リーナス・トーバルズ

GPU(Graphics Processing Unit)の開発・製造において、生成AIのリーディングカンパニーであるNvidiaによるArm買収断念の報道は2022年1月でした。現在、ソフトバンク配下のArm社は英国ケンブリッジに本社を置く、RISC(縮小命令セットコンピューター)チップの開発に特化した企業で、携帯電話やスマートフォンのほとんどの製品の中に入っています。

このArmの対抗馬として期待されているのがオープンソースのRISC-Ⅴです。このRISC-Ⅴ ISA(命令セットアーキテクチャー)を利用することにより自由にCPUを開発することができます。しかも、設計したCPUをオープンソースにする必要はなく、商用ライセンスのCPUコアを作ることができます。

※オープンソース:ソフトウェアを構成しているプログラム「ソースコード」を無償で一般公開すること。

NVIDIA’s secure RISC-V processor”(Youtube[英語])

『Security is key to many of NVIDIA’s markets. Example applications are protecting video and gaming IP, keeping private data on shared servers from leaking, and safety of self-driving cars. NVRISCV is at the core of NVIDIA’s security architecture. It is a RISC-V core with closely coupled co-processors that incorporate many security features to protect against a variety of attacks. Some features are architectural and we are proposing those as RISC-V specifications; others are implementation specific. We believe that RISC-V is ideally positioned to standardize around a set of security specs and best practices, helped by transparency and joint development by the community, inherent to its open source nature.』

以下は上記の英文をDeepLを使って翻訳した文章です。

『セキュリティは、エヌビディアの多くの市場にとって重要です。アプリケーションの例としては、ビデオやゲームIPの保護、共有サーバー上のプライベートデータの漏洩防止、自動運転車の安全性などがあります。NVRISCVは、NVIDIAのセキュリティ・アーキテクチャの中核です。これは、密接に結合したコプロセッサを持つRISC-Vコアで、さまざまな攻撃から保護するために多くのセキュリティ機能を組み込んでいます。いくつかの機能はアーキテクチャ上のものであり、私たちはそれらをRISC-V仕様として提案しています。私たちは、RISC-Vが、そのオープン・ソースという性質に固有の透明性とコミュニティによる共同開発によって、一連のセキュリティ仕様とベスト・プラクティスを標準化するのに理想的な位置にあると信じています。

日本HPで営業していたのは約12年前なのですが、オープンソースと言われればソフトウェアの話しという認識しかなかったため、CPUというハードウェアの世界にもオープンソースが入り込んでいるという事実に大変驚きました。

オープンソースと言われれば、私の場合Linuxです。IBM社がLinuxを核にサーバーの長期計画を発表したのは2001年でした。HP社はUNIX(HP-UX)が主力であったという経緯もあり、Linuxに対しては消極的でした。SEの評価はLinuxは軽く優れたOS(オペレーティングシステム)というものであり、製品品質に大きな懸念はなかったのですが、メーカーサポートという面で営業としてはなかなか難しい製品となっていました。

このような懐かしい昔話を思い出していて、ふと気になったのが、「今、Linux、特に開発者のリーナス・トーバルズはどうなっているのだろう?」という疑問です。

それがぼくには楽しかったから』、これがリーナス・トーバルズの本の題名です。なお、原題は『JUST FOR FUN』です。

著者:リーナス・トーバルズ

訳者:風見潤

初版発行:2001年5月

出版:(株)小学館プロダクション

画像出展:「Wikipedia

Linus Benedict Torvalds

『フィンランド、ヘルシンキ出身のアメリカ合衆国のプログラマ。Linuxカーネルを開発し、1991年に一般に公開した。その後も、公式のLinuxカーネルの最終的な調整役を務める。』

目次

謝辞

序章 人生の意味Ⅰ

第1部 オタクの人生

第1章 眼鏡と鼻と

第2章 初めてのプログラミング

第3章 フィンランドの冬に

第4章 トーバルズ家誕生秘話

第5章 高校時代

第6章 大学と軍隊

第7章 フィンランド再び

第2部 オペレーティング・システムの誕生

第1章 シンクレアQL来る

第2章 人生を変えた本

第3章 ユニックスを学ぶ

第4章 三台目のコンピュータ

第5章 プログラミングの美しさ

第6章 ターミナル・エミュレーション

第7章 誕生

第8章 アップロード

第9章 著作権の問題

第10章 ミニックス対リナックス

第11章 ウィンドウとネットワーク

第12章 恋人!

第3部 舞踏会の王

第1章 初めてのアメリカ

第2章 商標登録

第3章 就職

第4章 シリコンバレーにようこそ

第5章 リナックスの成功

第6章 不協和音

第7章 株式公開

第8章 コムデックス

第9章 リナックス革命は終わったか?

第10章 押しつけるな!

第11章 舞踏会

第12章 サポート

第13章 知的財産権

第14章 コントロール戦略の終焉

第15章 楽しみが待っている

第16章 なぜオープンソースこそ筋が通っているのか

第17章 名声と富

終章  人生の意味Ⅱ

ブログはリーナス・トーバルズがオープンソースに対し、どう思っているのかに注目しました。

第3部 舞踏会の王

第16章 なぜオープンソースこそ筋が通っているのか

●『IBMがパーソナル・コンピュータを開発したとき、何気なく、そのテクノロジーをオープンにしたので、誰でも複製を作れるようになったんだ。そのたった一つの行動は、PC革命に拍車をかけただけじゃなく、やがて情報革命、インターネット革命、ニュー・エコノミ―(なんと呼ぶにせよ、いま世界中で大きな変化を引きおこしているもの)を順に呼び寄せる結果となった。

これは、オープンソース精神から生み出される限りない利益というものを、もっともよく表している。IBM PCはオープンソースのモデルとして開発されたわけじゃないけど、オープンにされたことで、個人や企業が互換機を作り、改良し、売ることができるようになり、オープンソース・テクノロジーの好例となったんだ。

オープンソース・モデルの一番純粋な形では、誰でもプロジェクトの開発や市場性開発などに参加できる。リナックスは明らかにそのもっとも成功した例だ。ヘルシンキのぼくの散らかった寝室から始まり、成長して、有史以来最大の共同プロジェクトにまでなった。その始まりには、コンピュータのソースコードは自由に共有すべきだと信じるソフトウェア開発者に共通の理念があった。その裏付けとなったのが、この運動の強力な武器としての一般公有使用許諾書(GPL―旧来的な著作権に反対するもの)だった。リナックスは発展し、最高のテクノロジーを開発し続ける一つのモデルになった。そして、リナックスがウェブ・サーバー用OSとして次々と採用されていることや、株式公開での予想外の好評でもわかると思うけど、リナックスはさらに発展して、広く市場に受け入れられるようになったのだ。』

●『オープンソースという手法を人々が初めて耳にしたとき、それはばかげたものに聞こえたようだ。だから、オープンソースの長所が理解されるのに何年もかかった。

ぼくらは理念があって、オープンソースを売り込んだわけじゃない。オープンソースこそ最高のテクノロジーを開発し、改良する最良の方法だとわかってきたので、その理念が世間の注目を集めだしたのだ。

いまや、その理念は市場で評価を得つつあり、その評価のおかげでオープンソースがますます受け入れられるようになってきている。さまざまな付加価値サービスをおこなう会社が作られるようになり、それらの会社はテクノロジーを普及させる手段としてオープンソースを利用することができた。お金が転がりこむと、世間は信じるようになるもんだ。

オープンソースというジグゾーパズルの中で、一番理解されていないピースの一つは、どうしてこんなに大勢のプログラマーが、まったくの無報酬で働こうとするのかってことだろう。

順序として、その原動力について述べておこう。多少なりとも生存が保証された社会では、お金は最大の原動力にはならない。人は情熱に駆り立てられたとき、最高の仕事をするものだ。楽しんでいるときも同じだ。これは、ソフトウェア技術者だけじゃなく、劇作家、企業家にも当てはまる真実だ。オープンソース・モデルは、人々に情熱的な生活を送るチャンスを与える。楽しむチャンスも、さらに、たまたま同じ会社で机を並べている数人の仲間とではなく、世界で最も優秀なプログラマーたちと仕事をするチャンスも、オープンソースの開発者たちは、仲間からいい評価を得ようと懸命に努力する。こうしたことは大きな原動力になるに違いない。

●『オープンソース現象を理解する一つの方法がある―それは、何世紀も昔(現代の話しではないけれど)、科学が宗教界からどのように見られていたかを考えることだ。科学は、最初のうち、何か危険で、破壊的で、反対体制的なものと見なされた―ソフト会社は時々、オープンソースをそんなふうに見ている。科学は宗教体制を攻撃しようとして生まれたわけじゃなかった。それと同じように、オープンソースだってソフトウェア体制を破壊するために考えだされたわけじゃない。オープンソースは、最高のテクノロジーを生み出すために、そしてそのテクノロジーがどこに行くかを見守るために存在するんだ。』

●『オープンソースは理にかなっている。人々は、言動の自由について、屁理屈をこねたりはしない。自由こそ、人々が生命をかけて守ってきたものなのだから。自由はいつでも、生命をかけて守るべきものだ。しかし、はなっから自由を選択するのもまた簡単なことじゃない。オープンソースについても同じことがいえる。オープンにするかどうか、決定を下さなくてはならない。最初からオープンにするという立場に立ってみると危なっかしくてしようがないが、実際にやってみると、その立場はずっと安定したものになっている。』

画像出展:「レバテックキャリア」

Linuxとは?

Linuxの将来性は?

Linuxが利用されている分野

Linuxの特徴、メリット etc

画像出展:「Wikipedia」

Androidは、Googleが開発した汎用モバイルオペレーティングシステムである。Linuxカーネルやオープンソースソフトウェアがベースで、主にスマートフォンやタブレットなどのタッチスクリーンモバイルデバイス向けにデザインされている。』

※カーネル:OSの中核。基本機能を担う部分。

画像出展:「ZDNET」

今やLinux Foundationは、Linux以外にも1000以上のオープンソースプロジェクトを抱えている。しかし、昔からこうだったわけではない。2007年に設立された頃のLinux Foundationは、ほぼ完全にLinuxのためだけの団体だった。当時からずっとLinux Foundationのエグゼクティブディレクターを務めているJim Zemlin氏は、先日ウェブで公開されたDell Technologiesのデベロッパーコミュニティ担当マネージャーBarton George氏との対談の中で、同財団は創設に関わった人々の想像をはるかに超えて拡大してきたと語った。