“氣”とは何だろう10(科学編)

著者:湯浅泰雄

初版発行:1991年1月

出版:日本放送出版協会

目次は“氣とは何だろう9”を参照ください。

Ⅲ 人体外部の「気」のエネルギー場

1 気のエネルギー計測

気力とは何か

気功とは「気のはたらき」や「気の訓練」という意味である。

・用語には導引の他、吐納・行気・布気・内舟といった言い方もある、導引・行気・布気は身体の各部に気を導くという意味である。吐納は古い気を吐いて新しい気を納れる(吐故納新)という意味である。内舟は気功の一部である瞑想法のことである。

・日本では平安時代には医者の間で導引に関する本が読まれていた。

・江戸時代には貝原益軒の「養生訓」をはじめ養生法についての著書が多く出ており、導引はその重要な一部を占めていた。

気の三次元―心理・生理・物理

・人体(および生命体)に生物電流のようなエネルギー作用が備わっていることは、従来から良く知られていた事実である。広く言えば、脳波や心電図、皮膚電位の測定なども生物物理的計測の一種と言って良いし、バイオフィードバックの研究なども、人体のメカニズムについての生物物理的研究の範囲に入れることもできる。

・『人体の内部で電気的現象などが起こっているとすれば、それが人体の外部にまで何らかの作用を及ぼしているということも、理論的には予想できたことである。

・『気の問題はこれによって、心理-生理-物理という三つの次元において生きた人体のはたらきを環境世界と交流しながら生きている存在である。気の研究は、この「こころ-からだ-もの」の全体にわたる統合的相関関係をとらえる企てになってくるわけである。

気功師が発する赤外線

・気功に関する科学的研究が中国で始まったのは、文化大革命が終わりかけた1977年のことだった。

外気治療の測定

1)患者に布団をかぶせたが患者に反応が見られた。これは超音波や分子などの微粒子は布団を通らない。

2)患者を銅の金網で遮断しても患者に反応が見られたため、磁場でもない。

3)以上1)2)より、赤外線以下の短い波長をもった電磁波の一種と考えられる。

4)人体に害のある紫外線、X線は考えにくく赤外線ではないかと考え赤外線測定したところ予想通り赤外線の脈動波形が検出された。(この実験結果は『自然雑誌』創刊号[1978年5月]に発表された)

画像出展:「気とは何か」

気功医師の赤外線の脈動波形。

 

この場合、赤外線が検出されたこと自体が重要なわけではない(絶対零度以上の物体であれば何からでも出ている)注目すべきは一般人と気功師との違いである。

画像出展:「気とは何か」

図22b:マッサージの学生の赤外線の脈動波形。

 

 

『図22bは、林師が前記の患者に対して発功したときに、患者の膝の陽関のツボから検出された赤外線輻射である。林師と同じように起伏の大きい波が発生している。気の間人的同調transpersonal synchronizationとよぶことのできる現象である。つまり、Aから発射された気のエネルギーが空間をへだてたBの心身に一定の対応した効果をひき起こしたということである。

この実験報告は大きな反響をよび、これが契機になって、中国の多くの科学者たちが気のエネルギーの研究にとりくむようになった。イギリスの科学雑誌「ネイチャー」は、この年(1978)10月26日号でこの実験をとりあげ、パイオニア的性格をもつ研究であると評した。』

・気功師が発する赤外線は注目されたが、同時にいくつかの疑問も出てきた。赤外線は物理療法で使われるものであるが、それは数百ワットのエネルギーを用いる。ところが人間の手から出るエネルギーは、気功師の場合でもせいぜい数マイクロワットで、普通の赤外線発生装置(例えば、赤外線コタツ)の1億分の1か10億分の1程度にしかならない。こんな弱いエネルギーで果たして治療効果が得られるのか、という疑問がある。そこで懐疑派は、外気治療というのは心理的暗示効果によるものではないかと主張している。気功催眠説もこの部類に入る。

・患者側の心理的効果、人間と装置による治療はどこが違うのか等の問題を考える必要があるが、「気」の作用が何らかの形で物質的エネルギーの作用と相関関係があるらしいという事実が認められたことは大変重要である。それは、気の問題が心理-生理-物理(精神-生命-物質)という三つの次元にかかわっていることを示しているからである。

人体と磁場

・人体の内外には様々なエネルギー現象が起こっている。特に中国で新しく起こった研究法は、日本とは異なり主として人体の外部に発生する様々なエネルギー場の作用に向けられている。これによって気の研究は人体内部に限ることなく、人体と環境、つまり人間と自然が関わる広い場面にまで広げられることになった。

人体の内外を流れているエネルギーとしては、電流や赤外線の他にも、磁気・超低周波(耳に聞こえない音)・光(生体の微量発光)などが知られており、この外にも種々の作用が見出される可能性がある。

・磁場の測定も中国では1986年頃から始められた。電圧の出力と磁場は比例する(図24a)。

・図24bも図24cも気功師の発するエネルギーを測定したものだが、いずれも磁場は大きく動いている。

電流が流れていれば磁場は発生する。生体電流は神経において最も活発であるが、内臓器官や筋肉などの活動も微弱な生物電気を発生させているから、それにともなって磁気も発生している。人体は一種の発電機の性質をもっているということもできる。 

・重要なことは人体に磁場が発生するということではなく、人間の意識と磁場に相関関係があることである。

画像出展:「気とは何か」

電圧の出力と磁場は比例する。(a)

百会(頭頂)から5cmの距離で測ったもの。(b)

労宮(手掌)から2cmの距離で測ったもの。(c)

 

 

 

人体から発する音

・人体は人間には聞こえない音を発している。中国の測定では、気功師が外気を発しているとき、手の表面からは9~10ヘルツ位と1~2ヘルツ位の機械的な超低周波が重なり合って、脈打ちながら出ているのが測定されている。

・電気通信大学の佐々木茂美教授のグループは、気功師を被検者にして、発功のときに大脳・皮膚・特に経穴(ツボ)などで発生する微細な機械的振動(マイクロ・ヴァイブレーション)について計測してみたところ、外気を発しているときは、皮膚の経絡に沿った部位につよい振動が起こっていることが分かった(大体、1~5ミクロン位の微細振動が起こっている)。このような測定はいわば、全身の皮膚から発する音を調べているわけである。気功師が気を発するときには、耳に聞こえない音が脈打ちながらその身体から出ていると考えられる。

音波の振動は人体の内部でも起こっている。血液は血管を流れるときに超低周波を発生している。この場合、血管はメガホンのように音声導波管のような役割を果たして、その作用がずっと遠くまで及ぶことになる。

・『内部の状況は動脈の拍動部位の測定によって観察できる。外気を発射しているときの気功師の右腕の橈骨(手首の出っ張った骨)付近の動脈の拍動部位に聴診器の先端を固定して測ってみると、動脈の拍動は、外気を発する前は平均1.18ヘルツの振動だったのが、発射後は1.25ヘルツに増加し、振幅は約1.5倍になったという。さらに、脈管炎をわずらっている患者に外気治療を行なって、患者のツボである命門(背中、臍の裏)と互陽(背中、第七胸椎付近)に外気を送り込み、患者の左腕と右膝裏くぼみの動脈の拍動部位で振動を測ってみた。約30分間の治療で、膝裏の動脈の振幅は治療前にくらべて1.63~2.87倍に増加していた。このことは、気功師が発した外気を受けて、患者の血管内部に大きな振幅の超低周波が発生したことを示している。先に言った間人的同調の現象である。超低周波を利用した脈管炎の治療法は西洋医学でも既に行われているが、これは、音波の振幅が増すことによって、血管壁の老廃物を押し流し、ふつう音波が届かない内臓の深部や毛細血管にまで届かせる効果がある。気功の外気による超低周波は、こうして病巣部にまで深く作用することがわかったのである。

・『古書には「気行けばすなわち血行く」といわれ、気の流れが血液や体液の循環運動を支配していると考えられてきたのである。「気」が超低周波を含んでいて血管の中を伝わって伝播しているということは、こういう昔からの説明が現代の生理学的立場からみても一定の妥当性があるということを示している。

画像出展:「低出力パルス波超音波(LIPUS)を用いた低侵襲治療の開発東北大学病院 循環器内科

『当科では、ある特定の条件を持った低出力のパルス波超音波が、血管内皮細胞における メカノトランスダクション機構を介して、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現を亢進させ、その組織血流を改善させることを種々の動物モデルと培養細胞実験で明らかにしてきました(図1)。これらの基礎的検討をもとに、大学倫理委員会の承認を得て、2013年12月から重症狭心症患者を対象に、東北大学病院を含む全国10施設で医師主導治験を開始し、2019年7月に新規症例登録が終了しました。今後、データ解析の結果が待たれます。』 

 人体から発する光

・『人体からは光が出ている、といえば驚く人もいるかもしれない。しかし人間ばかりでなく、生命体はすべて、微量ではあるが光を出している。これを生物光子biophotonという。たとえば、植物の発芽のときなどは発光量がふえる。仙台にある新技術事業団の稲葉生物フォトンプロジェクトでは、生物フォトンの研究が進められているが、ここで気功師の人体計測を行ったことがある。』

※ご参考1資生堂、バイオフォトン測定により顔の酸化ストレスの部位差を発見 ―酸化ストレスレベルは加齢・シワと密接に関係―

※ご参考221世紀の医学 エネルギー医学の主流となるバイオフォトン療法の確立に向けて

・実験により気功師のフォトンの量は一般人と比べて大差はなく、一番強かった女性の半分位であった。しかし独特なのは、気功師は実験者の指示に従って気を出したり止めたりすることができ、それに伴ってフォトンの量が顕著に増減することである。

画像出展:「気とは何か」

気功師は気を出したり止めたりすることができ、それに伴ってフォトンの量が顕著に増減します。

 

・『治療時の気功師と被験者の身体の関係を双方の脳波を測って調べると共に、被験者の発光量がどのように変化するか調べる実験を行った。被験者の経穴から天目(額上部、印堂ともいう)及び左手の人差し指、中指、薬指をえらんで発光の強さを検出すると共に、両者の脳波測定を同時に行った。まず脳波であるが、気功師の方は治療中ずっと安定したアルファ波を出しつづけているが、被験者の方は治療を受ける前は不安定なベータ波が多い(図27a)。ところが気功師が気を送りつづけるにつれて、被験者の脳波も次第にアルファ波に変って安定し、両者の脳波が同調し始める(図27b)。このような同調現象は、日本医大の品川教授らの実験でも確認されている。』

画像出展:「気とは何か」

気功師の脳波は治療中ずっと安定したアルファ波を出し続けていますが、被験者は不安定なベータ波が多い。(a)

気功師が気を送りつづけにつれて被験者の脳波も次第にアルファ波に変って安定し、両者の脳波は同調し始めます。(b)

被験者の天目穴(B)と指先(A)のフォトンの発光強度。発気後10~16分にかけて両者は同調関係をしめしています。(c)

 

 

 

 

これに対して、このときの被験者のフォトンの状態はどうであったか(図27c)。気功師が気を出すと、被験者の指先の発光量(A)は徐々に減少し、これに対応して額の発光強度(B)が増してくる。図では発功後10分から16分のときに見られるように、指先(A)の発光量の減少と額(B)の発光量の増大との間にはっきりした対応関係が現われている。これは、気功師が発した外気の作用によって、被験者の身体の状態に変化が起こったことを示しているものと考えてよいであろう。

バクテリアに対する気の効果

・『気功師が発功するときのエネルギー量は非常に小さい。たとえば赤外線輻射の量は数マイクロワット程度であって、人工的に造った赤外線発生装置(赤外線コタツなど)のエネルギーが数百ワットもあるのにくらべると、1億分の1以下の弱いものでしかない。このため、気功(特に外気)による治療効果は実はプラシーボ(偽薬)と同じ心理的効果によるものか、あるいは催眠と同じような現象ではないかという疑問が出されてきた。しかし、動物実験やバクテリアを使った実験などの結果をみると、そういう従来の考え方だけですべて説明することはどうもできにくい。問題はむしろ、検出される物理的エネルギーが意識的-無意識的な心理的情報の運搬者carrierと考えられる、というところにあるのではないだろうか。

私がこのようなことを考えたのは、ほかでもないが、前述の1984年に筑波大学で開いた「科学技術と精神世界」という日仏シンポジウムで、「気」について発表したときである。その討論のさい、フランスのユング心理学協会会長のアンベール博士がこんなことを言った。われわれ心理分析家はいわば自分の身体を道具にして患者を治療しているようなもので、狭い部屋の中で患者と顔をつき合わせて話し合っている。ところが、相手によって自分の身体の状態が非常にちがう。今日はどうしてこんなにくたびれるのか、と思うことがある。「気」のエネルギーというのはこういう作用をいうのではないか、とアンベール氏は言った。この話は、臨床家の実際的体験から出た言葉として印象に残っている。』

エネルギーと情報の関係

気の成分から赤外線のような電磁波、磁気、超低周波、静電気といった様々な物理的エネルギーが検出された。しかし、「気とは何か」が分かったわけではない。

・明らかになった物理エネルギーは、生きた人体に備わっている作用なので、「気」とは人体を生きた状態に保っている基本的なはたらきである、と定義することができる。

気の作用の特徴的なことは、心身の訓練に熟達した気功師は赤外線、磁場、超低周波、フォトンなどを意識集中(意念)によってその発現状態をコントロールできる。また、脳波測定の結果をみれば、気功師は脳の活動を安定した状態に保つことができこのことは、気と心理作用、生理作用との相関関係を考えさせる。そして身体の生理作用は物質的エネルギーをともなっているから、生きた人体には心理-生理-物理という三つの次元を統合するエネルギー作用が存在するということができる。

気は「こころ-からだ-もの」という三つのレベルを一つにまとめる根本的なはたらきである。

・治療に当たった気功師は、気を発したあと、非常に消耗した状態になるが、このことも心理作用と生理-物理作用の相関性を示している。

・気功師が示すエネルギー作用は一般の人には見られないような波状の脈動として現われる。

深層意識の情報伝達

人間関係においては、感覚と意識の認知作用にかからない深層レベルにおいて、情報=エネルギーの発信と受信が無自覚のうちに互いに行われているという可能性が考えられる。

2 研究領域の広がり

生理―物理の境界領域

心理-生理的観点からみた場合、気の訓練が自律神経のはたらきと深い相関関係をもっているという点である。

・生理-心理的知見は、深層心理学における意識-無意識の関係とよく対応している。

・発功にともなう血流量の検査(航天医学工程[宇宙医学]研究所が行った研究[気功師31名、訓練中の者38名、対照グループ17名、計86名])は「気功功能態」(気の発射が起こった状態)での血流量を脳、上肢、下肢、下丹田で測る。まず安静時の量を測ってから、百会(頭頂)、左手の労宮(掌中央)、左の湧泉(足裏)と下丹田(臍下)に意識を集中(意念)して発功したときの変化を調べた。心拍と呼吸数も合わせて記録する。

結果は、気功師がこれらのツボに対応する脳、上肢、下肢、下丹田の血流量はすべて非常に増加した。その値は安静時に比べて、それぞれ11.8%、24.1%、26.9%、34.8%であった。逆に、意念しなかった部位では血流量はすべてはっきりと下降した。発功状態に入ると、まず呼吸数の低下と上肢の血流量増加がみられる。これは発功の初期段階に見られる特徴で、入静状態に入った指標である。それにつづいて、脳の血流量の変化と下肢の血流量増加が起こる。

・『医書には古くから「気は血を帥(ひきいる)するなり」「血は気の母なり」とか、「気至れば則ち血至る」などと説いている。清の唐容川は「気を載せるものは血なり、血を運らすものは気なり」と言っており、気の運動と血(血液・体液)の流れの間には密接な関係があるものとされてきた。これらの実験は、こういう古くからの考え方に裏づけを与えている。

・『経絡系は、神経と血管というこの二つの代表的な統合システムをさらに一つに統合する高次のシステムという性格をもっているわけである。心理的からみればそれは無意識の領域に関連した人体のかくれた情報システムであり、生理面からみればみえない次元で栄養機能をコントロールしているシステムである、と考えられる。つまり潜在的な次元において「こころ」と「からだ」のはたらきを統合しているのが経絡のシステムであると考えられるのである。

経絡における気の活動状態

本山博氏の研究は経絡を通る気の流れの運動は、神経系を介するものではなく、体液系によって起こっていることを明らかにした。

・本山氏のAMI(経絡-臓器機能測定装置)は、活動電位の伝播を神経細胞でなく体液細胞について測定する。手足の井穴(各経絡の気の流れが体外に出入りするツボ)と掌の間に回路を作って、神経による伝播が起こらない程度の弱い電流(3~5V)を通じて、経絡に沿って起こる電位変化を記録する。前に述べたように伝播速度は神経系のものに比べてずっと遅い。

気の間人的同調

・『気のはたらきはこのようにして、心理-生理-物理のレベルでエネルギーの変容を行いながら人体の外部にまで作用してまわりに一定の影響を与えている。われわれはそれを生体に固有な「エネルギー場」とよぶこともできるであろう。間中喜雄氏は、魚類学者の末広恭雄教授が提唱された「生体の場」という考え方が、東洋医学の身体観にとってきわめて有益であると説いている。それによると、ウィルスから細胞、細胞の集まりである生物体、さらに生物体の集まった集団に至るまで、生命体はそのまわりに「生体の場」をつくり出している。この場合、生体の場には、意識的であれ無意識的であれ、「場」の領域内部が自己に属し、領域外は非自己として区別される。そういう生体の場が自己のまわりに形成されると、「非自己」からたとえば刺戟のような外力がこの場に加わると、必ずこれに対する反作用が生じる。この反作用は刺戟に対する興奮といった形で現われる、という。気のはたらきは、このような意味の生体エネルギーの場をつくり出しており、そこには外部に対する同調と拮抗という関係が見られる。

気功師の発する気が他人の心身の状況に一定の作用をひき起こすという現象は、広い意味で間人的同調transpersonal synchronizationとよぶことができるであろう。この言葉は品川嘉也教授が最初に用いたものであるが、気の研究の将来の方向をよく示しているように思う。』

Ⅳ 「気」と超常現象の問題―科学の時代をこえて

Ⅳはいわゆる超能力について書かれています。本書の中にも書かれているのですが、多くの人にとって超能力は懐疑的なものです。一方、「超能力そのものは非科学的なものではなく、現代の科学がそれを理解できる段階にまだまだ至っていない、と言った方が正しい。」という見方も存在します。私もその考えに従って考えたいと思います。

中国各地から集められた超能力を有する人は数十名、その大部分は8~15歳の児童で最も多い年齢層は12、3歳でした。中には成人の例もありました。集められた人達は各機関の予備調査でその能力の存在を確認されていました。予備調査の後、各研究機関のスタッフ、それぞれの省・市・県の科学委員会関係者、新聞出版関係者などが中心になって14名の超能力者が選ばれ、その家族と同伴で、上海市の科学・医務・教育等の分野の関係者200名以上の出席を得て、三日間にわたり討論と実験が行われたとされています。 

1 超心理学をめぐる論争と問題点

耳で字を読む

・『中国の気功研究の指導者とみなされている銭学森・陳信の両教授は、最近、次のようにのべている。「国家科学技術委員会は1987年5月3日、中国人体科学学会の設立を認めた。1979年、四川省唐雨において、“耳で字をよむ”少年が発見されて以来、実に八年たってのことである。今日に至るまでの苦難と曲折にみちたこの歳月は、人体科学研究所に関心をもって従事するわれわれにとって、誠に容易でないものがあった。中国人体科学学会が正式に設立されたことをわれわれが心から祝福しているのはこのためである。」1987年5月というと私がたまたま北京に滞在していたときである。このニュースは人民日報で知った。当時、この学会の理事長をしている張氏が訪ねてこられたことがあった。また陳信氏(航天医学研究所教授)とはその後、日本と中国でたびたび会うようになった。「耳で字をよむ」というのは、いわゆる超能力のことである。中国では「特異功能」と呼んでいる。「超能力」というのはジャーナリズムの造語であって学術用語ではないが、わかりやすいので使うことにしよう。』

[ここでは(1)、(8)、(9)、(10)をご紹介します。これはツボを見つけることに関係すると思うためです]

(1)身体で字を知る部位は一般に耳、腋下、手の指等が多いが、児童の中には頭頂、膝、背中、足の裏、臀部などで感じる例もある。

(8)現在のところ、二、三十名の児童に合宿させて指導したところ、全員が指先で字を識別できるようになった。このような例から考えると、超能力にはある程度の普遍性があるように思われる。

(9)この種の能力を有する者も識別のしかたは様々で、ある者は接触して感知するが、他の者は接触しなくても感知することができる。また腋下で文字や図形を感じる者もいる。

(10)この種の超能力は身体の健康状態、および精神状態と密接な関係がある。一般には、健康で精神が緊張し、壮快な気分のときは早く識別できる。反対の場合は識別がおそく、識別不可能なときもある。