プラセボというと、例えば、睡眠の問題を抱えた人に、「これは良く効くといわれている新薬だよ」といって、胃腸薬(ビオフェルミンのような)を渡して飲んでもらったところ、翌朝、「あの薬が効いたようだ、ぐっすり眠れたよ」などというものを連想します。プラセボ薬とはいわゆる偽薬に相当するものです。
一方、鍼の世界でも、「それってプラセボでは?」という話になることもあり、以前から“プラセボ”というものには関心をもっていました。特に“プラセボ”と“自然治癒力”の境目はなかなか難しい部分だなと感じていました。
今回の本は、ある探し物をしていて偶然に見つけたものですが、特にタイトルの副題、“プラセボから見えてくる治療の本質”に興味を持ちました。
著者:中野重行
発行:2020年3月
出版:ライフサイエンス出版
内容は専門性の高いものですが、最初の「プロローグ」には背景や概要などが書かれていますので、最初にそちらの一部をご紹介させて頂きます。
プロローグ
『私は、心身医学を専攻し、臨床薬理学を専門領域とする医師として、この半世紀余りを生きてきました。心身医学では、心と身体の関連性を研究するとともに、臨床場面では、心と身体の両面から患者へのアプローチをします。心身症患者は、身体的な治療だけでは症状が改善しにくいことも多く、心の面からの働きかけが重要になってくるのです。一方、臨床薬理学の柱の一つである臨床薬効評価の場では、薬の有効性を評価する際に、対照群としてプラセボ投与群を設定することが、しばしば必要になってきます。
したがって、若いころから、プラセボという物質の存在とプラセボ反応(または、プラセボ効果)という現象には、深い関心を抱いてきました。そのため、プラセボ反応に関与する要因を明らかにするために、短期間の自覚症状・生理指標・行動面の変化を指標にした実験心理学的研究や臨床精神薬理学的研究を、いくつか行った経験があります。また、より長期間にわたる臨床での薬物治療効果を評価する場では、幅広い疾患と治療薬の臨床試験で、プラセボ投与群のデータを集積してきました。
いろいろな医学会で、プラセボをめぐる諸問題をテーマにしたシンポジウムやワークショップを担当する機会を、何度も経験しました。プラセボに関するテーマで、特別講演や教育講演を行う機会もありました。また、医学生や薬学性を対象にした教育の場や、臨床研究コーディネーター(Clinical Research Coordinator: CRC)を対象にした研修会の場では、プラセボ関連の話題はカリキュラム上重要な位置を占めています。
~中略~
プラセボ反応は、面白おかしく語られたり、場合によっては、邪魔もの扱いされたりすることさえあります。プラセボ反応が、なかなか科学の土俵に上がらなかったのは、プラセボ反応が多くの要因により規定されているためであり、生命現象としての「自然治癒力」と密接に関連しているからだと考えられます。
しかし、プラセボ投与群と薬物投与群の改善率を、構造的に理解すると見えてくるものがあります。それは「治療医学の本質」です。「治療は、生体の有する自然治癒力を前提に成り立っている」ということです。プラセボ反応として私たちが捉えているものは、生体の有する「自然治癒力」を介して働いている現象であり、その意味では生命現象そのものの特徴だということもできると思います。
プラセボ投与時の改善率(P[Placebo]+N[Natural fluctuation])を高めることに目を向けると、医療の効率化に資することができるように思います。医療費の節減にも貢献できると思います。また、健康な方にとっては、健康の維持や、健康寿命を延ばすことにも役立つように思うのです。』
なお、ブログは黒字部分、5章、10章、11章の一部です。
目次
1章 プラセボ投与時に見られる改善率
1.治療を含む臨床試験でプラセボ投与群の改善率はどの程度認められるのか:二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果から
2.プラセボに関する用語と定義
2章 プラセボ投与時に見られる有害事象または副作用
1.「有害事象」「副作用」「薬物有害反応」という用語について
2.プラセボ投与時に見られる有害事象または副作用
3.「プラセボ効果」と「プラセボ反応」という用語について
4.「ノセボ効果」というとらえ方の問題点
3章 プラセボ効果(反応)の構造的理解
1.Post hoc fallacy(前後即因果の誤謬)
2.「プラセボ効果」と「プラセボ反応」という表現について
3.時間の経過に伴う病状や症状の変化
4.「プラセボ効果(反応)」の構造的理解
5.薬効の構造的理解
4章 医薬品の臨床試験におけるプラセボの誕生とプラセボ対照群の必要性
1.臨床評価のためには比較試験が何にもまして重要である
2.臨床評価のための比較試験でランダム化(無作為化)が必要な理由
3.臨床薬効評価法におけるプラセボの誕生:臨床評価のための比較試験で二重盲検法が必要な理由
4.薬物の有効性と安全性を科学的に評価する際に、なぜプラセボ対照群が必要になるのか
5章 プラセボ効果(反応)に関与する要因
1.生体の有する「自然治癒力」
2.暗示効果または期待効果
3.条件づけ
4.患者と医療者の間の信頼関係
5.患者の治療意欲
6.患者への適切な説明(服薬指導)
6章 対照群にプラセボを使用する際の基本的な考え方
1.対照群にプラセボを使用する際に考慮する必要のある要因
2.臨床試験で有用性の実証された標準薬の有無と被験者の被るリスクの程度による分類
7章 プラセボ対照群を使用する臨床試験を実施する際の工夫と留意点
1.対照群に使用するプラセボとして必要となる条件
2.試験デザイン上の工夫と留意点
3.プラセボを使用することにより被験者が被る可能性のあるリスクを臨床試験チーム全体で背負う姿勢の重要性
4.被験者へのプラセボの説明のしかた
8章 プラセボ対照二重盲検比較試験における盲検性の水準とその確保
1.被検薬の特性以外の要因から薬剤の盲検性に問題が生じたケース
2.被験薬そのものの特性から薬剤の盲検性に問題が生じる可能性
3.被検薬の薬理作用から薬剤の盲検性が守れなくなる可能性
9章 プラセボの使用に関する倫理的ジレンマとそれを乗り越える試み
1.「プラセボ対照ランダム化比較試験」以前の時代におけるプラセボの使用について
2.「プラセボ対照ランダム化比較試験」の時代になってからのプラセボの使用について
3.世界医師会のヘルシンキ宣言にみられるプラセボの使用に関する考え方
4.プラセボジレンマとその解決策として考えられること
10章 プラセボ反応(効果)の治療における意義
1.薬物投与時にみられる病態・症状の改善についての理解のしかた
2.プラセボ投与群にみられる改善は治癒のプロセスの本質を理解するうえで重要
3.暗示効果
4.自然治癒力(自己回復力)について
11章 薬物治療の効果を高めるためのストラテジー(1)
1.薬物治療の効果に関する構造的理解
2.プラセボ投与時の改善率(N+P)を高めることにより患者が受けることのできる恩恵
3.薬物治療の効果(D+N+P)を高めるために
12章 薬物治療の効果を高めるためのストラテジー(2)
1.薬物治療効果を構造的に理解することにより見えてくるもの
2.プラセボ関連誤謬(錯覚):Placebo related fallacy
3.ライフスタイルの改善により「自然治癒力」を高める
補遣 プラセボの説明のしかた
1.「ロールプレイ法により学ぶ治験のインフォームドコンセント」と題する実習
2.プラセボについて説明することの難しさ
3.プラセボに関する医療者の理解度
4.被験者の治験内容の理解度:とくに「プラセボ」について
5.インフォームドコンセントについて
6.プラセボに関する説明を患者に対してする際の留意点
7.ランダム化比較試験(RCT)、とくにプラセボを患者に説明する場合には、コミュニケーションのエッセンスが詰まっている
5章 プラセボ効果(反応)に関与する要因
・下の図の中で、薬物以外の非薬物要因として挙げられているものは、プラセボ効果(反応)に影響を与える要因である。
画像出展:「プラセボ学」
・「プラセボ効果(反応)」には生体が有する自然治癒傾向と自然変動がベースに存在している。
画像出展:「プラセボ学」
1.生体の有する「自然治癒力」
・外傷や感冒の治癒過程を考えても、人間には「自然治癒力」が備わっていることは明白である。高度な外科手術で生体にメスを入れ縫合後、傷口が治っていくのは「自然治癒力」のおかげである。
・『私たちは、現代医学の目覚ましい技術的進歩に目が奪われるあまり、本来生体に備わっている「自然治癒力」の存在を軽視しがちなのではないでしょうか。いま一度、医療の原点に立ち戻って、「自然治癒力」を重視した医療のあり方を考える必要があるように思います。』
・自然治癒力を高めるために、古くから「養生法」が工夫されてきた。「養生法」の基本は生活習慣の調整であり、食事、運動、心の持ち方が3本柱である。
2.暗示効果または期待効果
・『「いわゆるプラセボ効果」(図2のN+P)から「真のプラセボ効果」(図2のP)だけを抽出することは、臨床の現場ではまず不可能に近いほど難しいことです。しかし、実験心理学的研究の場では、実験条件のコントロールがある程度可能になるので、急性反応としての「真のプラセボ効果」を明らかにすることができます。』
・内科領域の不安・緊張に伴う自律神経症状を主体とする心身症に関し、治験からプラセボ投与後の改善率が高いことは明らかになっている。
画像出展:「プラセボ学」
この図を見ると、期待度が中等度の場合に最も高く(53%)、軽度では少し低下し(36%)、強度では顕著に低く出現率だった(8%)。つまり、適度な期待度という心持が最もプラセボ効果が高いということである。
・より強力かつ有効な薬物が開発されると、その領域におけるプラセボ効果の出現率が高まる傾向がある。この現象も、患者だけでなく医療者側にも、期待度や効くはずだという信念が生じるための影響だと考えられる。
・治験において被検薬の副作用が、対照群であるプラセボ投与群でも同様に高い頻度で出現するという現象も、同様のメカニズムが働いているものと考えられる。
・プラセボ効果はプラセボの価格によっても異なり、価格が高い方が鎮痛効果は出やすく、価格が安いと鎮痛効果が出にくいという報告がある。これは高い価格により生じる「効くという暗示効果」あるいは、「効いてほしいという期待効果」を介して生じている現象だと考えられる。また、健康食品や化粧品についても、同じような現象が見られる。
4.患者と医療者の間の信頼関係
・心身症を対象にしたプラセボ投与群の改善率の成績は、「医師-患者間の信頼関係」においても明確な傾向が見られる。
・“良好”と“困難”では5倍の差が見られる。なお、プラセボではなく抗不安薬(ジアゼパム)の投与群でも同様な改善傾向が確認されており、あらためて医師-患者間の信頼関係の重要性が示唆されている。
画像出展:「プラセボ学」
5.患者の治療意欲
・「治療意欲」の程度での解析でも、2倍以上の差が出ており治療意欲を適度に高めるように支援することは大切である。
画像出展:「プラセボ学」
6.患者への適切な説明(服薬指導)
・患者にプラセボまたは薬物を投与するとき、その効果について適切な説明をすることは、薬効およびプラセボ効果を高めることが研究により明らかになっている。
画像出展:「プラセボ学」
・『冒頭に紹介した図1をもとにして、本稿で記述してきた要因を加味したうえで、プラセボ効果(反応)に関与する要因を整理しなおす、図7のような図ができあがります。
画像出展:「プラセボ学」
プラセボ効果(反応)やその根底にある「自然治癒力」がサイエンスの土俵に乗り難いのは、あまりにも多要因によって影響を受けている現象であるからだと思われます。サイエンスの重視している再現性を保証することが難しいのです。つまり、プラセボ効果(反応)に関与することが難しいことと、それらの要因の数量化が難しいためと考えられます。
しかし、プラセボ効果(反応)はサイエンスで取り扱うことが難しい現象ではありますが、その研究は薬物治療を含む治療医学の領域においても、また臨床薬効評価の領域においても、依然として重要なテーマであり続けています。』
10章 プラセボ反応(効果)の治療における意義
1.薬物投与時にみられる病態・症状の改善についての理解のしかた
・被検薬投与群とプラセボ投与群を比較試験(RCT:ランダム化比較試験)すると、それぞれに効果が見られる。つまり、被検薬投与群で得られた効果(改善率)が被検薬だけの効果のように取られることが多いが、実態はプラセボ効果が含まれており、被検薬単独の効果ではないという事実を知ることが重要である。
画像出展:「プラセボ学」
・『例として、内科領域における心身症、片頭痛、糖尿病(NIDDM)という三つの病態を取り上げてみます(図1)。いずれも国内の治験で得られた成績です。
心身症は心理社会的要因が密接に関与する心身相関の認められる病態です。不安症状や軽いうつ症状を伴うことの多い心身症では、その病態の特徴から容易に想像できるように、一般にプラセボ反応(効果)が比較的高く認められます。内科領域で心身症の診療をしている全国の医師が参加した治験の成績では、プラセボ投与群の改善率は42%、抗不安薬(ここでは標準薬として使用したジアゼパム)投与群の改善率は58%で、その差は16%でした。つまり、プラセボでも42%が改善し、代表的な抗不安薬であるジアゼパムは、改善率を16%上げているにすぎません。しかし、ジアゼパムの改善率58%という数字だけを見た人たち(製薬会社の職員だけでなく、患者や医師も含めて)は、ジアゼパムにより58%の患者が改善すると考えがちなのです。
片頭痛は拍動性の血管性頭痛です。遺伝的要因も関与しますが、ストレスによっても頭痛が誘発されることがあります。また、ストレスによって頭痛の症状が増悪されることもある病態です。頭痛は自覚症状としての訴えです。したがって、プラセボ反応(効果)がかなり高いことが予測されますが、プラセボ投与群の改善率は28%で、被検薬である片頭痛治療薬の改善率は52%でした。その差は24%になります。ここでも、片頭痛治療薬によって52%の患者の片頭痛症状が改善すると思いがちですが、実際には24%の患者が片頭痛治療薬の恩恵を受けて改善していることになります。
心身症や片頭痛は、心理的要因が病態や症状に関連していることが一般に認められており、自覚症状の改善が臨床評価に際して重視されます。したがって、プラセボ反応(効果)が出やすいと考えられています。
一方、糖尿病(NIDDM)は、血液中のHbA1cの値という客観的指標で臨床評価をする病態なので、一般にプラセボ反応(効果)はほとんど出ないと考えられているように思います。しかし、プラセボ投与群でも13%の改善率が認められ、被検薬となった糖尿病治療薬の改善率は43%で、その差は30%になります。つまり、糖尿病治療薬そのものの効果は30%で、プラセボ投与群の改善率の13%は、定期的に診察と血液検査を受けることに伴う食事や運動などのライフスタイルの改善によるものと考えられます。
ここで例として挙げた各病態での改善率の数値は、治療の対象となった患者層、投与量、投与期間、評価指標、評価期間などの諸要因により決まる値です。したがって、数値そのものはさほど重要ではなくて、薬物投与時にみられる病態・症状の改善をプラセボ投与群の改善と比較して、どのように考えたらよいかを理解するための単なるツールと思ってください。
薬物投与時にみられる病態・症状の改善率をどのように理解するかは、構造的に理解するのがよいと思います。
つまり、観察されたプラセボ投与時の改善を、N(自然変動:自然治癒傾向)とP(真のプラセボ効果または真のプラセボ反応)の組み合わせとして理解し、観察された薬物投与時の改善についても同様にして、NとPとD(薬物に起因する効果:薬効)の組み合わせとして理解するという方法です。』
画像出展:「プラセボ学」
11章 薬物治療の効果を高めるためのストラテジー(1)
3.薬物治療の効果(D+N+P)を高めるために
・薬物治療の臨床効果は、病態の適切な診断(評価)と適正な医薬品の選択、投与量、投与方法の選択が非常に重要であるが、薬物の治療効果は、薬物以外の多くの要因(非薬物要因)の影響を受けている。これがプラセボ投与群の改善率(N+Pの部分)に反映される。
・非薬物要因としては疾患に伴う諸要因(疾患の種類、重症度、疾患の時期など)と、疾患以外の諸要因(医療者側の要因、患者の年齢、治療環境、患者と医療者の信頼関係など)に分けられる。
画像出展:「プラセボ学」
1) 真の薬物効果(D)を高める
・薬物の効果や薬理作用の強さは以下の3つの要因で決まる。
① 薬物の種類(薬物の有する薬理作用の特性)
② 作用部位における薬物濃度
③ 薬物に対する生体の感受性
2) 自然治癒力(N)とプラセボ反応(P)を高める(N+P)
・医聖とされるヒポクラテス(紀元前460年頃~370年頃)は、健康はからだと心を含む、内的な力と外的な力との調和的バランス状態の表現であるとし、自然治癒力を重視した。
・「自然が病を癒す。人体は生まれつき備わっている反射と同様に、自動的に働く。自然はこの本質的なふるまいを、訓練も教育もなしに行うものだからである。」とヒポクラテスは言っている。
・中世のフランス人外科医パレ(1510~1590年)の残した言葉、「我、包帯す。神、癒し賜う。」は現代でも的を射ている。
・一般に、治療は生体の「自然治癒力」を前提として成り立っており、自然治癒力を妨げている要因があれば、それを排除して自然治癒力を促すことが重要である。
・自然治癒過程に配慮しながら、自然の法則にしたがって細かな調節をするのが治療行為である。
・治療行為は「疾患」だけが対象ではなく、「病人」も対象になるので、患者と医療者の信頼関係をベースに展開していく。
・あらゆる病態や症状には、心身相関が認められるので心理的社会要因をも考慮した「養生法」に基づく自然治癒力を高めるための枠組みが重要になってくる。
・『医師の信念と患者の信念、その相互作用によって、プラセボ反応はますます強化されていきます。医師が自分の行う治療法の価値を確信すること、患者もその治療法を信ずること、患者と医師がお互いに信じあうこと。この三つの要素が最適条件で働けば、たとえば非合理的な理論に基づく治療法でも、改善が起こりうるということを、医学の歴史は示してきました。近代医学が誕生するまでの治療医学の歴史は、「プラセボ反応の歴史」であったと言っても過言ではないと思います。』
感想
今まで鍼灸の施術を行ってきて、「鍼灸に好意的な患者さま」、具体的には過去に鍼灸で良い経験をされた患者さま、鍼灸が好きな患者さま(怖い、痛そうなどのネガティブな感情ではなく、心地よいとか体が軽くなるといった感想をもたれる患者さま)は、効果が出やすいと感じていました。
今回、中野先生の『プラセボ学 -プラセボから見えてくる治療の本質』を勉強させて頂き、“信頼”や”期待”が治療効果に大きく関わってくることを、プラセボ研究というサイエンスを通じて理解できたことはとても大きな収穫でした。
一方、大きな反省点として痛感したことがあります。私は、特に慢性腎臓病(CKD)の患者さまに対して、「やってみないと分かりません」と言ってしまうこと多々あります。実際、Cr値(クレアチニン値)については、個人差が大きく明確な傾向も掴めていない状況で、まさにこの通りと言えます。
しかしながら、患者さまの中には検査結果を拝見すると、炎症性をみるCRPや貧血とも関わるヘモグロビン値などに改善傾向が見られることもあります。
もちろん、慢性腎臓病で来院される方の期待は圧倒的に腎機能の改善(Cr値の改善)ではあるのですが、短絡的にCr値だけをクローズアップするのではなく、患者さまの総合的な健康状態の理解に努め、鍼灸の効果について、知識と経験に基づき”適正な期待度”をもって頂けるように心掛けないと、”期待”や”信頼”という重要な要因に紐づく”効果”を失ってしまうと感じました。