心臓リハビリテーション

NHKの「ためしてがってん」で心臓リハビリテーションを紹介する放送がありました。
番組自体は観ることはできなかったのですが、「心臓リハビリテーション」というキーワードが気になり1冊の本を購入しました。私には新しかった「心臓リハビリテーション」も10年以上前から行われているものだということを知り、ちょっと意外でした。なお、ブログは「歩く、昇る、伸ばす からだ若返り法」という本の内容に基づいて書いています。

著者:木庭新治
「歩く、昇る、伸ばす からだ若返り法」

著者:木庭新治 

出版:角川MG

健康 STOP突然死!強い心臓をめざせSP
ためしてガッテン!

健康 STOP突然死!強い心臓をめざせSP
2017年4月19日(水)午後7時30分

2003年頃までは、心臓手術後は安静にするのが一般的でしたが、安静は極度の体力低下を生み、術後の回復を遅らせることが明らかになりました。そして今日では手術の翌日にはベッドの上でのリハビリが行われています。2012年2月に心臓バイパス手術を受けられた天皇陛下も手術の翌日にリハビリを開始されたそうです。

 

心臓リハビリテーションの効果
心臓リハビリテーションとは「軽い運動」を行うことです。木庭先生の評価では25~30%、死亡リスクを減らすことができるとのことです。
これは、心筋梗塞の患者さんが一般的に服用する、抗血小板薬(血液をサラサラにするタイプの薬)による死亡リスク低減が20%と言われていますので、「心臓リハビリテーション」の方がより優れているということになります。しかも、必要な道具さえそろえてしまえば、特にお金を掛けなくても実行可能です。
そして、心臓病だけでなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病にも効果があります。さらに体力アップ、免疫力アップにより、個々の健康力を高めることが可能です。

 

心臓リハビリテーションの方法
最初は始めることが何よりも大事だと思います。そして、本格参戦となれば木庭先生のガイドラインに従って挑戦頂くのが良いと思います。
期間:まずは、12週間。これは12週続けると血中脂質が改善されるというデータがあるためです。

頻度:休みは2日まで。3日以上空いてしまうと、前に行った効果がなくなってしまいます。
強度:目安1日15分以上。少し汗をかく程度。ハアハアしない。自分のペースで無理をしない。
運動:ウォーキング、スロージョギング、踏み台昇降など。

ステップ(踏み台昇降)
ステップ(踏み台昇降)

雨の日には室内で踏み台昇降を使うという手もあります。このような立派な「踏み台」でなくても良いですが。

画像出展:「歩く、昇る、伸ばす からだ若返り法」 (角川MG)

3METS以上の誠克活動 vs 運動
運動の強さ

 

「運動」ができなくても、「生活活動」で体を動かせば同様の効果が期待できます。

METS(メッツ)とは安静時を1とした時に、活動が何倍のエネルギーを消費するかを示したものです。

老化のカギはミトコンドリア
老化とは突きつめれば、細胞の老化です。十分な解明がされていない細胞の老化ですが、最も有力な説はミトコンドリアが鍵を握っているだろうということです。細胞1億個の中に数百のミトコンドリアがあり、体で使われるエネルギーの元(ATP)を作っています。この役割は極めて重要です。

 

軽い運動がミトコンドリアを増やす
細胞内でエネルギー生産の仕事をしているのはミトコンドリアです。そして作られるエネルギーはATPと呼ばれています。

ミトコンドリアはエネルギー産生工場
ミトコンドリアはエネルギー産生工場

画像出展:「20代の大腸がん闘病記」

ミトコンドリアは生涯稼動し続ける心臓の収縮運動に必要なエネルギーを提供します。
心筋に存在するミトコンドリア

この図は心臓の筋肉、心筋です。外側の基底膜のすぐ内側に多くのミトコンドリア(紫色)が密集して配列しています。これらは生涯稼動し続ける心臓の収縮運動に必要なエネルギーを提供します。

画像出展:「細胞と組織の地図帳」講談社

ここに一つ問題があります。それは、ATPの製造工程で「活性酸素」が作られてしまうことです。
活性酸素とは「活性」という名前の通り、動きやすく反応しやすい酸素で、どんどん動いて周囲にとりつき、それを酸化させてしまいます。酸化とは、例えば鉄だったら「錆びる」こと。食べ物なら「腐る」ことです。そして、これらの悪事のことを「酸化ストレス」と言っています。
例えは良くないと思いますが、「泥棒」を活性酸素とするなら、「空き巣に入って金品を盗む」という悪事が酸化ストレスです。

しかしながら、元気なミトコンドリアは、活性酸素を取締る酵素(SOD)や抗酸化物質(UCP)の支援(中和という作用)により、酸化ストレスに対抗することができます。
ところが、警察官のような役割の酵素や抗酸化物質も加齢により支援パワーが低下するという問題があります。この支援パワーが低下した中で、ミトコンドリアが仕事をすると、活性酸素はこれはチャンスとばかりに、どんどん増え、ついにはミトコンドリア自身も活性酸素の悪事(酸化ストレス)によって、数が減っていきます。これは老化の原因となる事件です。

たばこはミトコンドリアの数を減らします。また、食べすぎ、飲みすぎも消化吸収や栄養素を代謝するために大量のエネルギー(ATP)が必要となり、結果的に大量の活性酸素を発生させます。強い運動も同様に、大量の活性酸素が発生するためミトコンドリアにとっては危険です。
一方、ミトコンドリアを増やすのが軽い運動、有酸素運動です。軽い運動は強い運動と異なり、大量の活性酸素を作り出すことなく、消費エネルギーを増やします。そして、この消費エネルギーは臓器の細胞にたまる異所性脂肪や慢性炎症の原因ともなる内臓脂肪という、深刻な問題につながる悪名高い脂肪を減らします。また、運動により取り込まれた酸素はATPを作る材料になるため、ミトコンドリアのATP生産能力は向上します。
こうして、豊富になったATPにより、今まで15分がいっぱいいっぱいだった人も、20分、25分と運動することが可能になります。この好循環が継続されていくと、ミトコンドリアは更に元気になり、やがてミトコンドリアの数が増えていきます。ミトコンドリアが元気に、活性化していくと、酵素や抗酸化物質の支援パワー(中和という作用)も増大するため、酸化ストレスを恐れる必要はありません。
さらに、運動は体を動かしているときは交感神経が主役ですが、運動を終えたときには必ず副交感神経が働くようになっています。つまり運動をしていると、副交感神経の働きを確実に得られるということになります。ストレス社会で交感神経に片寄りがちな生活習慣を整える意味でも、軽い運動は素晴らしい効果をもたらします。
他にも、善玉(HDL)コレステロールの増加、血圧低下、心拍数の低下、骨密度の上昇などの効果が期待できます。

心筋細胞と心筋細胞のすきまに存在する免疫細胞において、心臓特有の新しい働きを探索するなかで、アンフィレグリンが突然死を予防する働きがあることを発見した。
心臓マクロファージが分泌するアンフィレグリンが心臓突然死を防いでいる

画像出展:「日本医療研究開発機構」

『心臓に存在している免疫細胞に注目して、この細胞が分泌するタンパク質が、心筋細胞どうしの小さな穴を通したつながりに必要であることを世界で初めて発見しました。

※本研究成果は、日本時間2021年3月26日に英国科学誌Nature Communications(オンライン版)に掲載されます。