第二章 脳波は語る
・気功は静功でも外気功でも右脳に大きな変化が現われる。
・気功中にベータ波が沈静化されアルファ波の活動が活発になるのはすべての気功師の特徴だった。特にアルファ波の中でも周波数の低い方のアルファ波1(8~10ヘルツ)は、劇的と言えるほどの変化をしめす。
●劇的に変化するアルファ1波
・『Sjさんは40才ぐらいの中国人女性気功師です。気功による特異功能の一つである透視ができるという人で、病気の診断や治療も得意としています。名前を聞けば「ああ、あの人」と分かる人も少なくないかもしれません。まず、透視実験として気功師の知らない人の名刺を渡し、その人の性格や特徴、職業や仕事の状態などを透視してもらうことにしました。Sjさんに名刺を渡すと、驚いたことに渡された名刺を一瞬見ただけで、あとは目をつぶったまま身じろぎもせず透視を始めました。外見からは何かを見るというより、何かを感じようとしているように見えます。ちなみに答えは当たっていましたが、当てっていることに驚いてばかりはいられません。透視実験と言っても透視が当たっているかどうかが問題なのでなく、透視中の身体的変化を測定することが実験の目的なのですから。
写真20が、透視中のアルファ1波のトポグラフィーです。
名刺を受け取った瞬間に右脳に変化が現れます。アルファ1波の活動電位は、まず右前頭葉と右視覚野に当たる部分が高くなり、それをつなぐ右側頭葉の電位も高くなって右脳全体が高電位になります。その後時間を経ると、今度は右視覚野の電位が下がりはじめ、右前頭葉だけに電位の高い所が残りますが、それもやがて消え透視が終わります。この間わずか20秒、この写真のどの部分で透視が行われたかは分かりませんが、おそらく数秒の間に透視をしているのではないかと思われます。目に見えないものを見ようとする時、外見は何の変化もないのに頭の中はこんなにも劇的とも言える変化を示しているのです。この時、アルファ2波はアルファ1波につられるような形でやはり電位が高くなりますが、アルファ1波より低く、ベータ波の電位は低い状態でした。また、サーモ・グラフィーの観察では、特に額の体表面温度が上昇していて前頭葉の活動電位が高いのと符合しています。』

画像出展:「【2024年版】一次視覚野の役割とリハビリテーション方法を解説!MRI,CTから視覚認識の改善ポイントとは?(ニューロリハビリ研究所)」
鳥距溝は後頭葉内側面にある深い溝で、一次視覚野(V1)の解剖学的目印として重要です。
●診断も透視の一種
・『Sjさんには、透視実験に続いて、病気の診断と治療をやってもらいました。患者はかなり歩行が困難なリューマチの女性患者です。診断、治療と言っても気功師と患者が2メートルほど離れて、ただ黙って座っているだけで特に何かをするというのではありません。まず、診断の時のアルファ1波が写真22abです。
この場合もやはり右脳の活動が活発になりますが、活動電位は透視に比べると低くなっています。透視実験ほど集中力を必要としないのかもしれません。まず視覚野が働き、やや遅れて右前頭葉の電位が高くなります。これ等の活動電位の高くなった所は、両方から伸びて行き接続すると右脳全体の電位が上昇します。その後時間が経過すると、右視覚野だけ活性状態が持続し、やがてその活性点は頭頂部やや前よりの一点に絞られます。このように、診断においても右前頭葉と右視覚野の活動が非常に活発であることが分かりました。診断は外から患者の病状を読み取る作業ですから、一種の透視と言えます。見えないものを見ようとする時、右前頭葉と右視覚野が良く働くと言えそうです。
この診断中のサーモ・グラフィーからは、大変面白い発見がありました。診断の最後のほうで活性点が頭頂部やや前よりの一点に絞られた時、気功師の眉間の間にある印堂と言われる経穴に、温度上昇を示す赤い点が現れました。』
●脳を使い分ける
・『Sjさんによると治療時のアルファ1波トポグラフィーを写真23abに示します。
治療時には右前頭葉から電位が上昇し、右視覚野へと伸びていきますが、すでに診断が終わっているせいか、視覚野はあまり活動していません。全体として右前頭葉の働きが非常に活発になっています。特に、その活動電位は、透視、診断に比べると二倍以上高くなっていて、治療ではアルファ1波領域において、より脳の活性化が必要とされていることが分かります。治療の結果は、右脳におけるアルファ1波の活動と同じように、まさに劇的でした。かなり歩行困難であった人が、Sjさんの「立って」「歩いて」という掛け声のままに動き出し、一人で階段を降りるまでに回復して、気功の威力を見せつけられる一幕となりました。』
●特異能力は洋の東西を問わず
・『Cさんはイギリス女性で本国では警察の要請で犯罪や行方不明の捜査などに協力している超能力者と言われる人です。病人の診断や治療はあまりしたことがないということでしたが、実験のために「やってみましょう」と快く協力してくれることになりました。』
●患部をズバリ指摘
・『診断と言ってもCさんは目をつぶっています。その時のトポグラフィーが写真24で、上段からアルファ1波、アルファ2波、ベータ1波、ベータ2波で、5秒間隔で表示しています。
ベータ波がほとんど活動していないのに比べ、アルファ波の電位が右脳で高くなっています。特に、右前頭葉と右視覚野が活発に活動しているのが分かります。しかし、この様な変化を見せるのはほんの数秒で、一瞬のうちに診断してしまうのではないかと思います。
診断の時、私は患者のサーモ・グラフィー(写真25)を見ていました。
サーモ・グラフィーはもともと見えない部分の発熱などを検知するため、医療現場で使われている装置ですから、一見してどこが悪いか分かりました。人体はほぼ対称にできているので、健康な人は温度分布もほぼ左右同じになるはずです。この人の場合、写真25のように右の下腹部に発熱しているところがあり、ここが患部です。診断に当たったCさんは、「右の卵巣」とズバリその患部を指摘しました。』
●右前頭葉が働くと患部が消える
・『続いてヒーリング(治療)に移りましたが、この時もCさんは目をつぶって、じっと座っているだけです。その時のトポグラフィーが写真26です。
治療では、診断より長い時間をかけるのは、前述のSjさんと同じです。その間、二回ほどアルファ波が強く現れ、特に右前頭葉のアルファ1波が活発に働いています。診断では、右前頭葉と右視覚野が連携した形で活発に活動し、治療では右前頭葉の活動に重点が移るなど、前述のSjさんとよく似た現象をとらえることができました。洋の東西を問わず、特異な能力を発揮する時の脳の使い方には、何か共通するところがあるように思います。
一方、ヒーリングを受けた女性のサーモ・グラフィーを見ると、治療前に真赤であった患部の温度が、グングン下がって数分後には消えてしまいました(写真27)。』