今回も科学編になります。町 好雄先生は出版当時、東京電機大学の教授で『思い掛けない出会いから気功の「気」と科学的なつき合いをするようになって、十年が過ぎました。』とのことです。そして、町先生は1993年5月にパートⅠに相当する『「気」を科学する』をまとめられていました。
パートⅡになる本書は、冒頭にカラー写真が26ページにわたり紹介されており、測定結果を目で正しく確認することができます。時系列的にも品川嘉也先生の『気功の科学(1990年1月)』、湯浅泰雄先生の『気とは何か(1991年1月)』に続いて発行された本であり、勉強させて頂く順番としては良かったと思います。「気について」の理解はさらに進んだように思います。
目次
プロローグ 「気」と科学
●「気」の科学入門
●気は脳の科学
●サーモ・グラフィーで探る「気」
●「気」はシグナルか
●脳に伝わる「気」
第一章 「気」の全体像を見る
●何を測るのか
●点から線へ
●何で測るのか
●ベテラン気功師S氏の場合
●スポーツウーマンRさんの場合
●千日回峰者M氏の場合
●サーモが真贋を見分ける
●静功と瞑想
●気功は自律神経のコントロール
●「気」は右脳の世界
●アルファ波と脳内麻薬の関係
●「気」とリモコン
コーヒー・ブレーク
●気功法あれこれ
第二章 脳波は語る
●劇的に変化するアルファ1波
●脳のネットワークづくりを見る
●「気」の研究は21世紀の科学を開く
●診断も透視の一種
●脳を使い分ける
●特異能力は洋の東西を問わず
●患部をズバリ指摘
●右前頭葉が働くと患部が消える
●同調するアルファ波
●自在に脳を操るお坊さん
●喜びを感じる脳
●幽体離脱をすると
●第三の目が光る
●非科学を科学するハイテク
●神のいるところ
●超能力者は超敏感人?
コーヒー・ブレーク
●子供と超能力
●メルティングチーズになった私
第三章 「気」のスイッチとコントロール
●韓国のお坊さんがくれたヒント
●「気」のスイッチは呼吸だった
●呼吸と自律神経系の関係
●血圧波形にも異常が
●「気」をコントロールする呼吸
●緊張型とリラックス型
●流儀の違い?
●呼吸の不思議
コーヒー・ブレーク
●地震おばさんとしゃっくり
第四章 「気」の能力が測定できる
●「気」の能力は測定できるか
●L氏と站とう功
●ハイテクが明かす「気」の能力
●「気」のレベルをコントロールするもの
●血圧波形に見える「気」のレベル
●心拍数も自由自在
●血のめぐりが決めて?
●心臓で何が起きているのか?
●脳では何が起きているのか?
●L氏の外気功、念力とは
コーヒー・ブレーク
●心臓に関するミニ知識
●アッと驚く電気の利用法 電気気功その1
●電気気功体験記 電気気功その2
●交流の縞模様を見た! 電気気功その3
●気功師は可変抵抗 電気気功その4
第五章 ハイテクで「透視」を透視する
●透視の何を測定するのか
●Wさんの透視
●透視時の全体像をみる
●踊る心拍数
●見えたのはココだ!!
●タイミングをはかる
●やはり呼吸がポイント
●透視実験は?
コーヒー・ブレーク
●仏像に似た女性
●「気場」を考える
●「気」と意識
第六章 データが語る「気」のいろいろ
●気功麻酔シミュレーション
-気功麻酔ではシータ波がポイント
-気功師は脳波の同調を感知する
-心拍数も同調する
-気功麻酔の効果
●サーモが語る「気」のいろいろ
-ヨーガと座禅
-電気人間O氏の座禅
-武術気功(硬気功)
-目的によって違う「気」
●心拍数が語る「気」
-武術・スポーツの「気」
-気功治療に科学的裏付けは可能
-成功も失敗も一目瞭然
-外気功では心拍数の変化も同調する?
-気功と針
コーヒー・ブレーク
●気功の脳科学が一歩前進
●足の裏は語る
エピローグ 非科学を科学する可能性
●偶然か情報の伝達か
●「第三の目」は本当に光る?
●超能力ということ
プロローグ「気」と科学
●気は脳の科学
・10年近く研究してきて、「気」の科学は人体科学であり、特に「脳の科学」ではないかと思うようになった。
・『専門分野であるエレクトロニクスについて思い起こしても、「不思議なもの」であった電気に関する現象が、科学的研究の対象となったのが1600年、それから300年を経てはじめて、電気の正体が原子の中の電子であることがつきとめられたのです。』
●サーモ・グラフィーで探る「気」
・人の体は波長が10ミクロン・メートル付近の電磁波の一種である遠赤外線を放射している。この目に見えない遠赤外線の熱エネルギー電気信号として検出し、画面に映し出す装置がサーモ・グラフィーである。
・体表面温度は、主として皮下の血管を流れる血液によるものである。
① 気功師が「気」を発すると、気功師の体表面温度は変化する。体表面温度が上昇する気功師が多く、温度上昇は3~5度ぐらいになる
②「気」を発して体表面温度が下降する例
③気功師と「気」の受け手は、体表面温度の変化という点で「同調」する
気功師が「気」を発した時の体表面温度の変化は全身に及ぶ。このことから、自分の意志でコントロールできないとされている自律神経を気功師は「気を発する」という自分の意志で、コントロールしているといえる。上記①②③の実験結果により、「気」が存在しそれが「相手に伝わっている」ことが明らかになった。
●「気」はシグナルか
・気が伝わることは明らかになったが、「何が伝わっているのか?」が問題である。人間の体から放射される遠赤外線のエネルギーは赤外線ストーブの1000万分の1に過ぎず、相手に影響を与えることはできない。そこで考えられるのが、ラジオやテレビの電波のように、人体から放射される遠赤外線にシグナル(情報)を乗せて相手に送っているのではないかという考えである。つまり、このシグナルが相手の脳に伝わって、「気」を受けた人にも気功師と同様の変化が現われるのではないか。そして、実験により気功師の気功中に放射する遠赤外線に1ヘルツ前後のシグナルが乗っていることが確認できた。
・普通の人が発する遠赤外線エネルギーは一定の値だが、気功師では約1秒に1回の割合で規則的に変化していた。ただし、この1ヘルツ前後の周波数のシグナルが何を意味するのかは分からない。おそらく何らかの生体信号として相手に伝わっているものと思われる。
・気功師の中には手掌から音波が検出されたケースもあった。これはヒトの耳では聞こえない極めて低い周波数の音波である。
●脳に伝わる「気」
・「気を出す」という意志は脳の働きによるものである
第一章 「気」の全体像を見る
●何を測るのか
・科学的研究の対象は外気功による「気」が中心になるが、気功の基本は内気功なので内気功も研究対象にすべきである。
●点から線へ
・外気功の「気」について、サーモ・グラフィー、遠赤外線強度測定器、IBVA脳波計を同時に測定することを行った。測定の対象は気功中の生理的変化に注目し、詳細なデータが得られる測定項目を選んだ。
●何で測るのか
・IBVA脳波計に加えて、医療用脳波計でも測定した。
●ベテラン気功師S氏の場合
・S氏は中国人で54歳、気功歴40年というベテラン気功師。
[静功]
[外気功]
写真10は外気功を行っているときのもので、左がS氏、右が「気」を受ける人でaは気功前、「気」の受け手は外気功を開始して30秒足らずで手の温度が上昇しはじめ、7分後にはbのように手全体が上昇した。
-血圧、心拍、呼吸の測定
『血圧、心拍数は自律神経系で制御されているので、気功師がどのようにそれを自分で制御できるのかが問題になります。私は、気功師が自律神経系の変化を引き起こす可能性のひとつで、最も簡単な方法は呼吸ではないかと考え、血圧、心拍数とともに呼吸数を測定してみました。その結果は、グラフ1・2に示します。外気功中の血圧、心拍数は静功時と同様に増加していますが、予想したように呼吸数も平静時に比べ、ほぼ倍近く増加していることが分かりました。この時の呼吸は浅い呼吸で、外見から変化はみとめられず鼻のそばにおいたセンサでしかとらえられないものでした。』
●スポーツウーマンRさんの場合
・Rさんはトレーニングに気功を利用した人で、アジア大会で数回の優勝歴をもっている。内気功を得意とし、測定時は閉眼で「站とう功」を行っている。

この動画は「かんたん気功体操 站椿功(たんとうこう)」さまからお借りしました。
[静功]
-血圧、心拍数の測定
『グラフ1・4がRさんの血圧・心拍数のデータです。気功をはじめると血圧・心拍数ともに増加しますが、S氏に比べると徐々に増加していくことが分かります。気功を中止すると血圧・心拍数ともに急激に低下します。従って、Rさんの場合は、徐々に「気」を高めていくように見受けられ、功法の違いによるものではないかと考えられます。』
●サーモが真贋を見分ける
・『私は、中国の学会などに参加した時、よく自薦、他薦の気功師や能力者といわれる人の測定をさせてもらいます。ところが、自分ではこういう能力があるという人でも、サーモ・グラフィーには何の変化も現れない人がいます。私達の目では本物かどうか分からなくとも、サーモ・グラフィーの目をごまかすことはできません。カメラの前に「黙って座れば、ピタリと当たる」ということではないでしょうか。』
●静功と瞑想
・静功と瞑想はいずれも“じっと無念無想”のように見えるが、サーモ・グラフィーによる測定結果は全く異なる。静功は体表面温度、血圧、心拍数は上がるが、瞑想はいずれも下がる。全く逆の測定結果となる。
●気功は自律神経のコントロール
・気功とは訓練によって自律神経を自分でコントロールできるようにするものであるといえる。
●「気」は右脳の世界
・気功を始めるとベータ波は弱くなる。
・気功によって右脳に特徴が現われる。「気は右脳の世界」と言える。
●アルファ波と脳内麻薬の関係
・『アルファ1波についてみると、特に電位の高い所は右脳の前頭部にあることが分かります。通常、アルファ波は後頭部にあることが知られているので、気功中に後頭部から前頭部に広がってきたアルファ波が、右脳前頭部で増強されたと考えるのが自然です。このように前頭部から前頭部でアルファ波が強くなるのは、何を意味するのでしょうか? 私は前頭部から放出されるホルモンと関係があるのではないかと考えています。前頭部から放出されるホルモンについては、いろいろ研究がされていますが、特にドーパミンというホルモンが多量に放出される所です。このドーパミンは脳内麻薬といわれるホルモンで、放出されると快感を感ずることが知られています。気功師が静功、外気功を問わず、気功を行うと心地よく感ずると言うのは、このドーパミンが放出されるためではないかと考えられます。明治鍼灸大学教授の森氏の研究によると、ツボを刺激したとき前頭部が活性化することをポジトロン断層撮影装置(PET)で確認し、これはドーパミンの働きであることが報告されています。』
※ご参考:ドーパミン(神経伝達物質)と前頭部に関して
●「気」とリモコン
・気功師から発さられる遠赤外線は5mm厚の段ボールでも遮断できた。このことより、遠赤外線のエネルギーは非常に小さいことが分かる。
・エネルギーの大小に関わらず何か伝えることは可能である。例えば、テレビのリモコンは非常に小さい赤外線に電源、チャネルの変更、ボリュームの調整などの情報を乗せてテレビ本体に送る。これと同様に遠赤外線で情報を伝えることは可能だと思う。
・1ヘルツ前後の周波数で変調された遠赤外線が有力な手段と考えられるが、他の可能性(例えば音波など)も検討する必要がある。