こちらは2冊目になりますが、最初に「はじめに」の冒頭部分をご紹介させて頂きます。
『本書、【痛みが全身に広がる病気をとことん治す】は、線維筋痛症をはじめとした、原因不明といわれる「慢性の痛み」の病気をテーマとして、患者の身に巻き起こる痛みや、これらの病気に対する研究、そしてさまざまな治療の方向性、多数の方法までも綿密にリポートするものだ。
こういった痛みの治療については、実は、これまでも危機感が示されてきた。厚生労働省の【慢性の痛み対策について】の中には、次のような指摘もある。
「病態が十分に解明されておらず、診断も困難である。そのために、患者は適切な対応や治療を受けられないだけでなく、病状を周囲の人から理解されないことによる疎外感や精神的苦痛にも苦しんでいることが多い」
「痛みを専門とする診療体制は十分に整備されていない。その背景には、痛みを対象とした診療が成り立つような制度や人材育成、教育体制が確立されておらず、痛みを理解し、痛みに苦しめられている者を社会全体で支えようとする意識が、十分に醸成されていないことが挙げられる」』
こちらは厚生労働省発行の資料です。クリック頂くと厚生労働省のページに移動します。下部にはPDF資料へのリンクもあります。
編者:リーダーズノート編集部
出版:リーダーズノート出版
発行:2014年7月
目次に続いて、ブログでご紹介するのは、【データで見る線維筋痛症】の一部と、最後の[身体の機能を高める]に関する箇所です。「身体の機能を高める」は自己治癒力/自然治癒力に関する内容で、特に栄養・血液・血流の三つに注目されており、鍼灸師の私には非常に興味深いものです。
目次
①痛みとたたかう患者たち -なぜ、こんなに痛いの?
[支えあう患者たち]
・ふつうの私が消えた日
・せめて病名がほしい
・月に電話相談160件
・さまざまな出会いが支えてくれた
・痛みをそらし、つき合っていく
[医師をめざす、患者のたたかい]
・これが……私たちの日常
・もはや身体や神経の損傷では説明できない
・周囲に理解されないことが一番つらい
・薬に頼りすぎる治療は問題
・医師として患者と向き合う
[共有されない痛み]
・妻には絶望しか残っていなかったのか
・厳しい寒冷地の気候もストレスに
・ドアノブも掴めない、食べ物を噛むこともできない
・薬だけで症状を和らげるのは難しい
・裁判所にも、わかってもらえない
・痛みと事故の因果関係が立証しにくい
【データで見る線維筋痛症】
◆発症年齢
◆疾病罹患がトリガーとなった各診療科別要因
◆臨床症状と重傷分類
◆発症から診断までの期間
◆障害者手帳の取得状況
◆臨床領域にみられる合併しやすい代表的疾患
◆リウマチ性疾患との鑑別診断の要点
②現代医療の壁に挑む -研究者たちの挑戦
[線維筋痛症診療ガイドライン]
・診療を避ける医師が多いことが問題
・大切なのは、三つの視点
・圧痛点を診るというスキル
・病気の概念が変わるというデメリット
・医師に病名が認知されてきた
[診断技術への挑戦]
・痛みは、測定できるのか?
・痛みを測定するペインビジョン
・脳SPECT検査
・PET解析
・「抗VGKC複合体抗体」の研究
[検体バンク]
・検体バンク構想
・世界中の研究者が使えるものに
・プロトタイプを分析
[メカニズム]
・カテプシンSと慢性の疼痛
・犯人の足跡、フットプリントを追え
・インターフェロン・ガンマは、強力なアクセル
・Cファイバーの脱落
・神経のどこかで混戦が起こっている
③最新治療を探る -痛み止め、病気を治すために
[薬で痛みを止める]
・専門薬、リリカの登場
・ほかの薬とは、まったく違う
・「すぐにリリカ」は、危険な発想
・急性か慢性かの判断が重要
・ノイロトロピンの活用
・ペインレスキュー
・徹底して、生活の質を上げる
[脳にアプローチする]
・脳に磁気を当てる「TMS治療」
・南国土佐で始まった治療
・先端治療へのチャレンジ
・脳の神経がうまく働いていない
・景色も表情も、見違えて見えた
・患者を支える
[認知行動療法]
・危険な「痛み」ではないことをわかってもらう
・医師と医療スタッフが新たな家族に
・痛みで何もできない状態からの回復
・痛みで眠れない人に、不眠認知行動療法
[歪みを治す]
・咬み合わせ調整で、痛みを除去する
・線維筋痛症と顎関節症の深い関係
・「バランス」という言葉に、もっと慎重になるべき
[身体の機能を高める]
・なぜこの病気は女性に多いのか?
・脳も身体も、実は深刻な栄養不足
・ビタミン、カルシウム、マグネシウムが必要なわけ
・自分の治す力を強めることが本来の医療
・慢性痛にはセルフケアが重要
・機能回復、症状改善するポイントは血流にある
・湯あたりで、脳と身体をリセットする?
・人間に本来備わっている自然治癒力を応用
【データで見る線維筋痛症】
◆発症年齢
画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」
◆発症から診断までの期間
画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」
◆障害者手帳の取得状況
画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」
◆臨床領域にみられる合併しやすい代表的疾患
画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」
以下の図は「線維筋痛症がよくわかる本」にあったものです。線維筋痛症の痛みの凄さが分かります。
[身体の機能を高める]
『おそらくほとんどの病気に有用なのは、身体の機能を高めること=自己治癒力を高めること。食事、睡眠、運動は、その基本だ。線維筋痛症もまた、身体の機能を高めることなしに、いかなる薬も効果を発揮しないに違いない。取材班は身体の機能を高める治療を探ることにした。』
●なぜこの病気は女性に多いのか?
血液が患者を物語る。そして、栄養不足が症状を説明する。
『そう主張するのは、この病気の研究治療を20年以上続けてきた心療内科医の姫野友美医師。テレビ番組、雑誌にたびたび登場する「売れっ子」で、著書も多数。なぜこの疾患は女性患者が多いのか。分子整合栄養医学は線維筋痛症にどのように適用されるのか。東京都五反田の、ひめのともみクリニックに赴いた。白衣に着替えた姫野院長の解説もまた、テレビの健康番組のように歯切れよくわかりやすい。』
線維筋痛症をはじめ、女性に身体症状が出やすい理由。
1.月経、妊娠、出産、閉経など性周期に伴う内的環境の変化。女性ホルモンの変動は同時に自律神経の変動、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどの神経伝達物質の変化をもたらし、免疫にも影響する。
2.男性と比べて筋肉量や循環血液量が少ないことによる血行動態の不良。
3.月経や妊娠、出産によるたんぱく質や鉄分など栄養の喪失が心身に影響を与える。
4.男性よりセロトニンレベルが低く、ノルアドレナリンやカテコールアミンの制御不全を起こしやすい。
5.女性の脳の構造上、感情ストレスが大脳皮質を介し、大脳辺縁系視床下部径路を刺激しやすい。
これらの身体的性質に加えて、女性特有のライフサイクル、社会的役割といった心理的社会的背景がストレスを増大させていると考えられる。
●脳も身体も、実は深刻な栄養不足
『ここ、ひめのともみクリニックでは「分子整合栄養医学」を基本方針とし、心身症の患者に栄養指導の考え方はごくシンプルだ。
「基本的に人間の身体は、すべて食べ物=栄養素という材料によって構成されており、どの栄養素が欠けても身体機能は失調状態に陥ります。不足している栄養素を本来あるべき至適量まで補充してあげれば、自らの自然治癒力は高まり、病気の進行を防ぎ、症状の改善、さらには病気の予防が可能となる。これが分子整合栄養医学の考え方です」』
・初診の患者全員に血液検査およびサプリメントドック[足りていない栄養素を確認し解析する]を行い、体内の代謝の状態、ビタミンやミネラルなどの栄養不足、血糖値の変動、さらに活性酸素の発生、酸化ストレスの進行具合などを明らかにする。
・最も問題視するのは血糖の調節異常である低血糖。
・『「低血糖は痛みが増しますから。線維筋痛症の患者さん、片っぱしから調べてますけど、みんな甘いものが大好き。その理由はセロトニンが少ないからで、セロトニンを分泌させようと、チョコレートや甘いものに手が伸びるんです。ところが、それで一気に血糖値が上昇して、インシュリンが大量に分泌されて逆に低血糖を起こし、ノルアドレナリンを誘発する。それが筋肉や血管を収縮させるからさらに痛むのです」』
・脳は「大食漢」である。わずか5%の重さしかないのに、摂取した栄養の20%は脳で消費されている。常に低血糖の状態にあるならば、脳が正常に機能するために必要なブドウ糖の安定供給ができない状態ということである。いつまでも疲労感が拭えず、元気になれない理由はそこにある。
・線維筋痛症患者に顕著なのが低血圧すなわち血行動態不良で、その原因の一つは鉄とたんぱく質の欠乏が考えられる。
・鉄分は閉経していない女性では、一度の月経で30ミリグラムも体外へと排出されてしまう。
・ピロリ菌は鉄欠乏の主要な原因の一つである。胃の粘膜を萎縮させるために、鉄やたんぱく質の吸収力が悪くなる。しかもピロリ菌の出す毒素を消去する際にビタミンCが消費されるので、活性酸素が消去できない。
・『現代人の深刻な栄養失調。姫野院長は鋭く指摘する。』
・栄養失調は身体の機能を正常化するための栄養素が足りない状態である。ふくよかな人であっても、実態は栄養失調であることは少なくない。
・コンビニの加工食品は圧倒的なミネラル不足で、清涼飲料水やスイーツは24時間好きなだけ手に入る。
・品種改良を重ねた味も形もよい現代の野菜は、昔の品種に比べて栄養素が格段に少ない。ビタミンA含有量は50年前のわずか3分の1である。
●ビタミン、カルシウム、マグネシウムが必要なわけ
・原因も正体も不明で、有力なバイオマーカーがない。ゆえに通常の血液検査ではなかなか異常が見られない。それが線維筋痛症の診断をいっそう難しくしている。
・『姫野院長の見立てでは、線維筋痛症は「活性酸素と炎症」である。あれだけ痛みがあるのに、異変が起きていないはずはない。そう言い切った。「線維筋痛症の異常(炎症)は、普通の血液検査では見えず、高感度CRP検査でないと出てこないんです。これでCRP[炎症時に体内に発生するC反応たんぱく質の血中量]0.05以上の数値が出たら、微小な慢性異常が存在すると判断します。ただ、まったくCRPが上がらない患者さんもいて、バイオマーカーは一つではありません。ほかには、たんぱく分画のアルファ2グロブリンが上昇することや、酸化ストレスで赤血球の膜が壊れて間接ビリルビンが上昇することなどによって判断します。
炎症には活性酸素が関わっていますから、うちでは抗酸化アプローチをかなり行います。たとえば高濃度ビタミンC。これも栄養療法の一環ですね」。』
・高濃度ビタミンC注射に含まれるビタミンCの量は25グラム。ここまで大量に経口服用すると下痢を起こすので、静脈注射でダイレクトに血中に入れる。この治療はビタミンC不足が招く疾患、線維筋痛症や慢性疲労症候群、リウマチなど免疫異常の症状改善、白内障や糖尿病の予防にも有効であるとされる。
・線維筋痛症は筋肉の付着部などのスパズム(攣縮)という説があり、リリカやリボリトールなど、けいれんの原因となる興奮系の神経を抑える薬物を用いると症状が和らぐことが裏づけとなっている。
・筋肉が痙攣を起こす原因はカルシウムとマグネシウム不足で、この二つの栄養素はストレス下に置かれると大量に尿から排出されるという性質がある。さらに、更年期を過ぎた女性はカルシウムの吸収力が衰える。線維筋痛症が40代以降の女性に好発するという傾向と一致する。
●自分の治す力を強めることが本来の医療
・基本、全患者に対して栄養療法を実施するが、痛みの強い患者にはトリガーポイントブロック、神経ブロックなどの対症療法も行う。
・『「線維筋痛症の原因と目される、下行性疼痛抑制系の機能不全では、セロトニンやノルアドレナリンが足りないという話がありますね。これを増やすためにサインバルタやトレドミンなどの抗うつ薬が処方されて、それはそれなりに効くわけです。ところが薬というのは、基本的にリサイクルなんです」』
・西洋の薬は、基本的に酵素を遮断するものである。線維筋痛症治療としても使われる抗うつ薬、SSRIやSNRIも、それぞれセロトニンとノルアドレナリンの再吸吸収を阻害する。
・薬のリサイクルには限度がある。リサイクルし続けると物質は劣化していくので、だんだん薬が効かなくなる。薬の量が増え悪循環となる。
・『「逆に、フレッシュなセロトニンやノルアドレナリンを、自力で体内でどんどん作れたら、薬の利用効率だって上がる。最終的に、自分で必要なぶんだけをまかなえるようになれば、薬の利用効率だって上がる。』
・薬をやめたいが、患者にはやめどきがわからない。「薬を止めたら悪化しました」という患者の声はいくつもあった。
・『「当然ですよ。まだ、自分の中で十分な量を作れていないのだから。だから、うちでは栄養解析のデータで示してあげるんです。ここまで数値がそろってきたね、じゃあそろそろ薬をやめられるかなとか。患者さんにすれば、良くなりそうなめどが立つ。そうなると、自ら治療を提案するようになる。先生、私もっと鉄を増やして飲んでみます、たんぱく質摂るためお肉食べなきゃ、甘いもの控えます、だからお薬減らしていいですか、と。病は医者の言う通りにして治すものではなく、自分の中の治す力、自己治癒力を強めることが本来の医療。そう思いますね」。』
・精神的なストレスによってカルシウムやマグネシウムは足りなくなる。活性酸素が増え、ビタミンCがどんどん消費される。ストレスを緩和するため、セロトニンも大量分泌しなくてはならない。すべては身体を正常で健康な状態に保とうとするゆえの作用である。
・『「身体の代謝の状態を分析してあげて、欠損部分を栄養素と補って治療してあげる。もちろん、鉄をはじめとするミネラルはたんぱく質と結びついて運ばれますから、食事も重要。しっかりたんぱく質、つまりお肉を取ってバランスを整えると、心も身体も見違えるほど元気になります」。』
・痛みや症状に向きあうための心理療法、認知行動療法については、まず痛みを取り、脳に栄養を与えて機能を取り戻したあとの話ではないかと考えている。
・きちんと脳に必要分の栄養を入れてあげて、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンが増えてくると、認知は自然に変わる可能性がある。
画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」
線維筋痛症が書かれたページです。
“健康未来予測ドック”(“サプリメントドック”は進化したようです)