご紹介させて頂きます。ただし、この歩行訓練への利用は懐中電灯でも同様の働きがあるので、レーザー光に依存するものではありません。“【パーキンソン病】レーザーポインターによる歩行支援” 3分程の動画もあります。
次に見つけたのが「高照度光療法」でした。こちらもパーキンソン病患者さまが対象で、同じく光源はレーザー光ではありませんでした。睡眠障害を改善するのが目的で、睡眠を司っているメラトニンの血中濃度を高めることによって睡眠障害の改善を促します。
サイトの中で特に詳しく説明されていたのは文部科学省のサイトにあった『光資源を活用し、創造する科学技術の振興―持続可能な「光の世紀」に向けて―』で、グラフも出ていました。
その他、“日本を元気にする光療法の総合サイト”には高照度光療法についての説明が出ていました。
レーザー光はレベルにもよりますが、覗くように直接レーザー光を見ることは厳禁で、安全とされているレベル2以下であったとしても直視すべきではありません。これは一言でいえば光のエネルギーが分散せず1点に集約されるので、エネルギー量が爆発的に多くなるためです。医療用レーザーメスが外科手術や美容整形で用いられるのは、その桁違いのエネルギーの強さによるものだということが理解できました。