脳の治癒力1

神経可塑性」と「脳の可塑性」はほぼ同じ意味で使われています。検索したところ数多くのサイトがありましたが、いいなと思った3つのサイトをご紹介させて頂きます。

こちらは“カウンセリングしらいし”さまのサイトで、タイトルは、“「神経可塑性(シナプス可塑性)」【重要】”となっています。要点と概要(全体観)がつかめます。

 

画像出展:「神経可塑性」

『神経の損傷が行われた場合もそれを代償するように脳や神経における可塑的な変化があります。「傷ついた神経回路は修復されない」「神経は新しく新生されない」と信じられていましたが、最新の研究では、神経回路は修復され、新しい神経細胞も生まれることがわかってきました。

こちらは“マインドフルネスプロジェクト”さまのサイトで、タイトルは、“マインドフルネスと脳科学 〜神経可塑性〜”となっています。マインドフルネスとは、「心を“今”に向ける方法」のことだそうです。(NHKより)

こちらは、“STROKE LAB”さまのサイトで、Neuro plasticity 神経可塑性 知識を臨床に応用する”はPDF33枚の資料です。大変詳しく説明されています。ロードに時間がかかるかもしれません。

神経可塑性の話しは、概して現代医学の本流からは少し外れた亜流という印象が強く、代替医療の分野に近いのかもしれません。私が神経可塑性について肯定的なのは二つの理由からです。一つは『限界を超える子どもたち』という本を拝読させて頂き、その中で“アナットバニエルメソッド”という神経可塑性のアプローチを知ったことです。そしてもう一つは、私自身が経験した障害をもつ小児へのマッサージの効果と、“アナットバニエルメソッド”が重なったためです。

衝撃を受けた“アナットバニエルメソッド”ですが、動画を見つけました。

以下が今回勉強させて頂いた本です。

著者:ノーマン・ドイジ

訳者:高橋 洋

初版発行:2016年7月

出版:(株)紀伊國屋書店

 損傷を受けた脳は、いかに自己回復するのか

東洋経済オンラインに本書の紹介が出ていました。

本書は500ページを超えるものですが、ブログは個人的興味から4つ、「パーキンソン病」、「神経可塑的治療」、「レーザー光治療」、「PoNS(ポータブル神経調整刺激器)」を取り上げています。

目次

はじめに

第1章 ある医師の負傷と治癒

マイケル・モスコヴィッツは慢性疼痛を脱学習できることを発見する

●痛みのレッスン―痛みを殺すスイッチ

●痛みに関するもう一つのレッスン―慢性疼痛は可塑性の狂乱である

●神経可塑的な闘争

●最初の患者

●MIRROR

●視覚化はいかに痛みを減退させるのか

●それはプラシーボ効果なのか?

●ただのプラシーボ効果ではない理由

第2章 歩くことでパーキンソン病の症状をつっぱねた男

いかに運動は変性障害をかわし、認知症を遅らせるのに役立つか

●アフリカからの手紙

●運動と神経変性疾患

●ロンドン大空襲下でのディケンズ風少年時代

●病気と診断

●ヘビと鳥のあいだを歩く

●意識的コントロール

●意識を動員するテクニックの科学的根拠

●他の患者を援助する

●論争

●パーキンソン病とパーキンソン症状

●ペッパーの神経科医を訪ねる

●歩かないと……

●歩行の科学的基盤

●「不使用の学習」

●パーキンソニズムの両面的な性質

●認知症を遅らせる

●喜望峰

第3章 神経可塑的治癒の四段階

いかに、そしてなぜ有効に作用するのか

●「不使用の学習」の蔓延

●ノイズに満ちた脳と脳の律動異常

●ニューロン集成体の迅速な形成

●治癒の諸段階

第4章 光で脳を再配線する

光を用いて休眠中の神経回路を目覚めさせる

●小さな世界

●光は私たちが気づかぬうちに身体に入ってくる

●講演と偶然の出会い

●ガブリエルの話

●カーンのクリニックを訪問する

●レーザーの物理学

●レーザーはいかに生体組織を癒すのか

●二度目のミーティング

●レーザーは脳を癒す

●レーザーをその他の脳障害の適用する

第5章 モーシェ・フェルデンクライス 物理学者、黒帯柔道家、そして療法

動作に対する気づきによって重度の脳の障害を癒す

●二個のスーツケースを携えた脱出行

●フェルデンクライス・メソッドのルーツ

●中心原理

●脳の探偵―脳卒中を解明する

●子どもを支援する

●脳の一部を欠いた少女

●言葉を生む

●最後まで制約されない人生

第6章 視覚障害者が見ることを学ぶ

フェルデンクライス・メソッド、仏教徒の治療法、その他の神経可塑的メソッド

●一縷の望み

●最初の試み

●治療にフェルデンクライス・メソッドを加える

●青みがかった黒の視覚化はいかに視覚系をリラックスさせるのか

●視力が戻る―手と目の結びつき

●ウィーンへの移住

第7章 脳をリセットする装置

神経調節を導いて症状を逆転させる

Ⅰ.壁に立てかけた杖

●奇妙な装置

●なぜ舌は脳への王道なのか

●ユーリ、ミッチ、カートに会う

●PONS開発の歴史

●死んだ組織、ノイズに満ちた組織、そして装置についての新たな見解

Ⅱ.三つの事例

●パーキンソン病

●脳卒中

●多発性硬化症

Ⅲ.ひび割れた陶芸家たち

●ジェリ・レイク

●キャシーに会う

●ぶり返し

Ⅳ.わずかな支援で脳はいかにバランスをとるのか

●脳幹の組織を失った女性

●ユーリの理論

●四種類の可塑的な変化

●新たなフロンティア

第8章 音の橋

音楽の脳の特別な結びつき

Ⅰ.識学障害を抱えた少年の運命の逆転

●アンカルカ修道院での偶然の出会い

●若き日のアルフレッド・トマティス

●トマティスの第一法則

●トマティスの第二法則と第三法則

●聴覚ズーム

●口の片側で話す

●耳の刺激によって脳を刺激する

Ⅱ.母の声

●階段の途中で生まれる

Ⅲ.ボトムアップで脳を再構築する

●自閉症、注意欠如、感覚処理障害

●自閉症からの回復

●炎症を起こした脳のニューロンは結合しない

●リスニングセラピーはいかにして自閉症の治療に役立つのか

●学習障害、社会参加、抑うつ

●注意欠如障害と注意欠如・多動性障害

●サウンドセラピーの作用に関する新説

●障害として認められていない障害―感覚処理障害

Ⅳ.修道院の謎を解く

●音楽はいかにして精神や活力を高揚させるのか

●なぜモーツアルトなのか?

補足説明資料1 外傷性脳損傷やその他の脳障害への全般的アプローチ

補足説明資料2 外傷性脳損傷を治療するためのマトリックス・リパターニング

補足説明資料3 ADD、ADHD、てんかん、不安障害、外傷性脳損傷の治療のためのニューロフィードバック

謝辞

訳者あとがき

はじめに

・ニューロプラスティシャン(神経可塑性療法家)は不変の脳という見方を否定する。

・2000年、E.カンデル博士、A.カールソン博士、P.グリーン博士は神経系におけるシグナル伝達機構を解明し、ノーベル医学生理学賞を受賞した。

シグナル伝達機構:外界より与えられた様々な情報(シグナル)に対して、情報処理機構(シグナル伝達機構)を用いて、細胞の増殖や分化、神経細胞のシナプス可塑性(神経に特定の刺激が加えられ続けると、その情報を学習し、その後の働き方が変化すること)など与えられた情報に基づいて適応するしくみ。

・E.カンデルは学習には学習には神経細胞を変える遺伝子の「スイッチオン」にする効果があることを示した。

脳の治癒力は細胞同士が常に電気的に連絡を取り合って、随時新たな神経結合を形成したり作り直したりする複雑さと精巧さによるものである。

脳への介入は光、音、振動、電気、運動などのエネルギーを利用する。これらのエネルギーは感覚器官や身体を経由して脳自体が持つ治癒力を喚起する。感覚器官は脳が受け取ることができる電気シグナルに変換する。

・世界には次に紹介するような様々な事例がある。

『音を聴かせて自閉症を、あるいは後頭部に振動を与えて注意欠如障害を完治する、舌を電気的に刺激する装置を用いて多発性硬化症の症状を逆転させたり脳卒中を治癒したりする、首のうしろに光を当てて脳損傷を治療する、鼻に光を通して安眠を確保する、〔レーザーファイバーを使い〕静脈に光を通して生命を救う、脳の大きな部分を欠いたまま生まれたために認知能力の問題を抱え、ほとんど麻痺状態にすらあった少女を、穏やかでゆっくりとした手の動きで身体をさすることによって治療する、などのケースである。』

休眠中となっている脳の神経回路を刺激する方法の多くは、心的な活動や気づきとエネルギーの利用を結びつけるものである。これらは西洋医学では新奇なものだが、東洋医学では珍しいものではない。

・『私が訪問したほぼすべてのニューロプラスティシャンは、伝統的な中国医学、古代仏教徒の瞑想法や視覚化、武術(太極拳、柔道)、ヨガ、エネルギー療法などの東洋の実践的な健康法から得た洞察を西洋の神経科学と結びつけることで、神経可塑性を治療に適用する方法への理解を深めていた。』

・『西洋医学は、何千年にもわたり無数の人々によって実践されてきた東洋医学とその主張を、長いあいだ無視してきた。心によって脳を変えるという原理は、受け入れるにはあまりにも信じがたく思えたのだ。本書は、神経可塑性の概念が、これまで疎遠であった二つの偉大な医学的伝統を橋渡しするものであることを明らかにする。』

脳は身体に君臨する帝王ではなく、身体も脳に信号を送って脳に影響を及ぼす。つまり脳と身体は双方向のコミュニケーションを行っている。

神経可塑的なアプローチは、心、身体、脳のすべてを動員しながら、患者自身が積極的に治療に関わることを要請する。また、医師は患者の欠陥に焦点を絞るだけでなく、休眠中の健康な脳領域の発見、および回復の支援に役立つ残存能力の発見を目標とする。なお、脳を治療する新たな方法は、個人差が大きくすべての患者に有効であるとは言えない。